言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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特別スキルレベルアップ編その1

クレーマーさんと、責任者さん?

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「そんなはずないだろ。責任者を出せっ」

 責任者を出せってよく聞くけどさ、責任者を引っ張り出してどうするんだろう。そう、いつも思う。

「責任者を呼んでまいりましても、結果は変わりませんが」

 困り果てている受付嬢の後ろから、一人の少女がやってくる。

「変わりませんけれども、お伺いいたしましょう」
「誰だお前,オレは責任者を呼んで来いと言ったんだ」
「ですから。ですから、責任者である、わたくしが出て来たのですが」

 にっこり笑っている少女。こわい、こわすぎる。見た感じ、高校生くらいって感じなのに。なのに、すごく落ち着いていて、そしてこわい。

「それともお客様はアレですか? 特別スキルをお持ちなのに、人を見た目で判断なさるお方なのでしょうか」

 にっこりと笑ったままの少女。その笑顔にさすがの男の人も、たじたじ。そりゃあそうだよね。少女にそんなこわい笑顔向けられたらさすがに怒りの炎も収まるでしょう。

「お、お前が責任者だってのか」
「さっきからそう申し上げてるではありませんか」

 少女はそう言うと、ずずいっと男の人の方へと顔を寄せる。

「お客様の顔、しかと覚えましたよ。従業員はみな、わたくしの家族同然です。そんな大事な家族を困らせる人は、お客様などではありません」

 そう言い切ってから、少女はさらににっこり笑って言った。

「今回だけは、特別に見逃して差し上げます。しかし、次はありません。次に問題を起こした時には……」

 少女が言葉を切ると、男の人はごくんとつばを飲み込んだように見えた。

「二度とこの街のジョブ申請所には立ち入れないとお思い下さい」

 そう言うと、少女は受付の奥へと消えていった。あとには、呆気にとられた表情の男の人と、安心した表情の受付嬢と、周りの人々。

 その時、私の受付を担当した男の人が戻ってきた。

「お待たせいたしました。こちらが、サラン様がつくことのできるジョブ一覧となります」

 私は、さっそく用意してもらった用紙に目を通す。冒険者以外のジョブはっと……。

「え、えええっ!?」

 私は思わず声を上げる。隣のクレーマーの男の人が迷惑そうな顔をこちらに向けても気にしない。

 エンチャンターと、ヒーラー。私がなれるジョブってこれだけ!? というか、どちらも初期ジョブって感じのジョブじゃないような……。

 RPGにおいてのジョブって、最初は前線に出て戦うタイプのジョブが多めになってて、中級、上級者向けのものとして、こういう後方支援系のジョブが入ってくる印象が強いんだけどな……。

 私は思わずじーっと、用紙を眺めてしまった。
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