言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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自分探しの旅その2(やりたいこと探し)

フリントさんへの依頼

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「フリントさんは、最近この辺りのダンジョンに変化があるって話、聞いたことありますか」

 私の言葉に、フリントさんは少し考え込む。

「そうですね。……初心者向けのダンジョンが多いこのエリアですが、今まで攻略したことのないダンジョンが出現したという話なら聞きましたよ」

 私は、始まりの街とこの店くらいが活動範囲だったから、始まりの街の外の話は一切入ってこない状況だったんだ。もちろん、リアルで端末から検索すれば色んなウワサとかは手に入れられたかもしれないけれど、ネットの情報は不確かなものも多かったりする。

 フリントさんは(私の勝手な想像だけど)、どちらかというと前線に出て戦うタイプだと思うから、私よりは色々なことを知ってるんじゃないかと思ったんだ。

「フリントさんは、この辺りのダンジョンを攻略したことってありますか」

 私が聞くと、フリントさんは首を縦に振る。

「ええ、まぁ。もちろん俗に言うガチ勢ほどはやりこんでいませんので、数は多くはありません。けれども、何度かはダンジョンを攻略しました」

「このゲームのダンジョンって、どういったタイプなんでしょう」

 私はある意味で独り言のように言う。ゲームによってダンジョンの種類は異なる。ダンジョンの出口にたどり着くことで、別のエリアに進めるいわば、「次のエリアに進むための道」としてのダンジョンが配置されているゲームもある。

 けれども、通り道として通らなくてもいいダンジョンが存在するゲームもある。そういったゲームのダンジョンは、最奥に宝箱があったり、ボスがいたりする。宝箱の中身を手に入れたり、ボスを倒すことでダンジョンクリアとなって、ダンジョン入り口まで戻されたりするシステムのダンジョンもある。

 このゲームのダンジョンはどういった立ち位置なのか気になったんだ。

「このゲームのダンジョンは、二通りありまして、どこかへ行くための通り道になっているダンジョンもあれば、完全に独立したダンジョンもあります。僕が攻略していたのは、後者のダンジョンです」

 ここで言葉を切り、フリントさんは言う。

「ダンジョンでしか手に入らない武器や防具、道具などもあるそうなので。レベル上げにももってこいですしね」

 やっぱりフリントさんもレベル上げをしていた。ということは、戦闘もある程度こなしてきたってことだよね。私は一人頷く。

「最近増えたダンジョンって、推奨レベルが高かったりするんでしょうか」

 私の言葉に、フリントさんは首をひねる。

「さぁ、どうでしょう。基本的にある程度のレベルになってから挑むべきダンジョンが増えたような気がするという話は聞きましたが、もしかしたら初心者向けのダンジョンでも後から追加されたダンジョンがあるかもしれません」

 そうだよね。もちろんやりこみ要素として追加したものなら、ある程度の推奨レベルのダンジョンばかり追加されるかもしれない。でもだいたいのゲームは、新しい要素ややりこみ要素を追加するアップデートの際に、こまごまとした修正を加えることもある。もしかしたら、初心者用ダンジョンもそういった意味では追加されてるかもしれないね。

「フリントさん」

 私が呼びかけると、フリントさんは心得た様子で頷く。

「なんとなく、分かりますよ。僕は、この辺りのダンジョンを調べて、最近増えたもの、前からあるものそれらの推奨レベルや獲得できるものを調べてきたらいいんですね」

 まだ、何も言ってないんだけど。私は大きく頷いた。

「はい。お手数おかけします」
「いえ。そういった細々とした仕事、結構好きなんです。それに、サランさんには以前助けて頂いたご恩がありますから」

 フリントさんはそう気軽いに言うと立ち上がった。

「それでは、ある程度まとまり次第メールなどにてお知らせしますね」
「お願いします」

 彼は、そのままさっと身を翻して店を後にした。よし、下調べはフリントさんに丸投げして、私はフジヤさんに連絡を取ろう。
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