言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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自分探しの旅その1

再雇用先の保険

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 先に休憩時間に入っていた大藤さんが一足先に休憩を終わって仕事に戻ったあと。あと十数分休憩時間が残っている私は、メールを確認しようと私物のスマートフォンを取り出す。すると、メールアプリに新着メールの通知が光っていた。

 メールが二通来ていた。メールの差出人は、シュウさんとカズアキさん。先にシュウさんのメールが来ていて、シュウさんのメールから一時間ほど遅れてカズアキさんからのメールが来ていた。まずは、シュウさんのメールを開封する。

『昨日は楽しかった。そちらが、仕事を辞めることに対して本気であることは昨日確認できた。こちらが勤める会社で雇用できるかについての確認も急ぐようにするが、それ以外の【保険】として、差し出がましいことだが、カズアキにも状況を話しておいた。また向こうからも連絡があると思う。とりあえず報告のみ失礼する』

 【保険】ってなんだろ。私は首をかしげながら、後から届いたカズアキさんのメールを確認する。

『久々やな、サランちゃん。シュウから話は聞かせてもらったで。なんや仕事辞める気らしいな。こういうときって、シュウが言うには再就職先のアテがあった方が気が楽やって聞いたんや。ウチはサランちゃんみたいな、ええ子やったら大歓迎やから、再就職先のことは心配せんと、さっさと今の仕事、辞めたらええからな。そりゃ、今の仕事よりは絶対給料安くなるけど、社保障は一応完備してるから』

 つまりは、カズアキさんとこの弁当屋さんで就職させてもらうことは可能だってことだね。社保障って言ってるってことは、正社員雇用枠ってことでいいんだろうか。私はカズアキさんにお礼のメールを返信しながら思う。

 シュウさんが思っている通り。いくらとりあえずこの仕事を辞めたいと思ったところで、次の目処が立たなければ、先行き不安なところがある。自分の人生だから、嫌なものはやめたいと思ったって、一人暮らししてたりすると、その資金繰り考えたりその他の理由により、簡単にやめられないことだってあると思う。

 私は実家に居候させてもらってるからその心配はないけれど、それでも仕事を辞めてどうなるのか分からない状況は、両親になんて説明すればいいか分からないし難しいところがある。でも、少なくとも『再雇用先を既に見つけている』のであれば、話も変わってくる。親にも説明しやすいし、金本部長にも言ってやれる。

「誰でも代わりは務まるとおっしゃっていましたから、辞めても構いませんよね。私の次の働く場所は既に決まってますので、ご心配なく」

 再就職先が決まっていないとなれば、相手に隙をみせることになるけれど。これなら。私は、シュウさんにもお礼のメールをする。

『色々とお気遣い頂いて、本当にありがとうございます。先ほど、カズアキさんから私が望むなら雇用すると連絡がありました。何から何までありがとうございます。これで、気持ちよく退職することができます。シュウさんには感謝してもしきれません』

 ゲームを買ったことから得た縁。このままこの縁は継続していきたいな。とりあえず、職場には退職願を提出したし、引継ぎをお願いする人たち、そして同じ職場の人たちには一斉メールで簡単ではあるけど退職の意思を伝えた。

 あとは、自分の両親に自分の気持ちを伝えるだけだ。
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