言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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自分探しの旅その1

退職の準備その2?

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 次の日の朝。重い気持ちを抱えて私は目覚めた。さあ、今日は退職の意思を金本部長に伝えるんだ。嫌味はたっぷり言われるだろうけど、考えられるだけの対策は講じたつもり。

 私はいつもより重たい体を半分引きずりながら用意をすると、会社へと出勤した。出勤すると、受付には大藤さん。あ、今日は出勤日なんだね。

 お互いに挨拶を済ませたあと、私は言った。

「今日、上司に退職の意思を伝えてみます」

 すると、大藤さんは親指をぐっと突き出す。

「頑張ってね、うまく行かなかったら、代わりに言ってあげるから無理せず撤退するんだよ」

 その言葉を言ってもらえるだけで、私はとても嬉しい。よーし、頑張るぞ。職場のフロアに着くと、私はまず部長が出勤するのを待つ。私はもう新入社員じゃないけれど、職場内ではまだまだ下っ端。だから、上司より先に出勤できるようずいぶん早い時間帯から出勤するようにしている。万が一、金本部長より遅く出勤するようなことがあれば、一日中部長の機嫌が悪い状態で仕事をすることになる。

 そうなれば、結局困るのは私だ。不愛想でも一応仕事してくれる状態と、まったく無視されてこっちの仕事が進まないのとどっちがマシかと問われれば、当たり前だけど、前者を選ぶ。

 私が出勤してから30分ほど経った頃、金本部長が出勤。私は、部長がデスクに到着するのを見るや、彼がパソコンの電源をつけている最中に声をかける。私にできる準備は、したつもり。

「あ、あの、金本部長。おはようございます」
「……」

 はい、出ました。挨拶なし。でもこれはいつものこと。もう、この上司と話すのが苦手すぎて、カタコトの話し方になってるけど、気にしない。

「本日は、あの、相談があって参りました」
「……何。こっちは忙しいんだけど」

 私に自分の仕事一本投げたことを忘れないでほしい。こっちだって忙しい。

「退職させて頂きたいんです。できれば、3か月以内に」

 私がそう一息に言うと、パソコンに目を向けていた部長がこちらに目を向ける。しかめっ面で。

「……キミ、自分のこと、分かってる?」
「はい?」
「ここでの仕事もまともにできないキミに、他の仕事ができるわけないじゃん」

 おーおー、最初っから飛ばしてきたねぇこりゃ。だけど、私はもう決めたんだ。部長の言葉を無視して、私は言う。

「今私が受け持っている仕事はすべて、別の人への引継ぎを済ませます。すでに、昨日のうちに引継ぎに関しては引き継ぎたい人たちに相談し、了承もらってます。これがそのリストです。この間、部長から引き継いだ仕事も、別の方に引き継ぎます」

 最後の部分を強調しながら私は言う。理由も詳しく聞かず、ただ『ここでの仕事もまともにできない人間が、他の仕事に移ったところでムダ』なんて、失礼にもほどがある。そういう部長は、他の仕事をしたことがあるんでしょうかって尋ねたくなる。

「他の人にも迷惑がかかるでしょ。ただ引き継げばいいってもんじゃない」
「ですから、今すぐではなく3か月前くらいの猶予を持たせています。それまでに、取引先にもすべてお伝えしていくつもりです。部長にはご迷惑おかけしません。それに引継ぎをお願いした人たちはみんな、快く引き受けてくれました」

 私の言葉に、部長は鼻をならす。

「そんなの、メールの文章ではそう見えても本当にそうかどうかなんてわからないでしょ」
「それは、部長にも分かりませんよね?」

 メールを書いたのは、引継ぎをお願いした個々の人たち。部長じゃない。私の言葉に、一瞬部長は目を見開いた。

「何にせよ、私はこの会社を退職します。次の仕事が見つかろうが見つからなかろうが。次の仕事が見つかってそちらが私にとっての天職だろうが、そうじゃなかろうが、それもまた部長には関係はありません。私は、自分の人生を後悔せず生きることを決めたんです。仕事の目処が立ち次第退職したいので、とりあえず退職届を提出させて頂きます」

 私はそう早口にまくしたてると、退職届を部長に押し付けて仕事に戻った。
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