言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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自分探しの旅その1

街の外へ

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 私とシュウさんは、街のはずれへとやってきた。ポップアップ画面が立ち上がる。

『数メートル先、街の出口。非戦闘エリア外』

 重要と赤文字で書かれたポップアップ画面を消しながら、私は独り言のよう呟く。

「そういえば街以外の場所に行ったのは、初めてゲームにログインした日以来かもしれない」
「……まぁ、街の中にいれば基本的には安全だからな」

 シュウさんが答える。

「街の中では基本的に戦闘行為は禁止だし、必要ではないと判断された戦闘行為を街の中で行えば最悪の場合、アカウントブロックもあり得る」

 それだけしっかり対策してくれていれば、確かに街は安全な場所だよね。私のような戦闘をせず、生産なんかに力を入れている人にはとくに。

 私たちは街の外へ出た。見渡す限り、緑のくさっぱらだ。はるか遠くの方に山や洞窟が見える。

「おー、これが街の外!」

 街の景色も洋風で素敵だけれど、街の外は自然があふれていて、また違った魅力がある。見たことのない草花がたっくさん。

「うわー、この花、どんな効果があるんだろう」

 私は周りの花よりひときわ大きくて、きれいな形をしているピンク色の花に触れようとした。すると、目を細めて私の様子を見ていたシュウさんが慌てた声で言う。

「それは、触ってはいけない」
「え」

 シュウさんが切羽詰まった様子で私の手を引っ込めさせた。

「それは、初見殺しの花だ」
「初見殺しの花……」

 すっごく物騒な名前がついてるから、よくない効果を持ってそう。

「初めてこの平原へ出てきたプレイヤーはこの、目立つ花が特別な花だと思う。だが、この花は別の意味で『特別』なんだ。これに素手で触れると、ゲームオーバー。プレイヤーは、所持しているアイテムと所持金を半分失うことになる。いわゆる、ゲームの洗礼というヤツだ」

『初見殺し』。ゲームではよく聞く言葉ではある。RPGなどのいわゆる一週目、初めてのエリアに来た際に、そこに設置されている罠などに制作側の思惑通りにはまって、ゲームオーバーなどになるというもの。

 ゲーム会社によっては、『初見殺し』を大量に設定し、むしろそれがウリなのではないかと思うくらいなものもある。

「もしかして、このゲームを制作したのって……」
「ナイトメアソフトウェアだが」

 シュウさんが不思議そうな顔で私に向き直る。私は、大きくため息をつく。まさに『初見殺し』、そして心が折れるようなゲームバランスのゲームを大量に作ってらっしゃる会社だ。

「その表情なら、大丈夫だと思うが。このゲームでもたくさんの『初見殺し』が設定されているから用心しろ」

 私がよっぽど絶望した顔をしていたのだろう、シュウさんが励ましにならない言葉を投げかけてくる。これからの旅まで不安になってくるよ!!
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