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自分探しの旅へ(準備編)
初めての? クエスト受注
しおりを挟むということで、私はキアナさんからクエストを斡旋してもらうことにした。私とシュウさんは面談室に通される。
私たちが待っていると、キアナさんがたくさんの書類の束を抱えて戻ってきた。肩で息をしながら、彼女は言った。
「なんで、これも電子化しちゃわないんだろう。絶対、こんなのネットでやった方が円滑に作業が進むじゃんね」
キアナさんの言葉に、シュウさんが苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「ゲーム制作側がその方が見栄えがいいとかでそうしてそうで、怖いんだがな」
確かに、ゲームの世界観的には羊皮紙や羽ペンが似合う世界観ではある。パソコンとか取り出されて、今からヘッドセットにクエストデータを送りますとかだと、せっかくのゲームへの没入感がなくなるもんね。
キアナさんは片手で頭をかきむしりながら、私の前に書類の束を積み上げていく。
「今から、平原のクエストをよりわけていくからさ、そこからてきとーによさげなクエスト選んじゃってよ」
探してやるって言ってたのに。そう言いかけて辞める。確かにこの量でクエストの紹介をするのは大変そうだ。こっちから選んで、クエスト受注の手続きを進めた方が効率がよさそう。
私の前に積み上げられていく書類の束からクエストの内容が書かれた書類を一枚一枚確認していく。シュウさんが私の横から覗き込んで一緒に確認作業を進めていく。
「ちょっとした狩猟クエストでも、わたしがついているから、特に受注しても問題はないと思う」
「とりあえず、今日こなせる量のクエストを受注する形でいきましょう。それに、難しそうなクエストも外しましょう。あくまで今回の目的は、私のスキルの強化につながるような旅をすることですから」
そう言うと、シュウさんが目を細める。
「……そうだな。あくまで今回の目的は、クエストの達成やレア度の高い報酬じゃない。本来の目的がおろそかになるような難易度や時間がかかるクエストは排除しよう」
欲張っていくつもクエストを受注しすぎて、他の冒険者さんたちや依頼者さんたちに迷惑をかけるわけにもいかないしね。
そう。私たちの目的は、効率よく報酬を獲得することじゃない。あくまで、クエストをこなすのは、おまけ。本当の目的は別にあるのだから、それを忘れてはいけない。
「報酬はよくなくていいから、簡単にこなせるクエストで、平原のあちこちを回れるようなルートを作れそうなクエストをいくつか受注させてもらいますね」
私が言うと、キアナさんは言った。
「達成が簡単なクエストは採集クエストと特定モンスターの狩猟クエストが主かな」
何か特定のアイテムを特定数回収する採集クエスト。これは、依頼されるアイテムにもよるけど、大概ひとところで回収できる場合が多い。ただゲームによってはいくつかのエリアに分散して配置されている場合があったりもするし、そのせいで大型モンスターの乱入に遭うこともあったりする。
まあ、今日は高レベルプレイヤーのシュウさんもいることだし、大型モンスターの乱入があってもなんとか逃げ切ることはできそうだもんね。
「じゃあ、その二つをよりわけてください。こっちで、よさそうなクエストを選ぶようにします」
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