言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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自分探しの旅へ(準備編)

スキル向上のために

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 シュウさんとの話が終わったあと、私は彼と共に街を散策していた。なにせ、明日は久々の休日だ。だから、今日は夜更かししても大丈夫。ゲームの時間とリアルの時間帯はリンクしている。だから今は、真夜中だ。

 そのせいで、街の明かりは道を照らす街灯くらいだ。窓から漏れる部屋の明かりはほとんどない。静かな街に二つの足音だけが響く。

「シュウさんは、ログアウトしなくて平気なんですか。明日も仕事なんじゃ……」

 私の言葉に、シュウさんは首をすくめてみせる。

「いわゆる有給消化というヤツで、仕方なく明日は休みを入れてある。有給は毎年使い切るよう強く要請されているんだ」

 ああ、なるほど。私と同じで明日は休みだから夜遅くまで活動できるんだね。

「そちらの今の仕事の退職手続きが終わり次第、旅に出てもいいかもしれないな」

 シュウさんが静かな声で言った。

「他の社員からの情報によると、やはり旅に出て何かを得ることで、スキルの内容が変更されたりした例もあるとは聞いているんだ」

「特にダンジョンをクリアしたら手に入る、というわけではないのでしょうか」

 私が尋ねると、シュウさんは頷く。

「あくまで、わたしが聞いている範囲の話だが。その範囲だと、もちろんダンジョンクリアの報酬としてスキル内容の向上が見受けられた場合もあったそうだが、必ずそうなるとは限らないらしい。ダンジョンクリアなどではなく、普通のモンスターを討伐した際や、採取クエストを受注していた際にもそういった例が報告されている」

 つまり、スキルの内容の向上を目指すには一筋縄ではいかないってことだね。

「おそらく、その『特別スキル』そのものの性質なども関係しているのではないかとわたしは考えている。スキルの内容によって、スキル向上のために必要な条件も変ってくるのではないかと思うんだ」

「私もそう思います。それに『特別スキル』自体が、そのスキル保持者の現実世界での生活や本人の性格などに応じて付与されていると感じるんです。だからきっと、『特別スキル』のスキルの内容向上にもスキル保持者の生活や性格などに関連した条件をこなすことが必要だと思うんです」

 私の『特別スキル』はきっと、私の『創作活動』が元になっているはず。そしてその『創作活動』は、様々な場所に出かけていき、そこで見聞きしたことを一つひとつ拾い上げ、思ったことや感じたこと、疑問に思ったことを書き留めていき、それを関連した者同士でつなぎあわせることで生まれたりもする。なにせ、部屋にこもりきりでは、いい作品が生まれないことが多い。

 だから、スキルの内容を向上させるためにも絶対にこの世界を旅することが必要。ここで見聞きしたこと、経験したことが必ず役に立つはず。

「……それなら」

 シュウさんが、目を細めた。

「小さな冒険、明日にでもやってみるか?」
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