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チラシと目玉商品づくり
スキルの活用のために
しおりを挟むとりあえず、今日のスキルは、久々に「にげにげスプレー」の再生産に使用するとしよう。
私はそう思って、以前と同じく液体の入った小瓶にスキルを使用して、「にげにげスプレー」を再生産する。これ、意外と便利だと思うんだよね。私みたいな敵と遭遇しても戦えないような相手だったら、尚更。
そして、それを自分の鞄の中にしまいこむ。それから、フジヤさんに声をかける。
「私、旅に出てみようと思うんです」
自然と、そう言葉がこぼれた。フジヤさんは首をかしげる。そりゃそうだろう、私がフジヤさんにお店のチラシの依頼をしたのに、依頼主たる私が当分の間に留守にしようというんだから。
「この街もすごく好きなんですけど、でももっと視野も広げてみたくって」
私はフジヤさんに、スキルで同一商品を作成できる能力がほしいこと、それを探すため旅に出てみたいと思うことを話した。
「きっと、商品を量産できるようになれば、もっと人の役に立つことができると思うんです」
「そう言うと思ってたで!!」
その時だった。店の入り口に気配がして、私とフジヤさんは入り口側に視線をやる。すると、そこにはカズアキさんとシュウさんが立っていたんだ。
「話は聞かせてもろたで。俺らに手伝えること、ありそうやな!」
「カズアキさん、シュウさん……」
私が呼びかけると、カズアキさんはぐっと親指を突き出した。
「サランちゃんのおかげで、事件は無事に解決したで! それでお礼に何か手伝えることあらへんかいなって、シュウと一緒にお店に来てみたんや。そしたら、難しい話をしとったんで、少し話を聞いて様子見てたっちゅうわけやねん」
「……すまない、立ち聞きするつもりはなかったんだが。コイツが、そうしようと言ってきかなくてな」
シュウさんがすまなさそうな顔をする。しかしそれは一瞬のことで、彼は私の目をまっすぐ見つめて、ゆっくりと言った。
「……スキルをうまく活用できる方法を探るのには、賛成だ。しかし、一人で旅に出るというのには、賛成しかねる」
その射すくめるような視線に、私は思わずうつむく。すると、彼の穏やかな声が届いた。
「……何も、旅に出るなとは言ってない。同行者が入用だ、と言っている」
私が顔をあげると、シュウさんが目を細めて私を見つめていた。
「……異性だけでは何かと不便だろう。この前の、なんといったか。あの女子大生と女子高生を誘えばいい」
ああ、ルリアさんとセナさんのことを言ってるんだね。そういえばあの二人、元気にしてるかな。
「同性が必要なら、私が同行するよ」
フジヤさんが思いがけないことを言いだす。すると、シュウさんは首をすくめる。
「だそうだ」
「戦力的に、もう一人くらい戦えるヤツが欲しいところやな。ギルドマスターの俺はこの街を離れるワケにはいかへんし……」
悩む素振りを見せるカズアキさん。私はみんなを見渡して言った。
「あの。……頼ってしまって、いいんですか」
フジヤさんは、呆気にとられたような顔をする。シュウさんは微笑む。
「……もう頼ってもらって構わないくらいには、関わりを持ったつもりだが?」
「せや。シュウもこう言ってることやし、コイツは連れてってもらってかまへん。俺は困るけど」
カズアキさんが冗談めかして言う。頼ってしまって、いいんだろうか。私は悩んでいた。
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