言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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問題解決と言霊クラフトその3

現実世界での出会い

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 次の日。私は眠気なまこで出勤した。上司から頼まれた仕事を片付けるという休日出勤。そして風の噂で聞いた。その上司は、悠々と家族と旅行に出かけると自慢げに話していたようだ。旅行なんて、前々から行くこと分かってただろうに。それならもっと前から仕事を片付けるようスケジュール管理はできたはずだし、何より人に頼むとしても、もっと前から頼めたはず。私はずどんと自分のデスクに腰かける。

 すると、受付のお姉さんが走り寄ってきて言った。
「今日、金本部長は出勤しますよね」
「しないと思いますよ。お休みです」

 私に仕事を押し付けて、自分は家族旅行に行ってるらしいですよという言葉を飲み込んで私は苦笑する。すると、受付のお姉さんは慌てた様子で言う。

「金本部長、今日営業の方とお約束をしてたみたいで。担当者の方が来られているんですけれど。電話してみた方がよいでしょうか」
「……おそらく、電話をかけても出ないと思います」

 私の苦手な上司、金本部長が前に言っていた。
「休みの日は電話には出ないようにして、メールも見ないようにしてるんだ」

 ……こっちには休日でも平気で電話してくるしメールを飛ばしてくるし、次の日出社したら、
「なぜ電話に出ない。メールに返信しない。なぜ常に確認しない」

 そう言葉の雨を降らせるというのに。ひどい話だよね、自分はしないことを相手には要求するなんて。でもまぁ、世の中よくある話。

 仕方なく私は、困った顔をしている受付のお姉さんに言った。

「面談室にお通ししてください。私が応対します」

 仕方ない。ここは担当者不在だと先方に一言謝って、用件だけ聞いてあとは部長に丸投げだ。

 出勤してしょっぱなからこれは、なかなか痛い。精神的に。私は重い足取りで面談室へと向かったのだった。

―――

 数十分後。私は、行きと同じく重たい歩調で自分のデスクへと戻ってくる。いやあ、ひどい目にあった。先方の話だと、随分スケジュールを変更されてやっとこさ、日取りが決定したかと思ったら、今日の話になって。……そりゃ、相手が怒るのも無理はない。しかし、私は部外者だ。部長の行動を把握してるわけじゃないからなぁ。

 そんなことを思いながら、ふうと大きなため息をつくと、私のデスクの脇に誰かが立っていて、私のデスクを興味ぶかげに覗き込んでいるのが目に入った。今日は私以外に私のデスク付近の人は出勤してないはずだけど……。まさか、また別件の部長の仕事があったとか!?

 私が目をこらすと、さっき私に部長の商談相手を連れて来た受付のお姉さんだと分かった。彼女は私がこちらを見ているのに気づくと、私に会釈する。私も会釈を返すと、彼女の方へと歩み寄る。

「すみません、嫌な仕事を押し付けてしまいました」

 受付のお姉さんが申し訳なさそうな顔をする。その表情を見るだけで、ああこの人は人の痛みの分かるいい人だと思った。うちの職場にはそういう人、少ないからね。

「いえ、そう言ってもらえるだけで気が楽になります」

 私が返すと、受付のお姉さんは遠慮がちに言った。

「よかった。……あのぅ。こういうの、お好きなんですか」

 彼女が目を向けているのは私のデスクに置いてあるアニメ関連グッズだった。気持ちだけでもと思って、色んなグッズを並べてるんだ。そうでもしないと、仕事なんてやってられないから。

 私がこっくり頷くと、お姉さんはにっこり笑って言った。

「私も、アニメ見るのが好きなんです。よかったら後で、一緒に休憩しながらお話しませんか」

 おお、休憩仲間ですか。それはいい! 私たちは示し合わせて休憩の時間を決めた。そしてその時間に落ちあった。

 お姉さんは、大藤さんという人だった。私と同じくアニメや読書が好きだけれど仕事が忙しくて最近は全然、趣味に費やす時間がないとのこと。

「前まではイラストを描いたりしてたんですけどねぇ……」

 大藤さんが遠い目をして呟くように言った。私は、はっとなる。そう、昨日インターネットの海へと飛び込んで絵師さんを探そうとした私。でもいい人を見つけられなかったんだ。だって、そもそもチラシをどんな風に作ろうか、具体的な内容も決まってない状態だと、イメージがわかないから、どんな人に頼めばいいか分からないって気づいたんだよね。

 でももしかしてこの人になら、お願いできるんじゃないかなっ!?

 私は大藤さんに、言った。

「あの、大藤さんって、ゲームに興味はありませんか」
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