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クエスト受注所
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しおりを挟むカズアキさんに腕時計記憶装置を渡した時、シュウさんが私に向かって言った。
「……ちなみに、これはバックアップなどはとれるのか」
「バックアップ……ですか」
私は呟く。言われてみれば、そのことは考えてなかった。証拠品がこのデータ1つだけだった場合、万が一データ紛失事件や予期せぬ出来事が起きたときに対応ができない。仕事で作成するPDFデータやWord文書、Excelデータは、メールの下書きだったり、PCのデスクトップだったり、USBメモリだったり、出来うる限り様々な場所に保存しておくんだけれど、そうか、これも保存しておくべきだよね。
「バックアップをとるとなると、別の保存媒体を作成することになります。しかし私のスキルは上限が決まっていて、今日はその上限まで使用してしまっているんです。だから、バックアップを作成するとなると、明日以降になります」
すると、シュウさんは頷く。
「それなら、カズアキは明日社員さんに明後日以降に証拠データを持ってくると伝えておけ。それで、サランさんがバックアップした後、元データをカズアキに渡す。この方が安全だろう」
「せやな。明日か明後日かで、何かが大きく動くってことはないやろうし。あと1日くらいずれこんだって、かまへんやろ。今までクエスト独占されたままやったんやから。それにもしその間に解決されたんやったら、それでええ。運営が自分たちで解決できるに越したことはないからな」
「そうですね」
私も同意する。
「では明日、また夜ログインした時にバックアップが作れそうな媒体をスキルで作成するようにしますね。記憶媒体、便利なのでカズアキさんとシュウさんにも作ってお渡しします」
私が言うと、カズアキさんが目を輝かせる。
「ほんまに!? うわあ、うれしいわぁ。ほな、楽しみにしてるでっ」
「気を使わなくていいからな」
シュウさんが目を細める。私はカズアキさんから腕時計を預かり、ゲームからログアウトした。ヘッドギアを外して、ベッドにダイブする。
明日仕事に行けば、一日お休みがあったはず。休日、なんだか久しぶりな気もするけれど、最近あった気もする。毎日毎日同じ時間に起きてを繰り返していると、それが何日目か、よく分からなくなってしまう。
明日仕事終わったら休みになるなら、明日の夜は夜更かししても大丈夫だよね。カンナさんのお店のお手伝いに時間をかけたいな!
腕時計をなくしちゃ大変だから、シュウさんと私が共有して使える倉庫に収納しておいた。そういえば、ペアリング制度ずっと活用させてもらっているけど、シュウさん迷惑してないかな。私、レベルアップする気は、あまりないんだけど。
そんなことを考えていたら、少しずつ眠気が襲ってくる。気づいたときには、私はぐっすり夢の中へと吸い込まれていたのだった。
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