上 下
67 / 304
クエスト受注所

クエストマスターの悪行

しおりを挟む

「クエストマスターさんとギルドマスターさんの会話の録音、聞かせて頂いてもよろしいですか」

 私の言葉に、特殊スキルを持った受付嬢さんは頷いた。

「もちろん、構いませんよ」

 受付嬢さんは言って、私にICレコーダーみたいな機械を手渡してくれる。私は、そっとそれを掌に載せると受付嬢さんは再生ボタンらしきボタンを押した。

 すると、少しのノイズ音とともに言葉が聞こえて来た。

『そういうのは、困りますよお客様……』
『これは、ほんの気持ちだ。もしクエストを全部こっちに回してくれてるのが確認出来たら、この10倍払う』
『いや、でも……』
『クエストマスターって言ったって、大した金額もらえねーんだろ? オレらに全部回してくれるなら、絶対損はさせねぇ、確実にこっちの方が儲かるって嬉しくなっちまうさ』

 聞いている感じ、まさに最初クエストマスターとギルドマスターが話し合いをして、クエスト独占の話になっている感じだ。

『オレが持ってるこの黄金の腕時計、アンタも欲しくないかい?』

 黄金の腕時計!? 現実世界のドラマとかでよく出てくるあの黄金の腕時計!? すっごくお高いんでしょう!? 私はちょっと見た目的に好きになれないけど。お金持ちの象徴って感じがするよね。

『そ、それは……っ! 世界に数台しか出回っていないシリアルナンバー入りの某有名な腕時計!』
『オレの腕時計はなんと、No.1のシリアルナンバーの腕時計だ』
『ほ、ほしい……! そうですよね、お金さえあればいくらでもいいものが買える!』

 私はそれを聞いて笑いそうになった。これは、物的証拠になりそうだな。私はそう思って、受付嬢さんに聞く。

「この方が言ってる腕時計ってご存知です?」
「あ、ギルドマスターがしていた腕時計なら分かりますよ。なんでも、シリアルナンバーの入っている腕時計は、この世界で現在、この一種類だけですから」

 ということはだ。今後もし、シリアルナンバー入りの腕時計が出回るようになったとしても。某有名な腕時計は、この音声が録音されたときは一種類しかなかったわけだ。そして当然、その時計のシリアルナンバー1を持っているのは、1人だけ。追い込みには使えそうだね。

「これは、完全に物的証拠になります。あとは、この時計を売り飛ばされないうちに、なんとかしないと」

 私には考えがあった。少なくともまだ、腕時計はギルドマスターの手元にあるはずだ。だったら一度でいいからその腕時計を身に着けている状態のギルドマスターに接触して、腕時計に細工をする時間がほしい。

 私は、そのことを受付嬢さんたちに話した。すると、彼女たちはふふっと笑った。

「それなら、いいことがあるわ。このあと、ギルドマスターがクエストマスターに会いに来るの。そこでね……」

 私達は、早速、作戦を立て始めた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

当て馬と書いてキューピッドと読む

9
BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:31

王宮の警備は万全です!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:983

エクスプローラーズ!!~ダンジョン攻略で成り上がるお~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:64

勝ち組ブスオメガの奇妙な運命

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:139

コスモス・リバイブ・オンライン

SF / 連載中 24h.ポイント:1,022pt お気に入り:2,346

赤月-AKATSUKI-

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

古都あやかし徒然恋日記

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:3

処理中です...