言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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クエスト受注所

クビになった受付嬢さん?

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 いかにもといった様子の言葉遣いで派手目の女性が言う。その表情は、鬼の形相。クエストマスターはその声でようやく、目を覚ましたみたい。

 目をこすりながらゆっくりと体を起こすクエストマスターさん。その目が派手目の女性を見上げて、一瞬にして不機嫌な顔になる。

「なんだ、お前か。お前はクビにしたはずだぞ」
「だからっ! こんな紙きれ一枚でクビにできると思ってんのかって言ってんだよ!」

 女性が怒鳴る。クエストマスターは、迷惑そうに耳を抑えながら、周りを見渡し言った。

「オイ誰か、この迷惑なヤツをつまみ出してくれ。警備、警備はどこだ」

 すると、奥からいかにも警備員といった服装のロボットが2体出てきて、女性の両腕を掴む。

「イタッ、痛いじゃねーか! それにまだ話は終わってねぇ」
「こっちの話は終わってる。お前はクビ。それで話はついている」

 クエストマスターの冷たい声とともに、女性は建物の入口へと引っ張り出されていった。私は、思わずシュウさんを見た。すると、彼は小さく頷いた。おお、何も言わずともどうやらシュウさんには、私が言いたいことは伝わったみたい。

 私はシュウさんに小声で言った。

「行ってきます」
「気をつけてな」

 シュウさんの言葉を聞くと、私は走り出した。さっき追い出されてしまった女性。彼女から話を聞くためだ。早くしないと、見失っちゃう。

 建物の入り口に走っていくと、女性は入り口をふさぐように立つロボットに食ってかかっていた。

「おい、アイツに話があるんだ。ここを通せってば!」
『デキマセン。クエストマスター、アナタヲオイダスヨウニイッタ』
「ああもう! 主人に忠実でいいけどさ! 勘弁してくれよ!」
「あのぅ……」

 私がロボットの後ろから声をかける。ロボットと女性の視線がこちらに向く。

「この人、私の友達なんです。私が見張ってますから、中に入れてもらえないでしょうか。あなた方もまだ、お仕事があるでしょうし」
『ユウジン。ユウジンガイルナラ、アンシンダ。ナニカシタラ、マタ、オイダスカラナ』

 そう言うと、ロボットさん2体は帰っていく。女性は私とロボットを見比べ、それから私に不思議そうな目を向けて来た。

「えっと……。アンタ、知り合いだっけ」
「いえ。初対面です。すみません、咄嗟に嘘ついてしまいました」

 私の言葉に、女性は一瞬呆気にとられた表情を浮かべた。けれどすぐにぷっと吹きだして大笑いを始める。

「なんか知らねーけど、助かったよ」
「いえ。あなたに伺いことがいくつかあるのです。お聞きしてもよろしいですか」
「ああ、いいよ。どうせ今日は警備が厳しくなるだろうから、もう一度内部に入るのは難しいだろうからな」

 女性はそう言うと、私の方に片手を差し出してきて言った。

「あたしは、キアナってんだ。そっちは?」
「私は、サランと言います」
「サランね。とりあえず、よろしく」

 こうして、キアナさんと私は出会ったのだった。
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