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ギルド招集
ギルドマスターの職業
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「ギルドマスターさんが……あの会社さんの、社員さん……」
このVRMMOゲームを開発したゲーム会社。それはとても有名な会社さん。内緒の話だけど実は私、この会社のゲームプランナーとして就職を目指して入社試験を受けたことがある。
大学4年生の一時期、本気で私には「物語を書く才能がある。そしてその才能を大好きなゲームで開花させたい」と願った時期があって。ゲーム会社の採用を狙ってひたすらゲーム会社の入社説明会やら入社試験やらを受けていた時期があったの。
結果は二次審査止まりだったけれど。でも少なくとも一次落ちばかりではなかったから、もう少し頑張ったらそちらの方向にも行けたかもしれないという自分の自信にはつながった。あ、でもこのゲームを作った会社は、一次落ちだったな。なんてったって大手。
「ああ。ただそれは『自称』だが。あくまで彼の本業は、デリバリー弁当屋さんだ」
「デリバリー弁当屋さん」
ん? それって本来は社員さんじゃないってこと?
「彼の弁当屋を仕事の日は毎日利用するお客さんがいるらしい。そしてその人に彼は、『わが社の大事な社員』と呼ばれる」
ああ、だから『自称社員』。とても、紛らわしい。
「そして社員の一人として頼まれてほしい、と頼まれたんだ」
「えっと……何を、ですか」
「ゲーム世界が悪い方向に向いて行かないよう見回りを」
「見回り」
私はシュウさんの言葉を繰り返す。シュウさんは神妙な顔で頷く。
「いうなれば彼は、社員に冗談交じりとは言えゲーム世界の安寧を守るよう頼まれた存在だ。何かあった場合はその社員さんが責任を負ってくれる」
「いうなれば、水戸黄門さんが持っているアレみたいなものですか」
正式名称忘れちゃったけど。アレ。
「まぁ、それに近いものはある。とはいえ、表立って行動すれば目立つからな。出来る限り内密に動きたい」
ふむふむ。確かにちゃんとした仕事でもないし。
「ちなみにお礼と言ってはなんだが、うまく行った暁には、ギルドマスターは弁当をごちそうすると言っていた。ぜひ一度食べに来てくれと。あと、よければうちのギルドに入ってほしいとも言っていたな」
「私が……、ギルドに……」
それは思いがけない誘いだった。私はオンラインゲームでギルドに入ったことといえば、イベントをこなすために仕方なく入ったことくらいしかない。そしてそのギルドを構成する人たちもまた、お互いイベントをこなすために人数が必要だからと集まっただけの存在で、特に声掛けやコミュニケーションをとることもなかった。
このゲーム世界においてのギルドはどうだろう。やはりVRMMOだからチャットなどではなく実際に集まっての集会とかが多いのだろうか。そうなってくると、人と面と向かって話すのが苦手な私は向いてないのでは。
そう思っていたら、シュウさんがゆったりと言った。
「うちのギルドは、様々な人間がいる。前線に出て戦いたい人間、生産業に全力を注ぐ人間。人が苦手な人間……。ギルドに入ったからと言って、集会に絶対参加する必要もないし、チャットのみで参加する人間もいていい。あくまで必要な時に、誰かが手を差し伸べてくれる場を提供したい。それがギルドマスターの方針だ」
ああ、それなら。何かしらギルドに入っておいた方が安心な部分もあるし。私はほっと1つため息をついた。シュウさんはそれに、とつけたす。
「それにキミのスキルはだれしもが持っているスキルではない。だから、キミのスキルの存在を知る人が増えれば増えるほど、キミを引き入れたいと思うギルドも増えるだろう。いいギルドも、悪いギルドも」
ああ、やっぱりそうなるよね。シュウさんは目を細める。
「もちろん、他に自分にとって居心地のいいギルドが見つかれば移籍してもらって構わないともギルドマスターは言っていた。あくまで、仮の住まいとして使ってくれればいいと」
どこかのギルドに所属していた方が、面倒ごとに巻き込まれにくいはず。「私すでに別のギルドに所属してるんで」
。そう逃げることができるから。
「隠れ蓑に利用させてもらっていい、そういうことですか」
「ああ。その代わり、所属している間は何かあったら助けてほしいとのことだ」
今回のようにな、そうシュウさんは言う。私は頷いて言った。
「それなら、ぜひシュウさんのいるギルドに所属させて頂きたいです」
「心得た」
シュウさんはどこか安心した様子で、目を細めた。
「ギルドサブマスターとして、歓迎する」
シュウさん、ギルドサブマスターだったんだね、驚き!
このVRMMOゲームを開発したゲーム会社。それはとても有名な会社さん。内緒の話だけど実は私、この会社のゲームプランナーとして就職を目指して入社試験を受けたことがある。
大学4年生の一時期、本気で私には「物語を書く才能がある。そしてその才能を大好きなゲームで開花させたい」と願った時期があって。ゲーム会社の採用を狙ってひたすらゲーム会社の入社説明会やら入社試験やらを受けていた時期があったの。
結果は二次審査止まりだったけれど。でも少なくとも一次落ちばかりではなかったから、もう少し頑張ったらそちらの方向にも行けたかもしれないという自分の自信にはつながった。あ、でもこのゲームを作った会社は、一次落ちだったな。なんてったって大手。
「ああ。ただそれは『自称』だが。あくまで彼の本業は、デリバリー弁当屋さんだ」
「デリバリー弁当屋さん」
ん? それって本来は社員さんじゃないってこと?
「彼の弁当屋を仕事の日は毎日利用するお客さんがいるらしい。そしてその人に彼は、『わが社の大事な社員』と呼ばれる」
ああ、だから『自称社員』。とても、紛らわしい。
「そして社員の一人として頼まれてほしい、と頼まれたんだ」
「えっと……何を、ですか」
「ゲーム世界が悪い方向に向いて行かないよう見回りを」
「見回り」
私はシュウさんの言葉を繰り返す。シュウさんは神妙な顔で頷く。
「いうなれば彼は、社員に冗談交じりとは言えゲーム世界の安寧を守るよう頼まれた存在だ。何かあった場合はその社員さんが責任を負ってくれる」
「いうなれば、水戸黄門さんが持っているアレみたいなものですか」
正式名称忘れちゃったけど。アレ。
「まぁ、それに近いものはある。とはいえ、表立って行動すれば目立つからな。出来る限り内密に動きたい」
ふむふむ。確かにちゃんとした仕事でもないし。
「ちなみにお礼と言ってはなんだが、うまく行った暁には、ギルドマスターは弁当をごちそうすると言っていた。ぜひ一度食べに来てくれと。あと、よければうちのギルドに入ってほしいとも言っていたな」
「私が……、ギルドに……」
それは思いがけない誘いだった。私はオンラインゲームでギルドに入ったことといえば、イベントをこなすために仕方なく入ったことくらいしかない。そしてそのギルドを構成する人たちもまた、お互いイベントをこなすために人数が必要だからと集まっただけの存在で、特に声掛けやコミュニケーションをとることもなかった。
このゲーム世界においてのギルドはどうだろう。やはりVRMMOだからチャットなどではなく実際に集まっての集会とかが多いのだろうか。そうなってくると、人と面と向かって話すのが苦手な私は向いてないのでは。
そう思っていたら、シュウさんがゆったりと言った。
「うちのギルドは、様々な人間がいる。前線に出て戦いたい人間、生産業に全力を注ぐ人間。人が苦手な人間……。ギルドに入ったからと言って、集会に絶対参加する必要もないし、チャットのみで参加する人間もいていい。あくまで必要な時に、誰かが手を差し伸べてくれる場を提供したい。それがギルドマスターの方針だ」
ああ、それなら。何かしらギルドに入っておいた方が安心な部分もあるし。私はほっと1つため息をついた。シュウさんはそれに、とつけたす。
「それにキミのスキルはだれしもが持っているスキルではない。だから、キミのスキルの存在を知る人が増えれば増えるほど、キミを引き入れたいと思うギルドも増えるだろう。いいギルドも、悪いギルドも」
ああ、やっぱりそうなるよね。シュウさんは目を細める。
「もちろん、他に自分にとって居心地のいいギルドが見つかれば移籍してもらって構わないともギルドマスターは言っていた。あくまで、仮の住まいとして使ってくれればいいと」
どこかのギルドに所属していた方が、面倒ごとに巻き込まれにくいはず。「私すでに別のギルドに所属してるんで」
。そう逃げることができるから。
「隠れ蓑に利用させてもらっていい、そういうことですか」
「ああ。その代わり、所属している間は何かあったら助けてほしいとのことだ」
今回のようにな、そうシュウさんは言う。私は頷いて言った。
「それなら、ぜひシュウさんのいるギルドに所属させて頂きたいです」
「心得た」
シュウさんはどこか安心した様子で、目を細めた。
「ギルドサブマスターとして、歓迎する」
シュウさん、ギルドサブマスターだったんだね、驚き!
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