言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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ギルド招集

クエスト受注所のシステム

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 シュウさんは、カンナさんが用意してくれた飲み物を一口飲んで、私の方へゆっくりと視線を向けた。

「それでは、さっそく本題に入るとしよう。……キミは、今までクエスト受注所へ行ったことはあるか」

「いえ、ありません」

 シュウさんの言葉に、私はすぐさま首を横に振る。クエスト受注所。それは、RPGに分類されるゲームや、オンラインゲームならよくある場所。名称はゲームごとに違うと思うけれど、内容はだいたい同じ。

 ゲーム世界においても現実世界においても、お金はとても大事。ゲーム世界において、お金は防具や武器、道具など直接自分の命を守るために使われるものを買う事に使うことが多いと思う。だからお金はあればあるほどいい、と思う。

 そのお金を効率よく稼ぐのに重要なのが、「クエスト」。様々な場所の様々な人からの依頼。それを受注し問題を解決することでお金を得られる。クエスト受注所とは、そのクエストを一所に集めた施設。そこで自分にあったクエストを受注してお金を稼ぐのが基本だよね。

 私は、カンナさんのお店でアルバイトをさせてもらってるから、特にお金に困っていることはない。今私がいる街は、ゲームでいう「はじまりの街」だから近くにいるモンスターのレベルも低いし、街を出なければ危ないことは起きない。だから戦闘レベルの低い私がものすごい装備を手に入れる必要もないから、必要になるお金も少ない。武器防具にお金をかける必要性が、戦いに出ない私には低いから。

「そうか。では、最近のクエスト受注所の騒ぎについては知らないな」
「騒ぎ……ですか」

 私が首をかしげると、シュウさんは神妙な顔で頷いた。

「ゲーム世界においてのクエストは、言ってみれば同じクエストを何度でも、何人でも受注できるのが基本だということは、分かるだろうか」

「ええ。複数の冒険者さんが同一クエストを受注することもできるし、同じ冒険者が幾度も同じクエストを受注することができますよね」
「そうだ。しかし、このゲームはどうやらその前提が通用しないようでな」

 シュウさんは顔をしかめる。

「現実世界では確かに納得できる話なんだが。同じクエストは基本的に依頼者が再度依頼に来ない限り復活しない。そして、同一のクエストを受注できる人数もまた、基本的に1人だけなんだ」

 私はそれを聞いて、唖然とする。そんなルールのゲーム、初めて見た。でも確かに、現実的ではある。だって、例えば「庭の掃除をしてほしい」という依頼に対して極端な話、100人来られても困る。

 そして「庭の掃除をしてほしい」というクエストが同じ依頼者から毎日来るのもおかしい。ゲームの中では普通だけど。日付が変わったらクエストが復活するゲームとか、あるけどね。

「モンスター討伐クエストなどの人数を必要とするクエスト以外、1人しか受注できない。さらに、誰かが受注していると他の人が受注できなくなる。そうなると、何が起きるか、分かるか」

 そう静かな声で問われる。なんとなくは、分かる。

「誰かがクエストを1人占めしたりして、クエストがいきわたらない可能性が出てくる……ということですか」

 私の言葉に、シュウさんが目を細める。

「そういうことだ。しかもそういうことをするヤツが複数人いて、それが集まってギルドを作ったという情報が入っている。彼らの目的は、クエストをギルドで1人占めすること。そして自分たちが手に入れたクエストを高値で売りつけるというあくどい商売だ」

 それは、ひどい。最近は掲示板もちゃんと覗いてなかったから、そんなことが起きてるなんて知らなかった。シュウさんは真面目な顔をして言った。

「それで、こちらのギルドマスターが事情を重く見て、ギルドの解散を目指すことにしたようでな。そちらが戦闘を好んでいないのは重々承知なのだが、知恵を貸してもらえないかと思って相談に来たんだ」

 え、え、ええー!? どこから突っ込んだらいいの私!?
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