言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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言霊クラフト編その2

ドラゴンのうろこ?装備

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 言い争っている2人の方に近づく。そのうちに、2人の容貌が分かってきた。1人は、丸メガネをかけた女性。もう1人は、パーマをあてた茶髪の女性。

 2人は私が近づいてくるのに気づくと、パーマをかけた髪の女性がその場を去っていった。あとには、丸メガネの女性と私だけが取り残される。

 私は一瞬ためらったけれど、丸メガネの女性に声をかけた。

「あの……。大丈夫ですか」

 私の問いには答えず、丸メガネの女性は、こぶしを強くにぎりしめる。そして、私がぎりぎり聞き取れるくらいの小さな声でつぶやく。

「……これは、本当にドラゴンのうろこでできた装備だもん……」

 ドラゴンのうろこ。ファンタジージャンルのゲームや小説でよく聞く言葉ではある。ドラゴンの体をおおう、たくさんのうろこ。その中に1つだけ反対の向きについている、逆鱗となると、もっとレア度が上がったりするやつ……だよね。

 この世界、ドラゴンがいるんだね。私、ドラゴンの見た目がすごく好きなんだ。でも、実際に会いたいかというと、微妙な気持ち。だって私、前線で戦えるタイプじゃないからね。ドラゴンなんてきっと、高レベルである程度装備が揃った、前線に立てる人間だけが戦える敵でしょ。

 それか、大規模レイドとかでそもそも1人で戦えないタイプの敵か。どちらにせよ、私が実物と出会える確率は限りなく低そうだし、そもそも出会った時点でゲームオーバーの匂いがする。

「ドラゴンのうろこでできた装備なんですか。すごいですね」

 とりあえず、私はそう声をかけてみる。でもこんなゲーム初心者が最初に来るような街に、ドラゴンなんているのかな。まぁゲームの進行的に、顔見せ程度に出てくるとか、イベント戦闘ってことなら、ゲームでもよくある展開だけれど。

「そうなんですよ。運よく、心優しい商人さんが譲って下さって」

 丸メガネの女性がずずいっと私の方へ寄ってくる。ち、近い。そして、何やら嫌な予感がする。まぁ、商人さんなら遠くの街とかで手に入れたドラゴンのうろこを加工した装備を売っている可能性もあるだろうけど。

 私は、女性の言葉に耳を傾けながらそっと、彼女の装備を観察する。すると、ポップアップ画面が立ち上がる。

『一式装備:ドラゴンのうろこ装備』

 なーんだ、本物じゃない。私が安心したその時。別のポップアップ画面が立ち上がる。そこにはアイテムの説明文が記載されている。

『ドラゴンという名前の魚のうろこから作られた装備』

 さ、魚。これはどうも、私が思い浮かべているドラゴンではなさそう。この人にとっては、どうなんだろう。これは確かめる必要がありそう。
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