言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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言霊クラフト編その2

お金で買えない縁

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 私は詐欺師さんのプレイヤーIDを運営さんに送ったあと、カンナさんのお店へと降りる。2日間ほど、カンナさんのお店を手伝えてなかったから、今日はちゃんとお店に貢献できる働きをしなきゃ。

 そう思いながら、店先に立つ。私が作り置きしておいた『初心者が作った傷薬』を入れておいたカゴの中が、すっからかんだ。驚き。全部、売り切れたんだね。

 私は、そそくさと傷薬を作る材料を店の奥からとってくると、以前と同じく店の前に陣取って、『初心者が作った傷薬』を量産し始める。

 え、傷薬ばっかり作って、店の売り上げに貢献するようなアイテムづくりをしなくていいのかって? 仕事や勉強をしているとき、学校で授業を受けているとき。何かしら、今手が離せない。そんなときに限って、いいアイデアが落ちてくることって、ない?

 メモ用紙とかが手元になくって、頭の中で記憶しておくしかないようなとき。私はそんなときに大抵、いいアイデアが落ちてくる。アイデアを考えつこうと腰を据えて考えても出てこないのに、他のことをしていると、出てくる。

 だから、今日もそうすることにしたの。いいアイデアが最初からあるわけじゃない日は、こうやって傷薬を量産しながら考えればいい。傷薬も一応、集客には繋がるし。

 私が傷薬を量産していると、私の目線の先に、誰かの足が見えた。あ、このシチュエーション、前にもあったな。そんなことを思いながら私が顔を上げると、そこには見覚えのある2人組。

「あ、セナさんにルリアさん」
「仕方がないから、お礼を言いに来たのですわっ」

 ルリアさんが口早に言う。

「あんなよくありそうな手口に騙されたセナが悪いのですけれどっ。そんなセナを助けてくれて、少しだけ、少しだけですけれどっ、感謝しているのですわっ」

 ぷいっと横を向きながら私に言うルリアさん。かわいい。

「ごめんね、愛想のない子で。でも、ほんと助かった。これであたし、妹にプレゼント買ってあげられるわ」
「お金が返ってきたとはいえ、増えてはいませんけどね」

 もっともなことをルリアさんが言う。そう、セナさんがお金を全部こっちのお金に換金したのは、それを元手にしてゲームの世界でお金を増やして、妹さんにブランドもののバックを買ってあげるためだったんだもんね。

 そんな時だった。カンナおばさんが出てきた。手には、小さな革袋。なんか、よくゲームで見るヤツ。

「サランちゃん、これ、傷薬の売り上げだよ」

 おお、ナイスタイミング。私は、革袋の中の金貨の半分をカンナおばさんに返却。場所代に、私の部屋を確保してくれている分の感謝料。そして、残った半分のお金を全部そのまま、セナさんに渡す。

「セナさん、これ、よかったら使ってください」
「え、でもこれ、サランさんが頑張って稼いだお金じゃあ……」

 ためらうセナさんに向かって私は笑った。

「大丈夫です、傷薬はまだまだこれからも作り続けるんで。とりあえず、これを足しに妹さんのブランドもののバック購入、頑張ってください」

 私の言葉に、セナさんは頷いた。そして輝く笑顔で言った。

「何から何までありがとう。恩返しは絶対するから」
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