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犯人を追いかけて
【ミッション?2】仕事に戻る
しおりを挟むさっき詐欺師らしき人が持って帰ったアイテム。あれは元々は確かに詐欺師さんが持ち主だったけれど、私の言霊・物語付与のスキルを追加したもの。
詐欺師さんに持って帰られたアイテムは、『一式装備:瞬装備(呪)』と、『瞬剣(呪)』。ついでに言うと、私がスキルを付与していない『一式装備:瞬装備(呪)』と『瞬剣(呪)』もまだ、手元にある。この装備、何か裏がありそうだったから、予備があって助かる。これで、詳しく調べられるもんね。
『一式装備:瞬装備(呪)』、『瞬剣(呪)』。この2つの装備には、もう詐欺師さんが詐欺ができない仕組みを組み込んである。もちろん、これを詐欺師さんらしき人が自分のアジトに持って帰ってくれて、他のアイテムが同じ空間にある状態になれば、だけど。こればっかりは、これからの動きに期待かな。ま、位置情報はこちらに筒抜けだからね。
そして今日はもう1つアイテムにスキルをつけることができる。スキルを付与したアイテムは、セナさんに送っておいた。日付が変われば、また3つアイテムにスキルをつけられる。同じスキルを付与したアイテムを、ルリアさん、フリントさん、シュウさんにも送る予定。
私は、メニュー画面で時間を確認する。まずい、休憩1時間終了まで、あと10分ほど。
「私、仕事の合間にログインしたので、今日はとりあえずこれで失礼します」
私は、ヒナコさんとヒナタさんに別れを告げると、慌ててゲームからログアウトする。そしてヘッドギアを弁当を入れている袋に押し込むと、職場へと急いだ。
職場に戻って自分の席に戻るけれど、特に周りの様子が変わった気はしない。うちの職場は、必要最低限のコミュニケーションしかとらない。それぞれの関係が希薄。それなのに、「ほうれんそう」が大事だと言う。
私はコミュニケーション能力は高くない。だから、必要最低限の会話で済むのは確かに助かる。でも必要な情報ですら、ほとんど共有されていないことが多いから、コミュニケーションを取らずしての組織ぐるみの仕事は、うまくいかないんだろう、と最近は感じる。
そう考えると、やっぱり詐欺師さんたちもグループで動き、下手をしたら私が今いるこの組織よりも円滑なコミュニケーションを取りながら、仕事をこなすんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、私はパソコンの画面に向かい合う。そしてデスクに缶コーヒーを置き、少しだけ口に含むと、仕事に戻った。
詐欺師さんとはこれから長い付き合いになりそうだけど、少なくとも、私が介入した詐欺師さんに関しては、ここで一旦落ち着いてくれるといいなぁ。
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