言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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犯人捜し

ヒナタさん

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 私たちの前にやってきたヒナタさんは、すっごいしかめっ面で私をにらむ。

「誰だ、アンタ。オレのいとこの知り合いかよ」

 私は、即答する。

「ついさっき知り合ったばかりです」
「ああ!? 知り合ったばかりだと!?」

 ヒナタさんは私の返答を聞くと、今度はヒナコさんをにらむ。

「ヒナコッ! お前、人付き合いには気をつけろって言ってるだろ!? こんな、今知り合ったばっかりの人間と、何話してるんだよッ」

 ヒナタさん、すごい剣幕でまくしたてる。その声にヒナコさんはびくっと肩を震わせてうつむいてしまう。私は思わず、ヒナタさんに言った。

「あ、私が悪いんです」

 ついそう言ったら、ヒナタさんがギロッとこちらに向き直る。わわ、こっちに注意が向いた。すると、間髪入れずにヒナコさんがヒナタさんに言う。

「ヒナタ、違うの。わたしが声をかけた。この人なら、わたしたちのお菓子を理解してくれるし、協力してくれると思って」
「協力!? オレたちには、そんなもの必要ないって話したじゃないか」

 ヒナタさんの声色がさらに不機嫌なものとなる。ヒナコさんは、ぎゅっと膝の上のこぶしを握る。

「確かに、ヒナタと2人で頑張っていこうって話は、した。でもね」

 ヒナコさんは勢いに任せて言葉を続ける。

「わたし、もっとたくさんのことを吸収したい。そのためにも、色んな人と交流をしたいと思うの。そんな時に、この、サランさんと出会った。サランさんは、わたしたちが作ったお菓子を見て、色んなことを吸収したいってメモしてくれていた」

 何かを見たり聞いたりしたことが、アイデアのネタになる。物語を内包した作品もまたその1つ。ここのお菓子もそう。だから、私はこの世界でも現実世界でも、メモ帳は常に持ち歩くようにしている。

「サランさんとお友達になれたら、きっとわたしの創作の幅が、もっと広がると思う。だから、わたしから声をかけた。ヒナタと作るお菓子を、もっと素敵なものにしたいから」

 ヒナコさんの言葉を、ヒナタさんは静かに聞いている。顔は、怖いけど。ヒナコさんの言葉を聞き終わると、彼はしばらく黙っていた。それから、ゆっくりと息をはく。

 そして私に向かって言った。

「オレのいとこを傷つけたら、絶対許さないからな」
「それは、もちろん」

 私は、大きく頷いた。ヒナタさんはそんな私とヒナコさんを交互に見つめると、1つ大きなため息をつき、少し考え込む素振りを見せた。

 それから隣の席から1つ椅子を持ってきて、ヒナコさんの隣に座る。そしてテーブルに肘をつき、私の前に置いてある夢幻手帳をあごでしゃくって、ぶっきらぼうに言った。

「オレたちのお菓子についてメモしたのは、その手帳か? それじゃ、見せてみろよ。その手帳」

 ええ!? 話がどんどん変な方向に逸れていってない!?
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