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言霊・物語付与のスキル

職場で開封したメール

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 職場のデスクのパソコンモニターの後ろで、私は小さく伸びをする。昨日、調子に乗って傷薬を大量に作っていたら、思っていたより時間が立っていて。少し寝不足。ま、自業自得なんだけどね。

 そんな中、メールが来たことを知らせるポップアップが画面下の端に映る。昨日、ログアウトした後に、ゲーム内にメールが届いたら、リアルのメールアドレスに転送されるように設定したの。

 メールは2通。1通のメールの送り主は、フリントさん。

『昨日はありがとうございました。おかげさまで、『黒騎士の誓いの剣』が狙われることはなくなりました。感謝しております。ところでもう既にご存知かもしれませんが、貴女が僕に使ってくれたスキル、あれはかなりレアなスキルのようです。使ってもらった僕が言うのもなんですが、使用には十分気を付けてくださいね』

 もう一通の送り主は、シュウさん。

『すでに情報を入手していたら申し訳ない。君が持っているスキルと同内容のスキルを持った人間が、荒稼ぎをしているらしい。人違いをされたら厄介だ。スキル使用は慎重になった方がいい』

 どちらのメール内容も同じことを伝えてきているけれど、シュウさんのメールって本当に仕事のメールみたいな文章だよね。無駄がない。

 そしてシュウさんのメールには、何やら添付されている。開いてみると、それは街の掲示板に貼ってある新聞記事のようなものの写真だった。

『アイテムを作り変えます。お気軽にご相談を。1つ10万Yから』

 10万Y!! ぼったくりもいいところじゃないの。私は呆気に取られて口を大きく開けそうになる。しかし、ここは職場。誰に見られているか分からない。

 そして、その隣の記事にはこう書かれていた。

『ぼったくり詐欺師に注意。高額な報酬で、アイテムの性能を変えてくれると謡う詐欺商人の証言が相次いでいます。また、性能がもとより悪くなったという証言も。街の皆様はお気をつけください』

 おう。これは、とてもまずいのではないだろうか。シュウさんが送ってくれた添付画像は、とても説得力があった。確かにむやみやたらにスキルを使っていたら、詐欺師と間違われるよね。

 そもそもその人、本当にスキルが使えるのかな。使えるとしたら、私と同じような性能のスキルなのかな。興味はあるけれど、絶対首を突っ込まない方がいい案件だよね。

 私は2人に知らせてくれたお礼のメールを返信しながら、詐欺師と言われているそのアイテムの性能を変えられるという人のことを考えていた。
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