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言霊付与・クラフト編
その1 傷薬編
しおりを挟む私は早速、カンナおばさんに傷薬の話をした。自分が作った傷薬とお店で売っている傷薬、比べてみたこと。自分が作った傷薬の回復量が少なかったこと。
そこまで話すと、カンナおばさんは、うんうん頷いた。
「なるほどねぇ」
「それで私、考えたんですけど。『初心者が作った傷薬』みたいな感じで、回復量は少ないけど、その分安いっていうアイテムを作って、それを店先に出しておくのはどうでしょうか」
私はカンナおばさんに提案する。よくお店の前におすすめ商品とか目玉商品を置いておいてお客さんの気を引いて、そのまま店に入ってもらうっていうディスプレイの方法があると思う。それをこのお店で実践してみようというワケ。
もちろん熟練度の問題があるから、この傷薬は私が作る必要がある。最初は値段低めに設定しておいて、私の熟練度が上がって効果が上がってきたら、徐々に値段も上げていく。
本屋のポップみたいに、小さな可愛い立て札も作ろう。あとは、目玉商品が必要だよね。私はそう思って、カンナおばさんに尋ねる。
「今、売れ残っていて困っている商品ありますか」
すると、カンナおばさんは店の奥、レジカウンターの後ろに置かれた甲冑を指さした。私が近寄ってよく見てみると、かなり年季が入っているのか、埃かぶっている。さらに、持ち上げようとしてもびくともしない。
「それね、重量の問題で誰も買ってくれないんだわ。それに場所も取るからね、なんとかしたいとは思ってるんだけど」
カンナおばさんの言葉に、私は甲冑をよく見てみる。すると、アイテム説明のダイアログボックスが開放される。
『バトルフォーンの甲冑。一式ボーナス【回避時間延長】。装備推奨レベル60。(推奨レベル以下は重量ペナルティあり)』
レアリティは高い防具だけど、防御力は高くない。しかも、重量が大変なことになってる防具だ。これは、なかなか購入されないのも納得。しかも装備推奨レベルが高すぎる。きっとそのレベルになる頃には、もっといい性能の防具がわんさかあふれてるんじゃないかな。
となると、この防具はいわゆるロマン防具。見た目が好き、とか性能が好き、とか何かに対して好きな部分がないと装備してもらいにくい防具。または、レアリティが高いから、レベルが低い時に手に入れて、とりあえず装備するっていう感じの使用方法になるかと思われる。
でもこの重量だと動きが遅くなるから、低レベルプレイヤーには敬遠される防具じゃないかなぁ。どうやったら使いたいって思ってもらえるだろう。
私、こういうどうやって使うのか難しいようなアイテム、好きなんだよね。なんとか、気に入ってもらった人に買ってもらえるようなアイテムにしてあげたい。
私には、言霊・物語付与のスキルがある。きっとこの防具にも使い道を作ってあげることができるはずだ。
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