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ハジマリの時
クエスト受注、後は実行するのみ
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私は、カンナおばさんに思ったことを伝えた。アイテムは実は、作り手の熟練度によって効果が異なる可能性があるということ。そして、新規に参入してきたお店のアイテムはもしかしたら、カンナおばさんのお店で扱うアイテムと効果が異なっている可能性。
カンナおばさんは、私の話を興味深げに聞いていた。私が話し終わるとカンナおばさんは豪快に笑って言った。
「アンタ、面白いこと言うじゃないか。なるほどねぇ、そういうこともあるかもしれない」
おばさんは私に向き直ると、私に頷いた。
「アンタの思う通り一度やってみるといいよ。どうせ沈みかかった船さ。やるだけやって、ダメだったらさっさと逃げるだけさね」
私はおばさんの返答を聞いて、メニュー画面を開いた。そしていくつか出てくるタブの中の、『受注可能クエスト』を見る。そして以前、受注していなかったカンナさんのクエスト、
『お店の手助け』を受注する。
おばさんは、私に言った。
「それじゃ、アンタは今日からウチの家族だ。二階の居住スペースに一つ、空き部屋があったから、そこをアンタの部屋にしよう」
「部屋まで頂いていいんですか」
私の言葉に、おばさんはまたお腹の底から笑う。
「もちろんさ。アンタはこの沈みかかった船にわざわざ乗りに来てくれた。アタシたちの家族同然さ。何でも相談しておくれな」
おおお、ゲーム初日からいい人と巡り合えて私は幸せだなぁ。部屋もゲットできたし、アルバイト先まで獲得しちゃうなんて。
現実世界ではいいところなし、怒られてばかりの私だけど、ここでは今のところすんなり、自分の当面の居場所を確保できた。あとは、ここで私のできることをやっていくだけだね。
「あ、それじゃ、カンナさん。傷薬の作り方ってご存知ですか。熟練度が低い人間が作ったものと、カンナさんのお店で扱っているプロの方が作った傷薬で効能が違うかどうか、やってみたいんです」
私の言葉に、カンナさんは首をかしげる。
「うん、作り方なら知ってるよ。アタシたちの場合、長いこと店に置きっぱなしの商品とかを使ってるもんだから、実際に作ることは、ほとんどないけどね」
そして、カウンターの奥から1冊のノートを取り出す。
「ウチの旦那が、書き溜めてるレシピ集さね。道具だけじゃなく、色んなものが載ってると思うよ」
「え、これお借りしていいんですか」
私が唖然としていると、おばさんは肩をすくめる。
「アタシが持っていても使うことがないからねぇ。最新のレシピノートはおそらく旦那が持ち歩いているからここにはないけど、バックナンバーなら使ってもらって構わないよ。使い終わったらここに戻してくれたら、それでいい」
そうは言われても、紛失とか情報の流出とかが怖い。ということでここは、夢幻手帳と夢幻羽ペンの出番。
夢幻羽ペンでレシピに乗っているイラストなどを撮影し、レシピに乗っている文言は読み上げて、手帳に書き込みをお願いする。今更だけどこの手帳、絶対分厚くなるよね。
とりあえず、やってみたいレシピだけを写し取って私は、レシピを元の場所に戻した。その様子を、カンナおばさんは楽しそうに見ている。
「冒険者ってのは、本当に不思議なアイテムを使うねぇ」
それから、カンナさんに傷薬を作るために必要な素材をもらって、実際に作ってみる。ちなみに私の中学の技術の成績は、3と2を往復するような感じだったから、工作技術はおそらく、高くはない。
できあがった傷薬と、カンナさんのお店で扱っている傷薬を手に取った。うう、色からして違う。私の作った傷薬、なんか色がよどんでるし、まずそう。
私は、2つの傷薬をトランクに収納する。試すのは、明日にしよう。私は、カンナさんに自分の部屋として使っていい空き部屋に案内してもらって、メニュー画面からログアウトした。さよならゲーム世界、こんにちは現実。
私はヘッドギアを外した。
カンナおばさんは、私の話を興味深げに聞いていた。私が話し終わるとカンナおばさんは豪快に笑って言った。
「アンタ、面白いこと言うじゃないか。なるほどねぇ、そういうこともあるかもしれない」
おばさんは私に向き直ると、私に頷いた。
「アンタの思う通り一度やってみるといいよ。どうせ沈みかかった船さ。やるだけやって、ダメだったらさっさと逃げるだけさね」
私はおばさんの返答を聞いて、メニュー画面を開いた。そしていくつか出てくるタブの中の、『受注可能クエスト』を見る。そして以前、受注していなかったカンナさんのクエスト、
『お店の手助け』を受注する。
おばさんは、私に言った。
「それじゃ、アンタは今日からウチの家族だ。二階の居住スペースに一つ、空き部屋があったから、そこをアンタの部屋にしよう」
「部屋まで頂いていいんですか」
私の言葉に、おばさんはまたお腹の底から笑う。
「もちろんさ。アンタはこの沈みかかった船にわざわざ乗りに来てくれた。アタシたちの家族同然さ。何でも相談しておくれな」
おおお、ゲーム初日からいい人と巡り合えて私は幸せだなぁ。部屋もゲットできたし、アルバイト先まで獲得しちゃうなんて。
現実世界ではいいところなし、怒られてばかりの私だけど、ここでは今のところすんなり、自分の当面の居場所を確保できた。あとは、ここで私のできることをやっていくだけだね。
「あ、それじゃ、カンナさん。傷薬の作り方ってご存知ですか。熟練度が低い人間が作ったものと、カンナさんのお店で扱っているプロの方が作った傷薬で効能が違うかどうか、やってみたいんです」
私の言葉に、カンナさんは首をかしげる。
「うん、作り方なら知ってるよ。アタシたちの場合、長いこと店に置きっぱなしの商品とかを使ってるもんだから、実際に作ることは、ほとんどないけどね」
そして、カウンターの奥から1冊のノートを取り出す。
「ウチの旦那が、書き溜めてるレシピ集さね。道具だけじゃなく、色んなものが載ってると思うよ」
「え、これお借りしていいんですか」
私が唖然としていると、おばさんは肩をすくめる。
「アタシが持っていても使うことがないからねぇ。最新のレシピノートはおそらく旦那が持ち歩いているからここにはないけど、バックナンバーなら使ってもらって構わないよ。使い終わったらここに戻してくれたら、それでいい」
そうは言われても、紛失とか情報の流出とかが怖い。ということでここは、夢幻手帳と夢幻羽ペンの出番。
夢幻羽ペンでレシピに乗っているイラストなどを撮影し、レシピに乗っている文言は読み上げて、手帳に書き込みをお願いする。今更だけどこの手帳、絶対分厚くなるよね。
とりあえず、やってみたいレシピだけを写し取って私は、レシピを元の場所に戻した。その様子を、カンナおばさんは楽しそうに見ている。
「冒険者ってのは、本当に不思議なアイテムを使うねぇ」
それから、カンナさんに傷薬を作るために必要な素材をもらって、実際に作ってみる。ちなみに私の中学の技術の成績は、3と2を往復するような感じだったから、工作技術はおそらく、高くはない。
できあがった傷薬と、カンナさんのお店で扱っている傷薬を手に取った。うう、色からして違う。私の作った傷薬、なんか色がよどんでるし、まずそう。
私は、2つの傷薬をトランクに収納する。試すのは、明日にしよう。私は、カンナさんに自分の部屋として使っていい空き部屋に案内してもらって、メニュー画面からログアウトした。さよならゲーム世界、こんにちは現実。
私はヘッドギアを外した。
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