言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

文字の大きさ
上 下
2 / 304
ハジマリの時

ステータスは、リアル依存。

しおりを挟む
「さて、サランさん。貴女のステータスおよびビジュアルが決定しました。髪の色や髪型、瞳の色、肌の色などはいつでも変更できますので、ぜひどうぞ」

 そう言われて、あたしはおそるおそる、右上に表示された「ステータス」ボタンに触れる。

(基本情報)
 名前:サラン(Lv.1)
 身長:151cm
 ジョブ:冒険者
 二つ名:ドジっ子怠惰物書きもどき

(ステータス)
 STR:1
 VIT:1
 DEX:1
 AGI:6
 INT:1
 MND:10

(エクストラステータス)
 LUK:20(-20)
 CHA:20(-20)

(保有スキル)
 速読
 記憶術
 危険察知
 言霊・物語付与

 ステータス画面を一度閉じて、私は大きく溜め息をつく。ちょっといきなり情報量多すぎて、読む気がなくなる。そして何より、私はステータスに詳しくない。英語省略で書かれちゃってたら、分からんのですが……。

 そう思っていたら、小さくステータスボタンにビックリマークがつく。もう一度開いてみると、さっきまで英文字で表示されていた部分の内容が更新されていた。

(ステータス)
 攻撃力:1
 防御力:1
 命中力(器用さ):1
 すばやさ:6
 魔法攻撃力:1
 魔法防御力(精神力):10

(エクストラステータス)
 幸運度:20(-20)
 カリスマ度:20(-20)

 再度ステータス画面を見て、英文字だった部分のステータスの読み取りができて私は安心する。こういうステータスの英文字省略、私一切覚えてなかったから一瞬焦った。RPGとかだとご丁寧に日本語で記載しているものもあるけど、こうやって英文字表記のものもあるもんね。

 そしてステータスを見て、私はどことなく納得する。現実の私も力は全くと言っていいほど、ない。防御力ってどうやったらつくかは知らないけど、持久力はない方。手先は器用じゃないし、むしろ不器用。すばやさは、走る速さだけなら、それなりに。精神力は、社会人になって鍛えられたから高いとは思う。

「あの、アリッサ様。……この、エクストラステータスというのは、何でしょう」

 私が問いかけると、女神様はにっこり笑って答えてくれる。

「これは、持っている人とそうでない人が存在する、特別なステータスです。貴女はどうやら、幸運度とカリスマ度を持っています。けれど、マイナスもある……」

 私のステータスを見て、女神さまは首をかしげる。

「つまりは、いい方向に作用するときは、とてもいい結果を生み、そうでないときには、とても悪い結果を生む、といったところでしょうか」

 何気に、恐ろしいことを言ってくれるな。私は、苦笑いする。幸運度とカリスマ度。これは、現実の私にも覚えのあるものだ。

 何度も幸運の女神様に救われた経験がある。だから、幸運度は折り紙付きだとは思う。カリスマ度。これは、相手にもよる。リーダーシップはないけど、一部の人には魅力があるとよく言われる人間だった。

「カリスマ度は、一部のジョブにおいてとても重要な役割を果たしますから、いいものですよ」

 女神はそう言うと、私に尋ねる。

「それでは、ジョブの希望をお聞きしましょう」
「ジョブの……希望……」

 私は、ここで首をひねる。選択肢が目の前には表示されてこないのだ。こういうのって大概、目の前に表示されるもんじゃないの。

 私が不思議そうな顔をしていたのか、女神様は私に向かって言った。

「ジョブの幅は多岐にわたります。ですので、直接貴女とお話をしながらご希望に沿うようなジョブを決めていくのです」

 ああなるほど。

「サランさんは、どのようなジョブがよろしいですか」
「私の保有スキルの中にあった、言霊・物語付与が役に立つようなジョブがいいです」

 女神様の質問に、私はそう答えた。すると、女神様は大きく目を見開く。

「言霊・物語付与……。それは、とても珍しいスキルですね」
「どんなスキルなんですか」
「モノに様々な《言霊》や《物語》を付与することができるのです。それがどのように活かせるのか、分かりかねますが……」

 女神さまの困ったような口調。このスキルを持った人、よっぽど少ないのかな。私、『言霊』を信じてるんだ。言霊って、簡単に言えば言葉に宿る力のことで、言葉にするとその物事が本当に起きたりするの。そんな力をモノに付与できるのかぁ……。


 今更だけど私は、力や防御、魔法攻撃力が低いから、そもそも前線に立って戦えるようなタイプじゃなさそう。それに、スローライフを送りながら、小遣い稼ぎするつもりだったんだもん、極度にストレスがかかりそうな戦闘には、できるだけ参加したくないかな。それに、せっかくの言霊・物語付与のスキルが使えるシーンを残念ながら、思いつかない。サポート役なら、使う方法もあるかもしれないけど。

 そうなると、言霊・物語付与が使える生産系のジョブか……。昔、異世界でスローライフを送るコンセプトのゲームで、服を生産したりするの、楽しかったんだよね。自分で説明つけて、スキルつけてみたりとか……。

 そこまで考えて私は、ぽんと手を打った。そして、女神さまに勢い込んで言う。

「女神様! モノに《物語》を付与することができるってことは、例えば、そのモノに対する伝説を自分で作って、付与することとか、できますよね」
「ああ、それならできると思います」
「それなら! その《物語》に関連するスキルをつけることも……」

 私の言葉に、女神様は大きく頷く。

「細かな条件などは発生するかもしれませんが、可能なのではないでしょうか」

 女神さまの言葉に私は、飛び上がってガッツポーズ! これは、すごいスキルを手に入れたかもしれない。ここでなら、もしかしたら私、居場所を見つけられるかもしれない。人に怒られなくて、人に必要とされる存在になあれるかもしれない。

 私の心は踊っていた。女神様が嬉しそうに頷いた。

「どうやら、貴女の心は決まったようですね」

 するとステータスボタンの下に、小さなステータス画面が出て来た。

『サラン(Lv.1) 言霊付与術師』

 どうやら、ジョブが無事に獲得できたみたい! よかった。あとは、実際使ってみないとね。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...