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16. 闘争と死の輪唱

三百二十話 肉体の定着・次の目的地へ

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320話 次への一時の安息

自分に訪れた良き変化とも呼べるものに驚き、同時に肉体の内側を暴れる様に不規
則に流れていた黒い液体は落ち着いて一定方向へ渦を巻くように流れている、これ
なら気を抜いただけで肉体が崩れる事も無いだろう、人型に定着してくれている・・・
そして地中の方から2つの気配を感じ取った、あの2人がこっちに向かっているのか
そう言えば離れていても私の居場所を殆ど感じ取れるんだったな、あれから時間は
どれだけ経っているのか?陽は沈む方に傾いているが大体ダンジョン内に居た時間
を考えればそう時間は経っていなさそうだな
「おぉ、主いつの間にここに?」
「途中で気配が何度も消えて困りましたぞ」
「ん?何度も?」
「そうです、都度3度ですかね、そしてダンジョンが震え異変が始まったかと思えば
また消えてここに居ると言った感じですな」
「ダンジョンの崩壊に巻き込まれるとは我等はとても珍しい経験をしたものですな
普通は消滅するものであって崩壊を起こす事等無いのですが・・・まぁ、貴方といて変
な事が起きるのは今更でありますがな」
バルゼリットは明確に口角が上がっているし声も僅かに上擦っている、珍しい現象
にあった事で興奮しているのか、危険のあった自分としてはイマイチ判らんが・・・
バーゼスクライトの方は・・・特に変わりはなさそうだが、少し浮ついている様な気が
するな?それでも普段との変わりが少なすぎて分かりにくい、声や態度の変化が無
さすぎる・・・それは普段からか、バルゼリットと違って私に危険が迫っても変わらな
いからな、私なら何が起きてもどうにかなったり出来るとでも思っているのだろう
か?それとも死後の余興扱いになっているのか?まぁどちらでもいいが、前者の様
な期待はしないでもらいたいものだ・・・そもそもどちらも楽しんでいる節があるし
「それにしても転移して外に出れるとは運がいいのか、それとも追い出されただけ
なのか?自力で外への転移はしていませんよね?出来ない筈ですし」
「あぁ、追い出されたというかそのまま巻き込まれたが、どこぞを介する事でなん
とか戻ってこれただけだ、まぁ確かに運は良かったのかもしれん」
「ふむ、異界や異空間に放り出されたと・・・」
「そう言う事だな、空間の狭間に投げ出される事が多いように感じるよ」
「とは言えもう慣れたものでしょう?そもそも普通の生物は異空間に投げ出された
場合短期間しか生存活動が出来ないので、大多数にとっては慣れる慣れないと言う
ものでは無いのです、我々霊体であっても中々に厳しい所ですし」
「俺は行った事無いですしどうとも・・・兄者は確か一度跳ばされたんだったか?」
「3分程神の戯れでな、一応神に加護で空間の影響から保護はしてもらえてはいた
んだが・・・それでも普通に死ぬかと思った」
「それでもいくらか慣れる事は出来たんじゃないか?」
「いえ、そもそも慣れる事が出来る存在は上位種位です、どうしても空間の狭間に
は人間より魔物の方が向いてますし魔物の方が多いです、適応力の問題ですかね?
私は全く慣れていません」
「そう言うものか、確かに下位の空間魔法は機能しなかったしな」
「なので空間魔法が使える程度ではどうしようもないのです、時間と空間両方を高
い練度で扱えるなら可能性はあるでしょうが・・・」
「俺には魔法関係はさっぱりだ、軍事的ならまだしも理論云々は判らん」
「気にする必要はない、まだそこまで理論も判明していないからな、そもそも調べ
る事すら難しいのだから致し方ない事だが」
「そうか、まぁそうだろうな・・・簡単に干渉出来る物でもないようだし」
「そうです、調べようにも干渉が難しく、どこから手を付ければいいかも判らず・・・
そして何よりも高位の空間魔法が使える者でも関わりたく無いようですからね、何
やら嫌な予感がするとか恐ろしいとかなんとか」
「そう言うものか、まぁ確かに間違って取り込まれれば何も出来ずただ無駄に死ぬ
状況になるとなれば誰だって嫌がるか」
「何かしら情報が残せるのなら喜んでやる奴もいるでしょう、死んだ後の事等考え
るだけ無駄でしょうが誰だって無駄死には嫌なものです・・・」
「確か最初に調べようとした奴らが全滅したから計画を中止したんだったか?」
「そうだ、国家としては関与していないから詳細は判らずじまいだがな」
魔法に関する施設が幾つかあったからな、当時からあったかは知らないがそのどれ
かがやったんだろう、案外調べたらその時の情報は出てくるのかもしれない、まぁ
二人ともそこまで興味もないだろうし今はもう重要な事でもないだろうから・・・
「それで主はこれからどうするのだ?一度戻るのもありだと思うのだが」
「うむ、ダンジョンに行く度に問題が起きているからな・・・どうせまた何か起きる
んだろうなと考えると、発生する異常が何かと期待さえしてしまうな!」
「そんな事あって欲しくないんだがな、出来れば普通にダンジョン攻略をしたい」
「出来るんでしょうかね?多分無理じゃないです?どーせまた外部から干渉されま
すよ、それでまた異空間送りになって何かしらの影響を受けるんでしょう」
「影響?自分では特に変わってる感じはしないんだがな、変わってるのか?」
「気配と言うか纏う空気と言うか・・・そこは確実に変わっていると言えますね」
「そうなのか?ふむ?」
「気配が濃いと言うか強いと言うか、圧的な感覚が増したと言うか・・・」
「さっきから随分と曖昧だな?」
「言葉にし難い感覚的なものですからね、ですがそんな感じになっていますよ」
「確かに見違えたとか大きく変わったとかそんな感じではないのですが、それでも
確かな変化が感じ取れますし、近くに来た時に変化が大きく感じ取れました」
「あとは・・・気配が安定しましたかね、今までのような揺らぎは感じ取れなくなって
いますし、生と死の気配の揺らぎも無くなっています」
「どっちが強いかと言えば、死の気配が強くなっているんですがね」
「死の方か・・・まぁそれに関してはそうだろうなとしか思わんな、どう考えても生の
方が強くなる要因が無さすぎる、死に関する存在とばかり関わってるし」
「まぁそもそも最初から死の方に近いのもあるんでしょうがね、それに私達も死に
関する存在ですから・・・さもありなんとしか言えません」
「と言うか深淵に関わっている以上死に寄るのは必然なんじゃないか?」
「あぁ、深淵と死はイコールでは無いが確かに大きく死に寄ってるからな」
「そうか、死に寄ってる方が体も落ち着いてるんだよな・・・」
生物らしくありたいと言う思いもあるため少し複雑だが、そもそも仕方無いのだと
言われればそうだとしか返せないからそれを受け入れるしかない、少々残念ではあ
るが・・・自分を再確認しながら次のダンジョンへと足を進める
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