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14.それは成長か退化か

二百八十九話 毒溜りの森:ダンジョンにて恐るべき魔物

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289話 何もダンジョンのボスクラスだけが危険個体な訳では無い

だがこっちの動きに気付いている様子は無かった、なら意図的にやったのではなく
無意識、もしくは先に罠を設置していた事になる・・・そしてそれに反応してこっちを
視認した、そうなるとやはりこれは罠か?あの反応からしてこの罠が起動した事で
こっちを感知したと思われる、飛び越えて逃げるか?・・・だめだこの奥に罠が無いと
も限らない、着地時の隙や跳躍後の空中で狙って来る可能性も大いにある、何せ奴
の知能が高い事が判っている以上迂闊な事は出来ない、動かない?何の反応も無い
奴と言うのはかなり厄介だな、何か反応してくれれば予測の1つは出来るのだが・・・
とは言えこの壁を近くに背を向けては居られない、後ろから枝の軋むミシミシ音が
聞こえて来る、どうやらこの壁動いているようだ、後ろを見れば枝が這うようにし
て動く枝の壁・・・そして枝の集合体らしき樹巨人?!右上半身しかない壁から生えて
いるそれが振り下ろして来る丸太のような右拳をなんとか避ける、こんな事までし
て来る・・・出来るのか、これは魔物では無く壁を起点に生成したゴーレムの様なもの
なのだろう、実際あれをあれを鑑定しても何も出て来ないし間違いないはず、単純
な動きしか出来ないだろうし片腕しかない以上近付かなければ問題無い、もし形状
を変えたり魔法を使えるなら別だがそんな高難易度な魔法を使える者などそうそう
居ない、ただ魔法じゃないならあり得るんだよなぁ・・・これだから魔物は厄介なんだ
面倒な特性を持ってる奴が居る、まぁ言ってしまえば私もそうなんだがそれは置い
といて・・・さっきから体に力が入り難いと思っていたがそう言えば腹部に穴が開いた
ままだったな、ふむ?どうやら傷口から特段毒を吸収しやすいと言ったような生物
的な特徴が無いようだ、自分の事ながら便利な特性も持っていると判明した、新し
い発見だな、やはり肉体は死者の方に近いのか?そうなると生命探知に引っ掛かり
難いと言うのはこれのおかげだろう・・・もしかしてキンリンガムイが私を警戒し続け
ていたのは気配の探知で私を探知出来ていなかったらか?遠くに居たソンブレオの
探知はその姿を見せる前に探知していたのか察知が速かった、攻撃への対処速度は
それとは関係ないだろうから能力低下を期待出来ないが、視認していない場合奴は
私を探知出来ないものと考えていいかもしれない、そうなると視界外に抜ける様に
後ろを取ったりしていればいいのか?今はもう視認されているから戦うためにも後
ろを取るためにもまずは近付かなければならない・・・のだが出来るか?奴は思った
より素早い、この沼地に適応出来ているのかそれとも沼の外だともっと速いのかは
判らないが、足場が沼だとあの速度相手には裏取りどころか近接戦すら厳しいもの
になるとしか思えない、逃げれるかと言えば無理、勝てるかと言えば無理・・・ふぅ
勝ち目は無いし逃げ道も無い、良く見れば壁の向こうには幾つも魔物の姿らしき影
が見えている、これだと飛び越えたとしても奴らに撃ち落とされるだけだ、なら
奴を相手してどうにかするしかない、何事も成る様にしかならない以上想定はして
おくべきだろう、何より対処法も考えられるのだからしておいて損は無い・・・ただ
困るのは壁を出してから動く素振りが無い事、逃げようとすれば妨害して来るが
それ以上の攻撃をして来る気配が無いし、今も最初と変わらず佇んでいるだけ・・・
だがソンブレオの時はもっと過剰に反応して居たし攻撃的だった、それは何故だ?
私の危険度が低い、自分より圧倒的に弱い存在と判断した?ソンブレオが自身の
危険に相当する相手だだと判断したからか?可能性は大いにあり得るが他にあると
すれば攻撃的な意思?それともそれ以前の敵対する意思の有無か?逃げようとすれ
ば妨害をしてくるなら近付けばいいのでは?そうなるとまた毒沼に戻るハメになる
から出来ればしたくないんだがそうも言ってられない、今度は忍ぶ必要も無いため
ザブザブ音を発てて進む、近付き始めているのに何も反応が無い・・・なんとなく左手
を向けるもそれだけだと危険を検知していないのか反応しない、そして邪弾を撃つ
も当たっているのに反応しない・・・少しもダメージを与えれていないからだろうか?
だとするなら最初に反応して動き出したのは何だったんだ?判らない・・・大剣を長刀
に戻し左手を前に出したまま引き絞り投げの構えを取る、右脚を前に出し少し屈み
右脚を後ろに出し少し上半身を後ろに逸らす、どうしても投げる対象の重心が後ろ
に偏ってしまうため押し込む様な投げ方をしなければならない、柄は握らず乗せて
柄頭を挟むようにした構えから押して投げ飛ばす、それは思ったより距離によって
下がってしまったが腹部?と思われる位置に突き刺さった、防ぐ事も避けようとも
せずに直撃した・・・危機だと感じなかった?それともこれですら効いていないのか?
メリメリと頭部の口らしき部分が開いていく、ずるりと剣が呑み込まれたかと思う
と口から吐き出され飛んで来た・・・どうなってるんだ?沼に刺さった剣を引き抜く
「クォォォオォ」
キンリンガムイから空気を吐き出す様な音が聞こえた、吠えているんだろうか?
それでも攻撃してくる様子は無い、さっきのも攻撃では無さそうだったし、まだ敵対
状態になっていないだろう、大剣状態にして盾の様に構えながら沼を掻き分け近付い
て行く、眼の前まで来ているのに何もしてこない・・・さっきから何の意図があるのか
さっぱり予測が出来ない、そのまま大剣を横薙ぎに振り抜き胴体を斬る、流石に頑丈
で刃先が少しめり込んだ所で止まった、モズトレントより確実に硬い・・・やはり急所
と思われる場所を狙わないと無理か、だがそこへ突きを放つも体を逸らして避けられ
剣を腕で上から叩き落とされてしまう、やはりそこへの攻撃は嫌がっているようで防
いで来る・・・だが変わらず攻勢に出て来る気配がない、ただ気配は変わっている・・・何
とも言えないモヤモヤとした感覚だが確実に言えるとすれば、嫌な予感がしてきた
ふと周囲の空気が静まる、風に吹かれ揺れる草木の擦れる音や遠くから僅かにだが聞
こえて来ていた魔物の鳴き声が消え、僅かに水面が揺らぐこの沼は動いて出来るはず
の音が聞こえず、しんと静まり返った所にキーンと小さな甲高い音が聞こえて来る
キンリンガムイが小さく揺れて・・・いや震えている?
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