上 下
279 / 326
14.それは成長か退化か

二百七十六話 己との向き合い?

しおりを挟む
276話 自分自身というモノ

この布を貰ってしまった・・・正直腕甲や靴と簡素ではあるが装備を失い更にただの
腰布ではあるが唯一の服を失ってしまったから助かるには助かる、そこら辺の店で
普通に売ってる程度の物しか失ってないから別に無くなったのはいいんだが・・・ただ
いつものローブ代わりの布を除くと残っている布の予備が1枚しかない、普通の服は
なんか着たくないんだよな・・・なんでか判らないが、直ぐに使い物にならなくなると
しても安物ならいいんじゃないかとも思っていたのに、種族的な物だと思いたい・・・
そんな事を考えながら彼の後を着いて行くと、最初に案内された部屋へと戻って来た
通っていた通路の事は殆ど覚えていなかったせいか、少し驚いていたのは内緒だ
そしてテーブルの上には何故かクッキーの様なお菓子の乗った皿が乗っていた
「まァ、一息つこうじゃないか、飲み物を持って来るが少し待っていてくれるか?
着替えてくる、流石に客人の前でこの姿は王としてちょっと格好がなァ・・・」
ふむ、地位のある者としてはそう言ったのが気になるのだろうな
「判った、こっちは客だからなんとも言えないが・・・まぁ好きにしてくれ」
「うむ、ちょいと待っていろ」
扉から出て行かずに影に沈むようにして一瞬で姿を消した、どうやら陰で移動する
様だが・・・便利な移動方だな、吸血鬼の種族的なスキルや魔法だろうか?それとも
影か闇の魔法か?便利そうだ・・・空間魔法の転移より魔力消費も制限も少なそうだし
使い勝手が良さそうだ、どちらかというと指定の場所への転移の方が近い・・・いや
影を移動している?見た限り転移と言うより壁を透過しているように見えたし霊体
での移動の仕方に近いのか?ふと前に視線を戻すと皿の上のお菓子が何時の間にか
減っていた、もしかしてあの短時間で食べたのか?そう言えばそうか、食べた速度
には驚きだが2日も経っているし、その間彼も何も食べていなかったのだから空腹
だったのだろう、とは言え吸血鬼が普通の食事を必要とするかどうかは知らないが
・・・空腹感はあってただの趣向品なのかもしれないし、普通の生物同様活動するには
エネルギーを必要として摂取していると言うのもあり得る、1つ食べてみるも口に
含んだところでは味はあまり無いが、上に載っていたジャムの様な赤い物はどろり
と溶けていった、すると口内に鉄の様な味が広まっていく、噛んでみると中からも
同じ様にどろりとした僅かに粘性のある物が溢れ出て来る・・・これは加工した血か?
となると彼はこれを食べて血を補給していたのか、これが吸血鬼の食事なのかもし
れない・・・いや、やはりただの趣向品の可能性の方が高いか、呑み込んで少しすると
疲労感等は特に無かったものの体に活力が湧いて来た、これは・・・生命力の増強か?
回復薬のような物なのだろう、成程、そう言えば血は生命力とも言うし血の魔法は
生命に大きく関わっているのだから、それを利用し作られた効率的に摂取出来る物
に回復効果があるのは当然と言えば当然か、そもそも回復薬の中にも血を使った
製作方法が普通にあったんだし・・・本来普通のより回復効果は弱いらしいが、これは
それより圧倒的に効果が高い・・・ふむ?この血はどこか知っている味の様な気がする
これはまさか彼の血か?外に出し保管しておいた血を取り込む事で回復していたと
言う事だな、これが吸血鬼の血を取り込む事による回復能力か
「またせたァな、変わり映えは無いが」
音も気配も無くいつの間にか居なくなった場所に戻って来ていた、この移動方から
すると性質的には場所を指定する転移が近いか?顔を向ければ言葉通り最初に会った
時のような貴族らしい服を着ていた、首元の色が少し違う位で他は同じ物のようだ
「さて・・・ん?食ったか?」
「あぁ1つ貰った、すまない」
「構わんが美味くは無いだろう、ワシ用に調整されとるからな、血の味しかない」
「そうだなそれ以外の味は無さそうだった」
「言っても食欲があるって訳でも無さそうだが、お前さんも随分消耗しただろうし
外部からエネルギーを摂取する必要があったか?」
「そうだな・・・少し体が重い、まぁ疲労が残っているだけだろう」
「ふむ、それだけなら良いのだがな、それを食べて幾らか回復出来たか」
「感謝しているよ、迷惑ばかり掛けたと言うのに」
「お前さんが気に病む事では無い、そもそもあの戦いはワシが吹っかけたんじゃ
それにあの暴走も最初から予想はしていた」
「確かにそのようだったが、ワザと暴走を引き起こそうとしていなかったか?」
「それもある、最初は暴走しても一方的に押し込める程の差があると思っておった
実際実力差は歴然、圧倒的な差があるのだからな・・・ワシが負けるなんぞ万一にも
ありえんし、実際まともな一撃さえ受け取らん」
「そうだな、受けに回っているだけで精一杯だった」
「だが暴走状態は違った、お前さんは覚えとらんだろうが」
「確かに覚えてない、情報は幾つか頭に浮かんでいたが記憶は無い」
「ふむ?そこも気になるがまぁいい、先程の通り暴走しても問題無いと高を括って
いたんじゃが、暴走してからは肉弾戦は互角レベルになるわこっちの魔法を肉体や
魔法で相殺されたり撃ち落とされるわ、能力を封印されたのか機能しなくなったり
と色々と問題があったのだ、正直最後のが一番効いた」
「機能していたように思えるが?」
「再生能力はな、血を操る能力とそれに伴う魔法は大きく制限されていた、再生も
結局妨害を受けて弱体化したし、魔眼も完全に効かんかったしな」
「暴走状態のが圧倒的に強くなっている・・・本来の能力が機能していると言う事か」
「だろうなァ、お前さんの人格や性格・・・それによって機能を抑えとるんだろうよ
じゃなけりゃ人間、いや生物の社会には入れんどころか、生物はお前さんの近くに
居るだけで死んでいこう・・・あそこでそれが垣間見えたろ?」
「自然が死んで土が枯れていた・・・あれが暴走による影響だと?」
「その通りだ、被害では無く影響、唯そこに居るだけで周囲の生命力を掻き消して
いく死の権化と言っていい能力、彼の神々の権能に等しい影響力だ」
「6神か」
「フッ、だからと言って死霊にとっては居心地が良い・・・と言う訳でもない」
「む?どうしてだ?」
「簡単だ、魔人とは死を越えた死、だがそれは死を越えて存在するモノでは無い
死を越えた死と言う存在なのだぞ?死の存在である霊をもすり潰してしまうのだ」
「成程・・・覚醒しない方がいいのか」
「・・・それはどうだろうな」
「だが覚醒すればその性質が出て来るんだろう?そうなれば今までのようにあれな
いし邪魔者にしかならない」
「まぁ確かに覚醒して暴走すりゃ、この世界も終わるだろうが・・・」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】パンでパンでポン!!〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

櫛田こころ
キャラ文芸
水乃町のパン屋『ルーブル』。 そこがあたし、水城桜乃(みずき さくの)のお家。 あたしの……大事な場所。 お父さんお母さんが、頑張ってパンを作って。たくさんのお客さん達に売っている場所。 あたしが七歳になって、お母さんが男の子を産んだの。大事な赤ちゃんだけど……お母さんがあたしに構ってくれないのが、だんだんと悲しくなって。 ある日、大っきなケンカをしちゃって。謝るのも嫌で……蔵に行ったら、出会ったの。 あたしが、保育園の時に遊んでいた……ままごとキッチン。 それが光って出会えたのが、『つくもがみ』の美濃さん。 関西弁って話し方をする女の人の見た目だけど、人間じゃないんだって。 あたしに……お父さん達ががんばって作っている『パン』がどれくらい大変なのかを……ままごとキッチンを使って教えてくれることになったの!!

元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~

大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。 魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。 しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。 満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。 魔族領に戻っても命を狙われるだけ。 そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。 日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。

処理中です...