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14.それは成長か退化か
二百七十五話 進歩と確信
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275話 無我と本質の過程
「ハァ・・・今度は全力で戦いたいモノだ、お前さんとの戦いは本当に良ィ」
「それはどうも・・・グッ、ハァ・・・どれだけ被害か出るか」
「クハハ、それもそうだ、強くなったんじゃないか?全く暴走するとはな」
「暴走?確かに途中から意識は無かったが・・・」
「肉弾戦だけだったから良かったが、止めるのに苦労した」
「・・・すまない、迷惑を掛けたか」
「ワシがけしかけた以上仕方ないんじゃが、もうあれから2日経っとるぞ」
「そんなにか?悪い事をした・・・それで、この惨状はどうすれば?」
周りを見渡せば最初と違い、あちこち地面は抉れそこに血溜まりが出来ていた・・・
恐らく意識を失ってから随分と広範囲を移動しながら戦っていたのだろう、戦いの
場としていたこの中庭は辺り一面・・・どころか一帯は既に赤と黒で埋め尽くさんと
言わんばかりの有様になっている、そして端で僅かに残っている草は全て朽ちたか
のように色褪せしなびていて一部は燃えたかのように炭化している、火の魔法でも
使われたのだろうか?自分は既に纏っていた布は僅か1部が残っている位で、腕甲と
靴も既に無くなっていて、だが燃えてたのかどうかはその名残も無いから判らない
彼は上半身に何も纏っておらず、下半身も膝上辺りから下は破れて靴も無くなって
おり、腰の部分も少し削れているようでベルトが無くなっている・・・意識を失うまで
の戦いでは傷1つ付ける事が出来ない程の実力差で、戦いと呼べるものでは無い明確
な差があった、だと言うのに意識を失ってからは互角と言っていい程の戦力に差が
無かったのか、戦いは激化していたようだ・・・さっきから僅かだが思考にその闘いの
風景が流れて来る、そして見えている状況の中で戦いに関する情報が言語化されて
無理矢理頭に叩き込まれていく、その景色は歪みに歪んで形をまともに認識出来ない
速度で、互いにぶつかり合って地面に叩き付け合っては薙ぎ払うように振るった腕で
直線状の空を裂き地面を削ると言った事を互いにしていたようだ、そのせいで地面が
こんなに荒れているんだろうが・・・それでもこれだけで済んだのは、途中から魔法の
使用をやめ空中戦に誘導していた彼の技量と戦術のおかげか?魔法を使われた際には
こっちも魔法を使ったり広範囲への攻撃を行っていたようだし、聖と邪の魔法は直撃
していたが彼に効いている様子は無かった、まぁ彼にとってはあの程度の魔法なら避
ける必要も無かったのだろう、別の魔法は避けていたようだったがあの闇魔法らしき
モノはなんだったんだろうか、あんな魔法知らないし使えもしないんだが・・・あれも
元々は持っていた力なのだろうか?それとも私が引き出せていないだけなのか
「ふぅ・・・ようやく調子が戻って来た、やっぱこいつァ再生阻害か?やっと治った
そろそろ中に戻るか、ここは放っておいていい、暫く放置して様子見だ」
「解った、従おう」
「おう、どうなるか気になるってのもあるからな・・・別にここは荒れても問題ないし
お前さんは気にするな、ちょっとこれからどうなるか興味が湧いたってだけよ」
赤と黒の血は緩やかに広がりながら少しづつ地面に染み込んでいく、気をつけながら
進むと緩くなった土に足が僅かに沈む、土を踏んでいると濡れている感触があるのに
砂の様に乾いた感触もある、異様な感覚だ・・・赤の命と黒の死が両立しているのか?
そう思えば2日も経っている様なのに、彼の血はまだ乾く事も無く活力に満ちている
互いに汚れたまま扉まで行くとその隣に水が僅かに溜まっていた、壁には細い管の
様な物が設置されている、どうやら水を出す道具の様だ
「取り敢えず土と血を洗い落とすぞ、屋敷内を汚すと色々言われるんでな」
「まぁ・・・そうだろうな、当然と言えば当然の事か」
「ん?お前さん、もう纏っとる物がボロボロではないか・・・まるで変態のようだ」
あらためて見ると腰のポーチも無くなっていた、フードとして使っていた物ももう
無いし消えたかと思ったが、亜空間倉庫にあった・・・何時の間に入れていたんだ?
「代わりはあるから問題ない」
「そうか、ならそりゃ処分しといてやる・・・もう使い道も無かろう」
「そうだな、助かる」
腰の縛り目を解こうとして引っ張ると、後ろの方が千切れて外れた・・・どうやらもう
限界だったようだ、そこに勢いのある水を脚に掛けられた、血が飛んでいくが・・・
「もう初日のは乾いちまってるか、こびり付いちまってるしそりゃ無理だな」
赤黒く乾いた血がこびり付き黒い方は僅かに肌が変色した、まぁこれは仕方ない
「まぁ他の物に付着しない程度まで取れりゃ充分だろ」
頭から水を被って上から血を落としていく、血が落ちていくとその白めの肌にはまだ
焼けた様に変色した部分が残っていた、黒ずんだ皮膚を今も回復しているようだ
「ふぅ、スッキリしたぜ・・・そら、お前さんもだ」
頭から水を掛けられ付着している血や土が流れていく、随分と血が着いていたようで
どろりと半ば硬化していた血の塊が落ちていく、べっとりと血が纏わり着いて重い束
になっていた髪が軽くなる、それでもまだまだ流れていく水に赤色が混じっているし
もう固まってしまった血が残っている場所を揉んで血の塊を崩していく、ボロボロと
小さな血の塊が落ちていく・・・今までのとは違い彼の固まった血は思ったより硬い
「まぁこんなもんでよかろう、あとはこれで乾かして終わりよ」
その手から熱風と言える程熱めの風が吹き出され、風で全身の水を弾き飛ばしていき
その熱で髪を含めて素早く乾かしていく、彼の魔法のおかげで随分早く済んだな
「んじゃこれを使え、流石にマッパではうろつけんのでな、ハッハッハ」
そして黒いシーツの様な布を差し出された、大きさは今までの布より小さめと言う事
もあって前のよりも腰に巻いていて邪魔にならないし、膝に届くだけの幅はあるが腰
で巻いて長さを調節する必要が無い程に丁度いい長さだ、それに生地も前より良い物
なのか肌触りはザラつかず、サラサラしていてきめ細かい作りになっている、端の方
もこっちは少し分厚くなっていてほつれ等も無い・・・もしや高めの布なのでは?
と言うかそうか、そもそも彼は吸血鬼の王なんだしそりゃ良い物を使ってるよな
「お前さん・・・似合うな、白よりこっちの方が良いぞ」
「そうか?自分では判らんが・・・しかしこれは高そうだ」
「ん?そうでもない、確かに素材はちょい良いモンを使っちゃいるがな、値段はそこ
らの平民でも余裕で買える物だ、ついでだしそりゃお前さんにやろう」
「ハァ・・・今度は全力で戦いたいモノだ、お前さんとの戦いは本当に良ィ」
「それはどうも・・・グッ、ハァ・・・どれだけ被害か出るか」
「クハハ、それもそうだ、強くなったんじゃないか?全く暴走するとはな」
「暴走?確かに途中から意識は無かったが・・・」
「肉弾戦だけだったから良かったが、止めるのに苦労した」
「・・・すまない、迷惑を掛けたか」
「ワシがけしかけた以上仕方ないんじゃが、もうあれから2日経っとるぞ」
「そんなにか?悪い事をした・・・それで、この惨状はどうすれば?」
周りを見渡せば最初と違い、あちこち地面は抉れそこに血溜まりが出来ていた・・・
恐らく意識を失ってから随分と広範囲を移動しながら戦っていたのだろう、戦いの
場としていたこの中庭は辺り一面・・・どころか一帯は既に赤と黒で埋め尽くさんと
言わんばかりの有様になっている、そして端で僅かに残っている草は全て朽ちたか
のように色褪せしなびていて一部は燃えたかのように炭化している、火の魔法でも
使われたのだろうか?自分は既に纏っていた布は僅か1部が残っている位で、腕甲と
靴も既に無くなっていて、だが燃えてたのかどうかはその名残も無いから判らない
彼は上半身に何も纏っておらず、下半身も膝上辺りから下は破れて靴も無くなって
おり、腰の部分も少し削れているようでベルトが無くなっている・・・意識を失うまで
の戦いでは傷1つ付ける事が出来ない程の実力差で、戦いと呼べるものでは無い明確
な差があった、だと言うのに意識を失ってからは互角と言っていい程の戦力に差が
無かったのか、戦いは激化していたようだ・・・さっきから僅かだが思考にその闘いの
風景が流れて来る、そして見えている状況の中で戦いに関する情報が言語化されて
無理矢理頭に叩き込まれていく、その景色は歪みに歪んで形をまともに認識出来ない
速度で、互いにぶつかり合って地面に叩き付け合っては薙ぎ払うように振るった腕で
直線状の空を裂き地面を削ると言った事を互いにしていたようだ、そのせいで地面が
こんなに荒れているんだろうが・・・それでもこれだけで済んだのは、途中から魔法の
使用をやめ空中戦に誘導していた彼の技量と戦術のおかげか?魔法を使われた際には
こっちも魔法を使ったり広範囲への攻撃を行っていたようだし、聖と邪の魔法は直撃
していたが彼に効いている様子は無かった、まぁ彼にとってはあの程度の魔法なら避
ける必要も無かったのだろう、別の魔法は避けていたようだったがあの闇魔法らしき
モノはなんだったんだろうか、あんな魔法知らないし使えもしないんだが・・・あれも
元々は持っていた力なのだろうか?それとも私が引き出せていないだけなのか
「ふぅ・・・ようやく調子が戻って来た、やっぱこいつァ再生阻害か?やっと治った
そろそろ中に戻るか、ここは放っておいていい、暫く放置して様子見だ」
「解った、従おう」
「おう、どうなるか気になるってのもあるからな・・・別にここは荒れても問題ないし
お前さんは気にするな、ちょっとこれからどうなるか興味が湧いたってだけよ」
赤と黒の血は緩やかに広がりながら少しづつ地面に染み込んでいく、気をつけながら
進むと緩くなった土に足が僅かに沈む、土を踏んでいると濡れている感触があるのに
砂の様に乾いた感触もある、異様な感覚だ・・・赤の命と黒の死が両立しているのか?
そう思えば2日も経っている様なのに、彼の血はまだ乾く事も無く活力に満ちている
互いに汚れたまま扉まで行くとその隣に水が僅かに溜まっていた、壁には細い管の
様な物が設置されている、どうやら水を出す道具の様だ
「取り敢えず土と血を洗い落とすぞ、屋敷内を汚すと色々言われるんでな」
「まぁ・・・そうだろうな、当然と言えば当然の事か」
「ん?お前さん、もう纏っとる物がボロボロではないか・・・まるで変態のようだ」
あらためて見ると腰のポーチも無くなっていた、フードとして使っていた物ももう
無いし消えたかと思ったが、亜空間倉庫にあった・・・何時の間に入れていたんだ?
「代わりはあるから問題ない」
「そうか、ならそりゃ処分しといてやる・・・もう使い道も無かろう」
「そうだな、助かる」
腰の縛り目を解こうとして引っ張ると、後ろの方が千切れて外れた・・・どうやらもう
限界だったようだ、そこに勢いのある水を脚に掛けられた、血が飛んでいくが・・・
「もう初日のは乾いちまってるか、こびり付いちまってるしそりゃ無理だな」
赤黒く乾いた血がこびり付き黒い方は僅かに肌が変色した、まぁこれは仕方ない
「まぁ他の物に付着しない程度まで取れりゃ充分だろ」
頭から水を被って上から血を落としていく、血が落ちていくとその白めの肌にはまだ
焼けた様に変色した部分が残っていた、黒ずんだ皮膚を今も回復しているようだ
「ふぅ、スッキリしたぜ・・・そら、お前さんもだ」
頭から水を掛けられ付着している血や土が流れていく、随分と血が着いていたようで
どろりと半ば硬化していた血の塊が落ちていく、べっとりと血が纏わり着いて重い束
になっていた髪が軽くなる、それでもまだまだ流れていく水に赤色が混じっているし
もう固まってしまった血が残っている場所を揉んで血の塊を崩していく、ボロボロと
小さな血の塊が落ちていく・・・今までのとは違い彼の固まった血は思ったより硬い
「まぁこんなもんでよかろう、あとはこれで乾かして終わりよ」
その手から熱風と言える程熱めの風が吹き出され、風で全身の水を弾き飛ばしていき
その熱で髪を含めて素早く乾かしていく、彼の魔法のおかげで随分早く済んだな
「んじゃこれを使え、流石にマッパではうろつけんのでな、ハッハッハ」
そして黒いシーツの様な布を差し出された、大きさは今までの布より小さめと言う事
もあって前のよりも腰に巻いていて邪魔にならないし、膝に届くだけの幅はあるが腰
で巻いて長さを調節する必要が無い程に丁度いい長さだ、それに生地も前より良い物
なのか肌触りはザラつかず、サラサラしていてきめ細かい作りになっている、端の方
もこっちは少し分厚くなっていてほつれ等も無い・・・もしや高めの布なのでは?
と言うかそうか、そもそも彼は吸血鬼の王なんだしそりゃ良い物を使ってるよな
「お前さん・・・似合うな、白よりこっちの方が良いぞ」
「そうか?自分では判らんが・・・しかしこれは高そうだ」
「ん?そうでもない、確かに素材はちょい良いモンを使っちゃいるがな、値段はそこ
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