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11.皇族の指名と継承

二百三十八話 変異せし皇の剣/深淵よりの皇権

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238話 変異ゆえの皇剣/皇権

まるで跪くような姿勢となり頭を下げて停止する・・・右腕が前に出されている・・・
その右翼腕を足場に昇りマガセビの元へ向かえば、掴むように覆っていた結晶が
砕け塵となって消え結晶の一部を取り込んだのか、刃の中心部となっていた手前
部分の骨が左右に裂け、その中に中心が薄紫色で外側が青紫色になっている深淵の
結晶が嵌め込まれて手前の中心の割合が大きくなっている・・・何か変わったのかと
思ったが、引き抜いても持った感覚と振る感覚は今までと変わりは特に感じない
むっ?足場が崩れ地面に足を着く、周囲に塵の様な物が舞い風に吹かれ飛んで行く
どうやらワイバーンイーターの肉体が塵となったようだ、深淵に耐えられなかった
のか深淵が必要としなかったのか判らないが、ワイバーンイーターの肉体も魂も
持っていかなかったようで、青紫色の火が吹き上がり塵を流していくこんな状況に
なっているのだろう・・・手元へ目をやればマガセビだけで無くアヴェンジャーも
変化していた、暗い赤い線が奔る鈍い光沢の無い黒に染まっていた剣だったが
元から刃の根元にあった結晶の様な部分が光を放ち中心から赤・青・赤紫と3つに
分かれた色になっている、更に暗い赤い線が輝いて真紅の線を取り戻して脈動する
かのように光が流れている、幾らか元の力を取り戻せた事で姿が戻ったのだうか?
それに元々深淵の力を持つから今回の事もどうにかなったのだろう・・・あの現象や
奴が戦いを辞めたのは恐らく深淵の共鳴反応によるものだろうし、無ければ自力で
あれを倒すハメになっていたと考えると億劫になる・・・時間も道具も浪費していた
だろうからな、しかも殺しきる事が出来るかも判らないし・・・あぁそれにしても
なんだか妙に思考がスッキリしている、まぁ空っぽなだけも言えるかもしれないが
取り敢えず共和国に向かわなくては、今回は素材の回収も何もないからもうここに
用は無い、ワイバーンイーターの肉体は全て塵と青い火になって散って消えたし
ワイバーン達の死骸はもうぐちゃぐちゃで、回収しても素材としての使い道は殆ど
無いだろうから回収しても金にも資材にもなりそうにない、それにこのまま居て
ワイバーン達に襲われても面倒だからな、助けになってくれたワイバーンには少し
感謝しているから死体の処理位してもいいんだが、ここから見える範囲には無いし
悪いがそのままにさせてもらう、まぁ自然がどうにかするから放置の方がいいの
かもしれない事を考えそのままにしておく、そこでふと頭に過ったのは何故が来て
しまった本体のアヴェンジャーの事だ・・・存在そのものが周囲の生命にとって危険
な特性を持つため持ってられないし、亜空間倉庫へ入れようとしても拒絶されて
通り抜けてしまう、そしてこれをどうしたものかと思っていると存在が急に不安定
になり消滅した・・・感覚からすると戻ったのだろう、バルゼリットの方を見ると
持っている剣の様子が少し変わっていた、大きな変化は無いが本体の影響を受けた
のだろうと思われる、あの霊体武器には本体のような性能は無いようなのだが・・・
それを持つ本人は特に影響を感じていないようなので見た目が本体に近しい姿に
変わっただけなのだろう、特に気にする事も無くなったし共和国へ向かうとしよう
ワイバーン達が来ない内に離れる・・・しかしワイバーンイーターを倒して良かった
のだろうか?今更だがもしかしたら奴のお蔭でワイバーンの数が減って周囲への
被害が収まっていたとしたら、これからワイバーンの数が増えて被害も増加する
可能性がある・・・まぁ他の冒険者や兵士達でどうにでもなる問題か、荒地を走り
丘を跳び山を跳ね回りその付近に棲んでいる魔物達を刺激したせいか追われたり
攻撃されたり興奮させたりしながら進んでいると夜になった、思ったよりさっきの
戦闘で時間を掛けていたんだろうか?それともただ移動に時間が掛かっただけか?
とは言え砂漠がもう目の前にある程の距離まで来れた・・・が夜であり見通しが悪く
目印となる物も無い砂漠を行って迷うのは御免だ、共和国まではまだ砂漠に入って
からもそこそこ距離があるからな、だから今回はここで朝が来るまで待つ事にする
木の上に昇って暫く待っていると、夜に活性化すると思われる魔物達が活動し始め
たのか静かだった周囲が少し騒がしくなった、地面を走り回って戦っている魔物達
を眺めながら周囲を警戒して日が昇るまでの暇を潰すことにする・・・とは言え安全
な場所と言う訳でも無いためたまに木を登って来るのや飛んで近付いて来るのを
追い払う必要があった、そこまで好戦的でも無いおかげか1度追い払えばそうそう
近付いて来ないのが幸いだ、たまに少し離れた所から咆哮や木の軋む音や地面を
強く叩いたような鈍い音が響いて来る事から、そっちの方には大型の魔物が居る
のかもしれない・・・そうなるとここで良かったのか、それともここも活動範囲内で
直ぐに離れた方が良いのか・・・流石にこんな詳しい情報の無い場所で無暗に動こう
とは思わないが長い時間留まらない方がいいとも思う、なにより今地上を移動する
気は起きない・・・気配を殺し草陰に身を潜めて獲物を狙っているのや、気付かない
内に首に噛み付かれ暴れ回る魔物の姿がかろうじて見える、ここでは色んな種類の
魔物があちこちで争っているようだ、夜になる前に見た魔物も戦っていたし今まで
と違い多数の種族が存在し昼夜問わず活動している他の場所では見た事の無かった
生態系のような気がする、中には別の種族でありながら協力体制を取っているよう
に見える行動をしている魔物達も見える、連携して戦闘している事からそう思った
のだが、もしかしたら強い魔物相手に弱い魔物が群れて立ち向かっているだけなの
かもしない、まぁどっちにしろ生存競争であればおかしくは無いし別段珍しい物で
も無いのだろう、今まで見てきた場所でそういうのが見れなかったのはただそこの
魔物達が大人しめの魔物だったからなのだろうか、あちこちから聞こえてくる幾つ
もの種類の叫びの中から近くから聞こえてくる物を優先的に警戒する、木の真下で
争っているのも居てそっちにも意識を割かないといけない、流石に朝までとは言わ
ないが少しくらいは落ち着けるかもと期待していたんだがなぁ、この様子だと少し
の時間すら落ち着いて休むことは出来そうにない・・・これが冒険と言う事か
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