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9.新たな一歩

百九十九話 帰ってすぐに問題事?

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199話 大事な事です…やるしかないね

「その言い方だと見つけるだけでいいので?」
「あぁ、私は師の邪魔をしたい訳ではないしな、前までは定期的に連絡が
取れていたのだが…去年から連絡が途絶えてしまっていて心配なのだ」
「寿命なりなんなりで死んだとか?」
「うーむあの人がそう簡単に殺られるとは思えんし、不老だから寿命で死なん」
「成程不老なら候補は一気に絞れそうですね」
「うむ、私も探してはいるんだが…どうもあちこち移動している様なのでな」
「まぁ人探しをしているなら尚更でしょうね」
「そうなのだ、しかも空間魔法が得意で転移を主な移動手段に使っているのも
あって痕跡すら掴みにくいし移動の予測も出来ないときた」
転移の際に残る空間魔法の魔力残滓による追跡…だっけ?そんな本あったな
「そうなると探すの難しいですね」
「そうなる…まぁ幻惑魔法で見た目を変えていなければ見つけれるかもしれん」
「そうなってくるともう幻惑魔法見抜けないと無理じゃ無いですか」
「そうだな、まぁ変えていなければ判り易い、黄金の魔女の代名詞になっていた
ふわふわした長い金の髪と優しい紺色の瞳、身長は私と同程度で私より小さめの
巨乳で!ばぶみ…じゃない母性に溢れた方だ」
何故胸の所で強調したのだろうか?ばぶみ?ぶみ?判らん…
「なんだなんか文句あるか?私の方が胸がデカイ!別にいいだろう!それ位しか
私が勝ってるところがないんだ!魔法も美貌もスタイルも”う”ぅぅ」
急に顔を抑えてなにやら唸りだした…さっきからなんなのだ急に
「太ってないもん、肉付がいいだけだもん、デブじゃなくてぽっちゃりだもん」
なにやらぶつぶつ言っているが普通に聞こえる声量で言う事ではないのでは?
「よし!」
なにもよし!ではないのだが、話が進まないからまぁよし!だな
「よし!」
「うん?どうした急に、私に惚れたか?フゥン火傷では済まんぞ?ふっふっふ
報酬は魔法なり金なり用意する、まぁ達成報酬はその時に渡そう、ちょっとまて」
さっきから急に態度が変わって忙しい奴だ、懐から紙とペンを取り出し何か書く
長くは無いようで直ぐに終わってこっちに差し出してくる
「一応依頼書だ、物的に残していた方が判り易いしな」
依頼書には依頼内容の対象の名前と報酬は達成報告時依頼者の所持品から報酬
として選択する権利、と依頼者の名前が最後に書かれた物簡単な物と言っていたが
ギルドでの依頼書との違いは公式依頼を証明するマーク位しかない
「では頼んだぞ、まぁ見つからなくても文句は言わんから気軽にしろ」
「判りました、軽く探して周りますよ」
別れて帰る、そう遠くも無いため昼頃にはもう着いた、そのまま宿に戻る
すると着いてくることもなく宿に残っていた2人の亡霊の姿が目に入った
「ずっとここにいたのか?」
「ちょっとあってな色々と情報の整理などもしていた」
「まぁ今の国の状態と洗脳されていた者達の情報収集だ」
「洗脳されていた者達は既に洗脳自体は解けていたんだが思考誘導はまだ
残っているのか少々ぎこちない判断が多かった」
「あとはもう時間の問題だ、それですべて収まる…問題は我ら皇族の事だ
異常も無ければ警告も無いならまだ皇族は残っていると言う事」
「俺も初耳だぞ?他に兄弟がいたなんて」
「元々我ら皇族は代々3人生まれる、男が2人と女が1人、産めば必ずそうなる
でだ我らが妹は生きている、だがどこにいるか判らない」
「うーむこの難を逃れたとは考えにくい…となると何処か別の場所か」
「法国は消し飛んだがまだ無事となると…」
「法国の配下に着いていた教国か?」
「だろうな、悪いが主よ妹探しを手伝ってくれないだろうか?」
「まぁ別にいいぞ、人探しの依頼も受けてるし丁度いい」
「そうか、感謝する…少し城の方に行ってくる」
「まぁ今日の内にでも向かうか?」
「ふむ…そうだな、特にやる事もないしそうするか、じゃ家に行ってるよ」
「判った俺も少し城を見て回ってくるかな」
宿を出て家に帰る、戦利品をどうにかしないといけないしな…肉は置けないか
皮や骨を倉庫の地下に置き亜空間倉庫を空ける、序に保存されている飲食物も
置いていく事にした、これでかなり余裕が出来ただろう…他にはないかな?



シン達と別れてバーゼスクライトが向かったのは城の裏手、今まだ手入れされた
花のアーチを潜り抜けた先、その開けた場所にあるのは特別な使用人たちの墓
その中の墓の1つに探していた名前を見つけると、生前使っていた鎧の一部
左肩のマントの付いた肩鎧を墓石の角に引っ掛けるようにしてベルトで留める
「じいよすまない、お前の忠義に報いてやれるものがもうこれしかなくてな」
誰も居ない墓場に生者には聞こえない声が響く、しかし死者の声は死者に届く
「お待ちしておりました、バーゼス皇子…申し訳ありませんでした」
そこには生前専属執事であった老齢の姿がある、その墓石の後ろで待っていたのだ
「そうか…待ってくれていたか、お前が謝ることは何もない」
「いえ皇子を護りきる事が出来ず、最後までお供も出来ませなんだ」
「構わぬ、あの状況で足止めに残っていたのであろう?」
「は…故に今度こそ死してなお最後までお供したいと、お許しあれば!」
「ふぅ…冗談だろう?そんなことされればお前に報いれる物が玉座しか
なくなってしまうではないか、流石にそこまでは渡せんぞ?」
冗談染みて笑いその言葉を断る、その助力はありがたく申し出は嬉しいものだった
だが10年と言う年月はただの死者の魂を変質させるには十分な年月なのだ
それ故にその老人の魂の一部は黒く淀み、一部には小さなヒビが入っている
さらされた人の魂のままでは己を保ちながらの長期間の存続に耐えられない
だからこそ断る事にした、このままでは魂が歪んでしまいかねないから
「お前のこれまでの奉仕ご苦労であった、その鋼の忠義大義であったぞ!
もう休んでいい、ロムレック・バーンルプス我が栄光の左腕よ」
「はっ!」
頭を下げて俯いたままその体は僅かに震えている、それはその報いの言葉への
感激か、それとも着いていく事が出来ない事への苦悩か…罪悪感か
皇族に3代に渡り仕えし盾にして最強の執事はその役目を終える事になった
「すまんな…何もしてやれぬ力なき私を許してくれじい」
「そのような事は!嬉しく思います!」
僅かな沈黙が流れる、別れは必然であれ互いに死して別れ…
「もう会える事は無いのですね…」
「そうだな、これが最後だ…だが最後に会えてよかった」
「わたくしも!最後に会えて!出来れば生きている貴方と出会いたかった」
「それは私もだじい、そらもう休むがよい老骨に堪えるぞ」
「ふふっ…ではこれにてお暇を頂きます、坊ちゃま」
「ふっ、あぁおやすみロムじい」
最後は2人共に泣いたような笑顔で別れを済ます、涙を流した老人は粒子になって
輝く天へと昇り、残る一方は果て無く暗き闇へと還る
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