上 下
164 / 324
8.転輪

百六十二話 霊峰に行きたいが

しおりを挟む
162話 今そんな余裕は無い

「行くにしても時間に余裕がある時にしておくんだな」
「俺も行ってみたかったなぁ、死者は登れないからなぁ霊峰は」
「成る程····それにしてもまだ用がありませんでしたっけ?」
「?おぉ?そうだったか?···おぉ!そうだった兄者、今この国と法国が戦争状態に
なっていたのは知っているか?更に妖精も参戦するとの事でな」
「戦争状態になっているにはなんとなく分かっていたが、そうか妖精がな···
となると妖精から下がるように言われ、王が不在の今は対応出来んと言った所か」
「まぁ妖精と関わりがあったのは皇族だけですからな、仕方ないでしょう」
「現状魂だけの霊体とは言え復帰出来ないので?」
「既に死者の身だからな、世俗に関わるべきではないと思っている」
「ですが今は王を必要としています、民も国も···しかし死者が表に出るのは
色々な問題が出るでしょう、たとえ蘇生されたとしても他国がどう見るか···」
「そうだ故に出るべきでは無いと思っている、思っているのだが···」
「どうかしたので?」
「兄者、直感に従ってみるのもいいと思いますが」
「そうだな···直感というか思考が出るべきだと言っているのだ」
「なら尚更です、兄者のそれはよく当たりますからな」
「そうかもしれんな···なにより今回の戦いは帝国も出なければなるまい
報復のため力の証明のため、そして兵や民の願いでもあるが故に」
「そうです!戦うべきです!俺も最前線に出ますぞ!いやー仕方ないな!」
「お前は戦いたいだけだろう···まぁいい、ならば先ず妖精と協議せねば」
「行きましょう!今ならまだ間に合うでしょうが急ぐべきです」
「そうだな、だがこのままでは私はここから出られないのだ」
「なんと···いや死者なのだから当然ですね、埋葬されてしまえば魂はそこに
縛られるのは道理···?そう言えば兄者の墓は何れなのだ?遺骨や遺品等を媒介
にして取りつけば出れるでしょう、よくあるレイス種の出現法です」
「私の墓は無い、躯も無ければ当然何も埋まってない···」
「なんと!しかし何故です?まさか法国の者共に奪われたのですか?」
「いや死後直ぐに私の魂は此処に送られ、肉体は深淵に引きずり込まれた」
「それでは直接他者に取りつくしか無いのでは?王冠には無理でしょうし
躯を回収するのも不可能でしょう、そも深淵などまともに探索出来ません」
「とは言え取りつく対象がな···」
「そうですな···俺の体があればいけたかもしれんのですが」
「仕方あるまい、他の方法となると契約か?ただスキルも道具も無いな」
「私に取りつくのは無理なので?」
「恐らくな、気質とでも言うのか···貴公は純粋な人間種ではあるまい?」
「えぇ、よくわかりましたね?」
「この眼は普通よりもよく見えるのだ、良くも悪くも色々とな」
「確かに両方色が違いますが、普通の目とはなにか違うので?」
「兄者の眼は我等一族に伝わる特殊な眼なのだ」
「そう言うことだ、詳細に関してはこれも全て把握できている訳ではない、でだ
種族が違うと憑くのが難しくなるようでな、魔物に取り憑くのがいるが
奴等ですら姿が大きく離れていると対象に憑けない事があるようだしな」
「そうですか···どうしましょうか」
「霊や魂と相性の良いものであれば、いけるかもしれんがな···」
「そんな物は珍しくそう見つかるものでもない」
「霊や魂と相性の良いもの···あぁ」
「どうした?あったのか?」
「あるにはありましたがあれはダメです、呪詛の塊のような物ですから」
「そうか···だが危険物と言えどあるにはあるのだな?」
「兄者!?まさかそれに憑くと言うのですか!危険すぎます!」
「しかし何も成せず死した私が国のために出来ることがまだあるのなら
危険であってもこれしか方法がないのと言うならやるしかあるまい?」
「兄者、本気なのだな···解りました、そこまで本気なのなら止めません
それなら俺も動きに制限がある以上同じようにした法がいいのでしょうな
何より兄者だけにさせるわけにもいかん、王の騎士たるもの着いていかねば!」
なんだか話が勝手に進んでいく、私も当事者でないのか?···違うのか?
「まさか道具に憑くので?やめたほうがいいと思いますが」
「とりあえず見てからだな、問題なさそうならそのまま憑く」
「危険そうならそれを仲介してお前に憑く、と言う手段もとれるのだ」
「成る程では取り出しますが···ここで出して大丈夫ですかね?」
「ここで出す以外にどこで出すと言うのだ?外で出しても意味はなかろう」
「まぁそうなんですけど、何か起きても知りませんよ?」
「構わん、呪詛が溢れる位ならここでは何の問題もない」
「言ったろう?ここは特別な場所だからな、頑丈な空間なのだ」
「だからここでは空間魔法すら阻害される、転移や歪曲などもな」
「...空間倉庫開けますかね?」
「それくらいなら問題あるまい、いつもより消耗するだろうがな」
亜空間倉庫を開き目的の物を探す、確かに何時もより少し疲れるがそれだけだ
でかいから見つけやすいはず、大きいものが少ないから直ぐに見つけれた
それに前と違って殆ど嫌な感じがしない、もしかして呪いが減ったのだろうか?
直接掴んでも何の反応も来ない、いや少しは呪いの影響か触った部分がゾワゾワ
いやジワジワと僅かな痛みのようなこそばゆさを感じるようになっている
これならば特に問題もなさそうなので引き出す、すると途端に体が重くなった
この感覚は前にもあった、これは呪いによるせいではない
そう···魔力の大量消費による脱力感だ、取り出すさいに魔力が異常に持ってかれ
急激な消耗によって発生するものだ、場合によっては気絶や失神するらしい
気絶と失神の違いは判らないが、安全圏でなければ危険なのは同じだ
意識が何かに引っ張られるような、内の奥底に沈むような寝るときの感覚に近い
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

開発済みののじゃロリエルフは絶対服従

プルルペルル
ファンタジー
 見た目は幼いがその年齢は余裕で四桁を超えるの彼女はエルフ。  千年以上ゴブリンやオークに侵され続けたり、街の肉便器として使わていた彼女はありとあらゆる快楽を叩き込まれた。  男根を見せられれば腰が抜け、服従してしまうほどの調教を施されている彼女は今、平穏を手に入れていた。  千年以上請い願った平穏。  大賢者と呼ばれ世界最高の学び舎の学長となった彼女の平穏は、ほんの少しの油断で奪われてしまうのだった。 ※思い付きと勢いで書いているので物語性は薄いです

処理中です...