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僕と狐の関係
しおりを挟む「あ、また来たの~?」
蝉がうるさい中によく知っている声が聞こえた。
見慣れた綺麗な着物に、尻尾が5本生え、獣の耳が動いてる。
「うるさいなぁ。別にいいだろ、人ほとんど来ねーし。」
僕はよく地元のこの神社によく行くのだ。
そこでこのよく分からん自称お狐様(笑)に出会った。小さい頃からだったから記憶はない。
僕にしか見えてないらしい。まぁ小さな神社だから人もいない。だからこいつと喋ってても変に見られないし
僕自身もあんまりこいつの事は気にしない。時折僕を知っているような事を言うのが引っかかるが……。
「俺的には嬉しいけど、お前いつも来るよな。暇人め。」
「暇で悪かったな。ここが1番落ち着くんだよ。」
僕は読みかけの本を開いた。ここへ通うのはほぼ本を読むため。落ち着ける場所だからゆっくり本を読める。
「なぁなぁ。また本読むの?」
いや少し訂正。
こいつさえ黙っていれば読めるけど。
「うるさいなぁ。いつも言ってるけど、ここは誰も来ないからゆっくり読めるんだよ。邪魔すんな。静かにしてろよ。」
「いいじゃん。ここ俺んちだしぃ。勝手に入ってるんだから相手しろよ!」
俺の頭に五本ある中の一つの尻尾が軽く叩く。
「だから本読みたいんだよ!静かにしてろよっ。」
「本ならいつでも読めるじゃん。学校とか家とかで読めばいい話だろ~。」
「学校は落ち着かないし、家はうるさい。だからここに来てんだろ。」
「んでも俺んちだからさ。俺の相手しろよ。いつも我慢してるんだからいいだろ~。」
ちっ!
いつもは寝てるくせに今日に限ってかよ。
今日は運が悪いのか色々とついてない。
自転車に引かれそうになって、電柱に顔をぶつけるはめになった。
帰るときもつまづいて転んだ。挙句の果てに体調も悪いし、体も重い。
なのにこいつはまたっ……。
俺は集中出来なくて本を閉じた。
「なぁなぁ。遊ぼーよ!」
「もう帰るから。」
「はぁ?なんでだし!いいだろっ!ほんのちょっとだけ!な!遊んでくれよぉ。」
駄々をこねた子供みたいだ。
立ち上がろうとした時、服が思いっきり引っ張られた。その反動で俺は尻餅をつく。
「いっ…た。なにすんだよっ。いてぇだろ!」
「お願い!今日だけ!遊びたい!遊ぼ!」
いつもはこんなにしつこくないのに。めんどくないなぁ。
「しょーがないな。少しだけな。」
俺は家に帰るのを諦めた。
まぁいつもお世話になってるし。
「やりぃ!」
満面の笑みと尻尾が左右に揺れている。凄く嬉しそうだ。そんなに遊びたかったのかよ。こいつも大概暇人だな。
「んじゃぁ、目瞑って。」
「はぁ?なんで。その前に何するのか説明しろよ。」
一瞬だけ狐は妖艶に笑ったがすぐに元通りの笑顔になった。冷や汗をかいた。
理由を聞かず、しぶしぶ目を瞑る。何も聞かない方がいいと思った。
バシッ!
勢いよく背中を叩かれた
「いっ…!いてぇよ!ばか!何すんだよ!」
「さっきより軽くなったでしょ?」
あれ?確かにさっきと比べれば軽くなった気がする体調も良くなってきた。
「なんかついてた?」
「うん。ついてたよ。だから祓った!祓うもんは祓ったからあそぼ!」
「祓うんだったら先に言えよ!心臓に悪いわ!」
「あ、忘れてたぁ。ごめーん!(笑)」
この狐は、たまについてきたものをはらってくれる。
さっきまでの不気味な感じはなくこいつはただ陽気に笑ってる。本当に何考えてるか分からないな。
「ほら、遊ぶんだろ。何するんだよ。」
「じゃぁ、かくれんぼ!」
「2人だけで?つまんないだろ。手遊びとか他にあるだろ。」
「じゃぁ、手遊びやろーよ!」
そのまま夕方まで遊んで家に帰った。
☆★☆★☆
「よぅ!また来たな!」
相変わらず今日も神社に通っている。
やっぱりここが1番落ち着く。
狐は、また楽しそうに陽気で笑ってる。
「今日はゆっくり本を読みたいから静かにしてろよ。」
「えぇ~。ちぇっ、じゃあ隣で寝てる。」
「うん。」
「すぐ読み終わる?」
「まぁ。あと数十ページだし、お前が黙ってたらすぐ終わるよ。」
「じゃあ寝てるから読み終わったら遊ぼ!約束な!」
「分かったから寝てろ。」
狐はニコッと笑ってから隣で静かに寝息を立てて寝ていた。
1時間ほどで読み終わった。約束通りに狐を起こした。
「おい。終わったぞ。起きないならこのまま帰るからな。」
背中を軽く叩いた。と勢いよく起き上がった。
「おわった!?」
「おわったよ。遊ぶんだろ。はやくしろよ。」
「じゃあさ、お話しよう。」
愛おしそうに僕を見た。ただその表情は悲しそうにも見えた。何を話すんだ?
「昔話をしよっか。」
………………
ある日、神社に傷だらけ妖怪が迷い込んできた。傷の手当をした後狐は暇を持て余していたので、その妖怪自分と遊ぶように言った。
妖怪は素直に遊んでくれた。狐も楽しかったそうだ。その後からは毎日のように遊んでいた。年月がたちいつの間にかその妖怪は神社に住み着くようになったそうだ。
だがある日、人間達が神社に攻め込んできた。
妖怪が、住み着いていると話が広まっていたようだ。人にとって妖怪は恐ろしいもの。
「すぐさま妖怪を退治しなくては。」
その時狐は神に呼ばれていたため、天界に戻っていた。帰ってくると妖怪の姿がない。神社のすみずみを探し、境内の裏で妖怪は倒れていた。あぁ!そんな!
狐は後悔をした。あの妖怪を1人にしなければ!1人で天界に行かなければ!狐は人間を恨んだ。そして村を焼き払おうとした時、まだ微かに息があった妖怪は言った
「人間を恨まないで。村を焼き払ったらあなたは天狐では無くなってしまう。あなたは優しい方だ。もしこれから先僕のような妖怪や人が現れたら助けてやってほしい。僕もまた転生できたらあなたに会いにゆくよ。」
そう言って妖怪は息を引き取った。狐は人間を恨んでいたが妖怪の言葉を信じ、彼が転生するのをずっと待っている。
………………
狐はいつの間にか涙を流しながら笑っていた。僕も涙を流していた。何処かで聞いたことがあったのだろうか。ずっと前からその昔話を知っている気がした。
「その待っている人は現れたの?」
僕は無意識に聞いていた。
その答えを知っているような気がした。
狐は口を開いた。
「俺が間違っていなかったら君がそうだよ。」
涙が溢れた。
そうだ、そうだった。僕は転生をしたのだ。記憶にもやがかかっているが確かにそうだった。詳しいことはあまり良く分からない。でも狐が懐かしいことも何故か僕だけ見えることも理由がわかった気がする。
「思い出した?」
僕は頷く。
「また会えたね。」
狐は涙を流しながらも陽気に笑っていた。
「うん。ずっと会いたかった。」
今日もまた僕は狐とあそんでる。
……
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