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第一章 Life or Death
Episode 13 商談決裂
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翌日、警察署前にバイクを乗り付けたケイ。署内に入ると待っていたかのようにペドロが出迎えた。ケイはいつものライダースの革ジャンにジーンズとエンジニアブーツという出で立ちでペドロを少し不安がらせた。まかりなりにもシティ警察署の長に会うというのに。「もうちょっとマシな格好は出来ないのか?」と、ペドロの口から漏れそうになった。だが、ケイにとっては警察署長だろうと大統領だろうとそんな事は関係なかった。
ペドロに付き添われ署内最上階、と言っても五階建てだが、その署長室に出向いた。シティの街中にある建物も目が回るくらいのスピードで近代化が進む一方で、この警察署のように一部では古いまま現在に至っている建物も数多く見受けられる。そのアンバランス差が時には滑稽に映る。それがNシティの魅力でもある。
案の定、「巡査部長、君は下がって良い、ご苦労さま」とフォレストに言われ渋々ドアの前でケイと別れた。気の短いケイが短気を起こしてガバメントをぶっ放さない事を祈るペドロ。
「へえーこの部屋も随分垢抜けたね」
小さい頃、よくペドロや母の目を盗んで署長室に忍び込んだものだった。ケイの母がここで働いていた当時、ケイが知ってるだけで署長は三人くらい代わった筈だ。
「懐かしいかね? ペドロ巡査部長から話しは聞いているよ、小さい頃から署に来てたと」
フォレストは来客用のカップを用意しコーヒーメーカーから二人分のコーヒーを淹れテーブルに置いた。ソファーに座るケイとテーブルを挟んで座ったフォレスト。
「改めて私がシティ警察署長のフォレストだ」
「私はケイ、よろしく署長さん」
「早速だが今日君を招いたのは他でもない。ペドロ巡査部長からいろいろ雑仕事を請け負ってるという話しは聞いているよ、もちろん仕事の内容は詮索しない。なんせこの街は犯罪が途切れない、我々警察署としても手が回らないくらいだから、君のような仕事を手伝ってくれる者を私はむしろ歓迎したいくらいだ」
「ふ~ん、それで?」
ケイの反応に些か戸惑うフォレスト、なんだ、この娘は? 動揺する素振りも無いのか?
「ペドロ巡査部長とは別に私個人の仕事も手伝ってもらえないかね? もちろん報酬は出す」
フォレストの言葉にケイの中で溜まっていたフラストレーションが一気に溢れ出た。座ったまま右足をテーブルの上にドン! と音を立て乗せる。コーヒーカップが大きく揺れ、中身がテーブルにこぼれた。驚いたフォレストは一瞬身体を後ろにのけぞった。
「私さ、ここんとこややこしい話し合いだとか打ち合わせだとかで正直嫌になってるんだよ! 前置きは良いよ、あんたが裏でやってるヤバい内職は周知してるからさ、遠慮しないで仕事の内容と報酬額を言ってよ、署長さん」
「わ、わかった、電脳ドラッグの取引きに関する仕事だ、ウチのドローンを破壊したという先日の取引きの現場で銃の扱いは凄腕と聞いている。報酬は一回につき千ドル出そう、悪くない話しだろ?」
少し脅えた様子のフォレストはケイの返事を待った。ケイは無言で携帯端末を取り出しどこかと連絡を取っている。
「アニエスかい? 商談決裂、先日の取引きも予想通りあのカークと繋がってたみたいだよ。ケチな署長さんに一言どうぞ!」
ケイは端末の通話をスピーカーに切り替え、フォレストに向けた。
「はじめまして、署長さん。ケイを落とせなくて残念ね、その娘は意外と高いのよ。見くびり過ぎたわね」
フォレストは言葉が出ない。
「じゃあ、またどこかで」
通話は切れた。ケイは端末を仕舞うと立ち上がった。
「って事さ。そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ、また気が変わったらいつでもどうぞ、それなりの金額を払う気があるならだけどね」
ケイはそう言って署長室を出て行った。フォレストはそのままソファーにヘタれ込んでしまった。
ペドロに付き添われ署内最上階、と言っても五階建てだが、その署長室に出向いた。シティの街中にある建物も目が回るくらいのスピードで近代化が進む一方で、この警察署のように一部では古いまま現在に至っている建物も数多く見受けられる。そのアンバランス差が時には滑稽に映る。それがNシティの魅力でもある。
案の定、「巡査部長、君は下がって良い、ご苦労さま」とフォレストに言われ渋々ドアの前でケイと別れた。気の短いケイが短気を起こしてガバメントをぶっ放さない事を祈るペドロ。
「へえーこの部屋も随分垢抜けたね」
小さい頃、よくペドロや母の目を盗んで署長室に忍び込んだものだった。ケイの母がここで働いていた当時、ケイが知ってるだけで署長は三人くらい代わった筈だ。
「懐かしいかね? ペドロ巡査部長から話しは聞いているよ、小さい頃から署に来てたと」
フォレストは来客用のカップを用意しコーヒーメーカーから二人分のコーヒーを淹れテーブルに置いた。ソファーに座るケイとテーブルを挟んで座ったフォレスト。
「改めて私がシティ警察署長のフォレストだ」
「私はケイ、よろしく署長さん」
「早速だが今日君を招いたのは他でもない。ペドロ巡査部長からいろいろ雑仕事を請け負ってるという話しは聞いているよ、もちろん仕事の内容は詮索しない。なんせこの街は犯罪が途切れない、我々警察署としても手が回らないくらいだから、君のような仕事を手伝ってくれる者を私はむしろ歓迎したいくらいだ」
「ふ~ん、それで?」
ケイの反応に些か戸惑うフォレスト、なんだ、この娘は? 動揺する素振りも無いのか?
「ペドロ巡査部長とは別に私個人の仕事も手伝ってもらえないかね? もちろん報酬は出す」
フォレストの言葉にケイの中で溜まっていたフラストレーションが一気に溢れ出た。座ったまま右足をテーブルの上にドン! と音を立て乗せる。コーヒーカップが大きく揺れ、中身がテーブルにこぼれた。驚いたフォレストは一瞬身体を後ろにのけぞった。
「私さ、ここんとこややこしい話し合いだとか打ち合わせだとかで正直嫌になってるんだよ! 前置きは良いよ、あんたが裏でやってるヤバい内職は周知してるからさ、遠慮しないで仕事の内容と報酬額を言ってよ、署長さん」
「わ、わかった、電脳ドラッグの取引きに関する仕事だ、ウチのドローンを破壊したという先日の取引きの現場で銃の扱いは凄腕と聞いている。報酬は一回につき千ドル出そう、悪くない話しだろ?」
少し脅えた様子のフォレストはケイの返事を待った。ケイは無言で携帯端末を取り出しどこかと連絡を取っている。
「アニエスかい? 商談決裂、先日の取引きも予想通りあのカークと繋がってたみたいだよ。ケチな署長さんに一言どうぞ!」
ケイは端末の通話をスピーカーに切り替え、フォレストに向けた。
「はじめまして、署長さん。ケイを落とせなくて残念ね、その娘は意外と高いのよ。見くびり過ぎたわね」
フォレストは言葉が出ない。
「じゃあ、またどこかで」
通話は切れた。ケイは端末を仕舞うと立ち上がった。
「って事さ。そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ、また気が変わったらいつでもどうぞ、それなりの金額を払う気があるならだけどね」
ケイはそう言って署長室を出て行った。フォレストはそのままソファーにヘタれ込んでしまった。
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