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貴族のミゲルと奴隷のヒサコ

むずむず、きゅうきゅう

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ひとしきり笑いたいだけ笑った風の精霊さまはやっと私にわかるように噛み砕いて教えてくださいました。出来れば最初からそうしていただきたいものです……。
でも、これも修行でしょうか?

「ふふふっいつ振りにこんなに笑ったことだろう。巫女どのとあの男には感謝しなくては。さて巫女どの。両目に魔力を纏わせたように両耳にも同じように纏わせるのだ。どちらか片方しか出来ないのであれば耳を優先させてな」

魔力を目に纏わせて遠くが見えるようになったのだからおそらく耳に魔力を纏わせれば遠くの音が聞こえるはずです。精霊さまは私に何を聞かせたいのでしょうか……?


ぎゅうとお腹に力を入れまたずず、ずずずと上に動かし今度は両方の耳へと纏わせます。が、もう少しという所でぽちんとはじけてしまいました。
しかし諦めず2度3度と繰り返すとコツをつかんだようでなんとか耳に魔力を纏わせることができました。

精霊さまによくやったと褒めていただきそれからまた精霊さまのお力で術を展開できるよう導いていただきました。



ザ・ザザ・・ザザ・・・・・・・
目を閉じて耳を澄ましそうして見聞きしたのは…………



「・ッ・・・・・て・・・・なに・・・・・ヒサコ………」

ミゲルさまのお声です。
私のいる方を見つめてじっと堪えるように眉をひそめていらっしゃるミゲルさまの、お声。
このお屋敷に来てから毎日1回は欠かさずにミゲルさまと顔を合わせて声もかけていただいているのに、私が知らない所でミゲルさまが私の名前を呼んでいらっしゃるのを聞いて、なぜか胸の辺りがむずむず、します。

聞いたことがあるのに聞いたことがない声色で私を呼ぶミゲルさま。貴方は私をどうしたいのでしょう……

「風の精霊さま……遠見の術の影響なのでしょうか……?胸の辺りがこう、むずむず、きゅうきゅうします……」

「…………………。いいや。この術でそんなことになったことや、なったという噂すら聞いたことがない。それよりも巫女どの。それはあの男の声を聞いてからではないのか?あの男の姿を見てからではないのか?貴女はもう、答えを知っているのではないのか?」

精霊さまの声は私を諭すように優しく、なぜか知らないはずの母を想わせました。
しかし私にはやはり精霊さまのおっしゃることがわかりません。
私はもう答えを知っているのですか?それなのになぜ何もわからないのでしょう?わかりません……




「ほら。もう術はいいだろう。貴女の目で、耳であの男のことを知ってくるがいい」

精霊さまはそう言うと私の目を覆っていた手を離し、そして小さく何かをつぶやかれると私の体がふわりと宙に浮きました。
掴む所も無く体を支える場所もないその状態はとても恐ろしく、小さく悲鳴を上げて体を丸めてしまいました。すると精霊さまがぽんと私の背中を押され、私の体は精霊さまが押した通りに素早く、まっすぐ屋敷の方へと滑るように移動しました。
窓以外開いていなかった庭に面した扉の全てが音を立てて開き、カーテンが風に踊りました。そして私はそのカーテンの海に飛び込まされたので何か物に当たった時に備え目をぎゅうと固く閉じ、また体も同じようにぎゅうと力を入れてその時に備えました。

「うわっ!「ひぅっ!」

そしてドンッと硬めのものに当たってそこでようやく私は空中から解放され地面に足をつけることができたのです。

宙に浮いてみたいと精霊さま達を見て夢見ていましたが地に足が付かないことがあのように恐ろしいとは……
しばらくは夢に見そうですと震えながら体のこわばりを解すためにため息をついた所で、私がどこに着地し、私の手が何を掴んでいるのかを知りました。

「み、ミゲルさま………」




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