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終幕
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ゾンビキングの消滅をすぐにエルフ軍は認識できたようで、ゾンビは軍により一掃された。
だが、問題はまだ解決していなかった。軍に疫病が発生したのである。私たちは新たな依頼をエルフ王から受け、軍の治癒にあたった。
「ルミエール、政務があるから、いったん私たちは帰国するよ。また、迎えに来るからね」
治癒は長期間かかるため、テリュースとクレイは一旦帰国した。寂しいが仕方がない。ミレイには治癒の補助のため、残ってもらった。
私たちはトラクであちこち移動して、一ヶ月ほどかけて、ようやく疫病を撲滅させることに成功した。
エルフたちは大喜びだった。
「そなたたちには、何と感謝していいのやら……」
エルフ王に対して、ステーシアは臆せず希望を伝えた。
「陛下、それでは一つだけお願いがございます。冒険者組合に感謝状を送って頂けますでしょうか」
私たちはエルフ国から名誉エルフの称号を得て、エルフ国の国中を移動する権利と永住権を得た。
テリュースたちが迎えに来るまで、私たちは国内中を観光した。私たちはどこに行っても感謝され、イケメンたちにチヤホヤされているうちに、アミとミアは帰りたくないと言い出した。
「じゃあ、いったんお別れかな?」
「はい。でも、冒険者は続けますから、必要なときには呼んでください」
私たちはアミとミアを残して、迎えに来たテリュースとクレイと一緒に帰国した。
私はミレイが残ると言い出さないことが不思議だった。エルフのイケメンズたちから、一番チヤホヤされていたのは彼女だったのだ。
「だって、私だけ老けて行くのですよ。耐えられないと思います。それに、お姉様と同じで、私にも好きな人が王国におりますもの」
私がテリュースのことを好きになってしまっているのは、やっぱりバレているのか。
帰国して最初に、ステーシアと一緒に冒険者組合に依頼達成の報告にいった。受付嬢のエリーゼが事前に言っていた通り、私とステーシアはA級に、アミとミアはB級に昇格した。キューブはA級パーティとなった。
この数日後、エルフ王から冒険者組合に感謝状が届き、一ヶ月間の治癒行為が冒険者ポイントとして認められて、私とステーシアはS級に、アミとミアはA級に昇格した。その結果、私たちキューブは、女性だけのチームとしては初のS級冒険者パーティとなった。
私はテリュースから、昇進祝いということで、レストランの個室で食事をご馳走になっていた。
「ルミエール、おめでとう。夢だったのかな?」
「ありがとう、テリュース。でも、S級になるのが夢だったのはステイの方よ。私はどちらかというと、S級になるのはできるだけ後がよかったの。ステイやアミやミアと冒険するのが楽しかったから」
「え? キューブは解散しちゃうのか?」
「いいえ、続けるけど、今までのように毎週というわけにはいかないわ。アミとミアもエルフ国にいるし、ステイはクレイと結婚すると思うから」
「ステーシア殿は結婚されるのか。S級になるのは結婚が目的だったのかな?」
「S級になるのは、女騎士団組成のためなの。彼女は王妃様を護衛する親衛隊を女性騎士だけで作りたかったのよ。それで、女性なのに男性に混じって、小さいときからずっと騎士の修行をしていたのだけど、国王陛下から女性の護衛など無意味と一笑されてしまったみたい」
「それで強さを証明するために冒険者になったってこと?」
「色々とあったようだけど、そういうことみたいよ。でも、もう王都には帰れないけどね」
「あ、あの、ルミエールの護衛になると、いいんじゃないかな?」
「え? 私の? どうして?」
「ほ、ほら。私のつ、つ、妻、つ、妻になると、王妃になるじゃないか」
「それって!?」
ルミエールは突然席をたち、私の前で片膝をついた。
「ルミエール、私と結婚してくださいっ」
テリュースはそう言って、頭を下げて、胸ポケットから取り出した指輪を頭の上に掲げた。
「はい、喜んでっ」
私はテリュースの手を取った。
***
ガナル地方は遊牧民族が暮らす西国という括りで王国に従属関係にあったが、テリュースは私との結婚を発表後、王国に対して独立を宣言した。テリュースはガナル帝国の初代皇帝となり、私が皇后となった。
王国はすぐさま制圧のための軍を派兵したが、大敗北を喫し、軍事力を大きく落とすことになった。
王国の誤算はいくつかあった。
ガナルの騎馬民族が皇帝の元、完全にひとつになっていたこと
聖女を凌ぐ治癒力を持つ皇后が存在したこと
エルフが挟撃どころか、ガナルに援軍を送ったこと
スパイとして帯同させていたクレイ騎士長から情報が全く入って来なかったこと
などである。
ガナル帝国の軍師にして宰相のシュンメイは、私がテリュースの妻となったら、世界統一も可能と以前から考えていたらしい。
まんまと彼の思惑に乗った形になったが、私は彼に感謝している。こんなに素敵な旦那様を私に紹介してくれたのだから。
そんなシュンメイもミレイには敵わないらしく、だらしがないとか、背筋を伸ばして、とか、いつも散々ダメ出しをされていた。
(ミレイの好きな人はシュンメイさんだったのね)
この後、テリュースは父である王国の国王から王座を譲位され、王国を帝国に併合した。
テリュースは王都に帰って真っ先に、ジョージ王子を蹴飛ばしていた。あのお行儀のよいテリュースがジョージにだけは乱暴で、それで、私も思いっきり、ジョージを殴ってやった。
「あはは、何て気持ちのいいこと」
私は人を殴ったのはこれが初めてだが、とても爽快だった。癖にならないようにしよう。
後で聞いた話だが、ステーシアも妹を張り倒しに行ったそうだ。
ちなみにステーシアは今では私の親衛隊長になり、クレイとも結婚している。
この後、ガナル帝国は周辺諸国を次々と傘下にいれ、一大帝国を築くことになるが、それはまた別のお話。
だが、問題はまだ解決していなかった。軍に疫病が発生したのである。私たちは新たな依頼をエルフ王から受け、軍の治癒にあたった。
「ルミエール、政務があるから、いったん私たちは帰国するよ。また、迎えに来るからね」
治癒は長期間かかるため、テリュースとクレイは一旦帰国した。寂しいが仕方がない。ミレイには治癒の補助のため、残ってもらった。
私たちはトラクであちこち移動して、一ヶ月ほどかけて、ようやく疫病を撲滅させることに成功した。
エルフたちは大喜びだった。
「そなたたちには、何と感謝していいのやら……」
エルフ王に対して、ステーシアは臆せず希望を伝えた。
「陛下、それでは一つだけお願いがございます。冒険者組合に感謝状を送って頂けますでしょうか」
私たちはエルフ国から名誉エルフの称号を得て、エルフ国の国中を移動する権利と永住権を得た。
テリュースたちが迎えに来るまで、私たちは国内中を観光した。私たちはどこに行っても感謝され、イケメンたちにチヤホヤされているうちに、アミとミアは帰りたくないと言い出した。
「じゃあ、いったんお別れかな?」
「はい。でも、冒険者は続けますから、必要なときには呼んでください」
私たちはアミとミアを残して、迎えに来たテリュースとクレイと一緒に帰国した。
私はミレイが残ると言い出さないことが不思議だった。エルフのイケメンズたちから、一番チヤホヤされていたのは彼女だったのだ。
「だって、私だけ老けて行くのですよ。耐えられないと思います。それに、お姉様と同じで、私にも好きな人が王国におりますもの」
私がテリュースのことを好きになってしまっているのは、やっぱりバレているのか。
帰国して最初に、ステーシアと一緒に冒険者組合に依頼達成の報告にいった。受付嬢のエリーゼが事前に言っていた通り、私とステーシアはA級に、アミとミアはB級に昇格した。キューブはA級パーティとなった。
この数日後、エルフ王から冒険者組合に感謝状が届き、一ヶ月間の治癒行為が冒険者ポイントとして認められて、私とステーシアはS級に、アミとミアはA級に昇格した。その結果、私たちキューブは、女性だけのチームとしては初のS級冒険者パーティとなった。
私はテリュースから、昇進祝いということで、レストランの個室で食事をご馳走になっていた。
「ルミエール、おめでとう。夢だったのかな?」
「ありがとう、テリュース。でも、S級になるのが夢だったのはステイの方よ。私はどちらかというと、S級になるのはできるだけ後がよかったの。ステイやアミやミアと冒険するのが楽しかったから」
「え? キューブは解散しちゃうのか?」
「いいえ、続けるけど、今までのように毎週というわけにはいかないわ。アミとミアもエルフ国にいるし、ステイはクレイと結婚すると思うから」
「ステーシア殿は結婚されるのか。S級になるのは結婚が目的だったのかな?」
「S級になるのは、女騎士団組成のためなの。彼女は王妃様を護衛する親衛隊を女性騎士だけで作りたかったのよ。それで、女性なのに男性に混じって、小さいときからずっと騎士の修行をしていたのだけど、国王陛下から女性の護衛など無意味と一笑されてしまったみたい」
「それで強さを証明するために冒険者になったってこと?」
「色々とあったようだけど、そういうことみたいよ。でも、もう王都には帰れないけどね」
「あ、あの、ルミエールの護衛になると、いいんじゃないかな?」
「え? 私の? どうして?」
「ほ、ほら。私のつ、つ、妻、つ、妻になると、王妃になるじゃないか」
「それって!?」
ルミエールは突然席をたち、私の前で片膝をついた。
「ルミエール、私と結婚してくださいっ」
テリュースはそう言って、頭を下げて、胸ポケットから取り出した指輪を頭の上に掲げた。
「はい、喜んでっ」
私はテリュースの手を取った。
***
ガナル地方は遊牧民族が暮らす西国という括りで王国に従属関係にあったが、テリュースは私との結婚を発表後、王国に対して独立を宣言した。テリュースはガナル帝国の初代皇帝となり、私が皇后となった。
王国はすぐさま制圧のための軍を派兵したが、大敗北を喫し、軍事力を大きく落とすことになった。
王国の誤算はいくつかあった。
ガナルの騎馬民族が皇帝の元、完全にひとつになっていたこと
聖女を凌ぐ治癒力を持つ皇后が存在したこと
エルフが挟撃どころか、ガナルに援軍を送ったこと
スパイとして帯同させていたクレイ騎士長から情報が全く入って来なかったこと
などである。
ガナル帝国の軍師にして宰相のシュンメイは、私がテリュースの妻となったら、世界統一も可能と以前から考えていたらしい。
まんまと彼の思惑に乗った形になったが、私は彼に感謝している。こんなに素敵な旦那様を私に紹介してくれたのだから。
そんなシュンメイもミレイには敵わないらしく、だらしがないとか、背筋を伸ばして、とか、いつも散々ダメ出しをされていた。
(ミレイの好きな人はシュンメイさんだったのね)
この後、テリュースは父である王国の国王から王座を譲位され、王国を帝国に併合した。
テリュースは王都に帰って真っ先に、ジョージ王子を蹴飛ばしていた。あのお行儀のよいテリュースがジョージにだけは乱暴で、それで、私も思いっきり、ジョージを殴ってやった。
「あはは、何て気持ちのいいこと」
私は人を殴ったのはこれが初めてだが、とても爽快だった。癖にならないようにしよう。
後で聞いた話だが、ステーシアも妹を張り倒しに行ったそうだ。
ちなみにステーシアは今では私の親衛隊長になり、クレイとも結婚している。
この後、ガナル帝国は周辺諸国を次々と傘下にいれ、一大帝国を築くことになるが、それはまた別のお話。
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