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乗馬
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「本当にすいませんでした。シュンメイにはこれ以上勝手な真似はさせませんから」
テリュースはわざわざ私たちの邸宅訪問に来て、私に平謝りだった。
「は、はい。でも、こんな立派なお屋敷をご用意頂きまして、本当にありがとうございます」
シュンメイさんには確かに振り回されてばかりだが、素敵な邸宅を私たち四人に用意してくれた。
ステーシアは毎日のようにクレイと会うようになってラブラブだし、強い対戦相手を見つけてくれるシュンメイさんには感謝しかしていない。
それから、アミとミアも、シュンメイさんから魔法のレッスンを受けていて、とても世話になっているらしい。彼女たちによると、シュンメイさんはかなり高位の魔法使いとのことだ。
要するに、シュンメイさんにいいように利用されていると感じているのは、私だけだった。
「何かご不自由なことはございませんか」
テリュースは本当に私を気遣ってくれる。
「いいえ、十分にして頂いてます」
どうしたのだろうか。テリュースが急に落ち着かなくなって来た。
「あ、あの、あのですね。も、もしよろしかったら、こ、今度、じ、乗馬を、ご、ご一緒に、い、いかがでしょうかっ」
テリュースが突然顔を真っ赤にして、体をカチンコチンにして、乗馬に誘って来た。
「え、ええ、ぜひお連れ下さい」
あまりにもテリュースが固すぎて、少し引いてしまったが、冒険者活動は週一ペースで、それ以外の日は、私はいつも一人で暇していることが多かったので、お誘いは嬉しかった。
テリュースは、ぱあっと顔を輝かせた。
(何だか子供みたいな方ね)
「あ、ありがとうございます。いつがよろしいでしょうか。いつでもスケジュールあけますっ」
「火曜日と水曜日以外は、いつでも大丈夫です」
「わ、分かりましたっ。す、すぐスケジュールを確認して、戻って来ますっ!」
テリュースはものすごい勢いで部屋を出て行ってしまった。その姿が何だかとてもおかしくて、私はプッと笑ってしまった。
(さて、庭でも散歩しようかしら)
そう思って席を立とうとしたら、テリュースがもう戻って来た。
「い、今から大丈夫でしょうか」
全速力で走って来たのか、かなり息が乱れている。
「はい、大丈夫ですが、乗馬服を持っておりませんの。このままでよろしかったでしょうか」
「乗馬服はお持ちしました。ミレイ、ここに」
「ミレイ王女!?」
「乗馬服を持って、ずっと外で待たされておりました……」
ミレイが乗馬服を抱えて部屋に入って来た。
「王女様がそんなことをっ」
「兄の誘いをお断りされたら、使用人がルミエールさんに失礼をしないかと心配して、私に頼むのですよ。もう、兄はルミエールさんのことになると、極端に考えすぎなのです」
「ミ、ミレイ、それ以上話すなっ。さあ、ルミエール殿、乗馬服をお召しください」
「ありがとうございます。それでは着替えて参ります」
私は隣りの部屋に入って乗馬服に着替えた。非常に上質な乗馬服で、サイズが私にぴったりだった。
着替え終わって出て行くと、テリュースが驚いて私を見た後、ものすごくいい笑顔になった。
「ルミエール殿、とてもお似合いです」
「ありがとうございます」
「お兄様、ルミエール殿ってのは固すぎませんこと?」
「ルミエール殿はルミエール殿ではないか」
「ルミエールさんは、兄からどのように呼ばれたいのかしら」
「え? ルミエール殿で構いませんが。もちろん、ルミエールでも構いません」
「ル、ルミエール!? だ、だめだ。お、恐れ多くて、心臓が破裂しそうだっ」
この方は本当に大げさね。
「お兄様、せっかく乗馬に行くのですから、もう少し親密な感じにされてはいかがでしょうか」
「考えておく。さあ、ルミエール殿、こちらにお越しください。乗馬は初めてでおられますか?」
「聖女の修行時代に一通りは習いました」
「お兄様、私はもうよろしいでしょうか?」
「ああ、ありがとう。苦労をかけた」
「どういたしまして。ルミエールさん、兄をよろしくお願いします」
王女から丁寧にお辞儀をされてしまった。
「申し訳ございません。不躾な妹で」
「いいえ、明るくお美しい妹君で、羨ましいです。仲がよろしいのですね」
「そうでしょうか? 昔は仲がよかったのですが、最近は実はほとんど口をきかなかったのです。ところが、私がジョージ王子を殴ってから、急に妹から話しかけて来るようになりまして」
「まあ、そうでしたの」
「ルミエール殿はご兄弟はいらっしゃるのですか?」
「ルミエールでよろしいですわ、殿下。私は兄弟はおりませんの」
「そうなのですね。私にも殿下は不要です。テリュースで結構です」
「では、そう呼ばせて頂きますわ、テリュース」
「ルミエール」
(あら、少し恥ずかしいわ)
「あの、お兄様……」
私たちはミレイがいることに気づかなかった。
「な、何だっ、まだいたのかっ」
「いえ、戻って来たのです。ルミエールさん、帽子をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます」
「それでは、お兄様、お姉様、行ってらっしゃいませ」
そう言って、ミレイは今度こそ、ガナルの宮殿へと戻って行った。
(私をお姉様だなんて……)
テリュースとの乗馬はとても楽しかった。近くの湖まで二人で早駆けしたり、湖でランチボックスを頂いたり。
私もテリュースもあまり話をしない方だが、二人でいるとなぜか会話が弾んだ。
私はあまり話が上手ではないのだが、テリュースは頭がすごく良くて、私の話を全て理解してくれた。私の話の中で、聖女の修行時代の話は、テリュースにはツボだったらしく、特にマリアンヌの私への対抗意識丸出しの話は、涙が出るほど笑っていた。
(こんなに笑う人だったなんて。それに、なんて話しやすい人なんだろう)
「も、もし、よ、よろしければ、明日の夜、か、歌劇にい、行きませんか」
どうして、この人はさっきまで普通に話していたのに、誘っていただくときには、こんなにガチガチになるのだろうか。
「はい、喜んで」
テリュースはわざわざ私たちの邸宅訪問に来て、私に平謝りだった。
「は、はい。でも、こんな立派なお屋敷をご用意頂きまして、本当にありがとうございます」
シュンメイさんには確かに振り回されてばかりだが、素敵な邸宅を私たち四人に用意してくれた。
ステーシアは毎日のようにクレイと会うようになってラブラブだし、強い対戦相手を見つけてくれるシュンメイさんには感謝しかしていない。
それから、アミとミアも、シュンメイさんから魔法のレッスンを受けていて、とても世話になっているらしい。彼女たちによると、シュンメイさんはかなり高位の魔法使いとのことだ。
要するに、シュンメイさんにいいように利用されていると感じているのは、私だけだった。
「何かご不自由なことはございませんか」
テリュースは本当に私を気遣ってくれる。
「いいえ、十分にして頂いてます」
どうしたのだろうか。テリュースが急に落ち着かなくなって来た。
「あ、あの、あのですね。も、もしよろしかったら、こ、今度、じ、乗馬を、ご、ご一緒に、い、いかがでしょうかっ」
テリュースが突然顔を真っ赤にして、体をカチンコチンにして、乗馬に誘って来た。
「え、ええ、ぜひお連れ下さい」
あまりにもテリュースが固すぎて、少し引いてしまったが、冒険者活動は週一ペースで、それ以外の日は、私はいつも一人で暇していることが多かったので、お誘いは嬉しかった。
テリュースは、ぱあっと顔を輝かせた。
(何だか子供みたいな方ね)
「あ、ありがとうございます。いつがよろしいでしょうか。いつでもスケジュールあけますっ」
「火曜日と水曜日以外は、いつでも大丈夫です」
「わ、分かりましたっ。す、すぐスケジュールを確認して、戻って来ますっ!」
テリュースはものすごい勢いで部屋を出て行ってしまった。その姿が何だかとてもおかしくて、私はプッと笑ってしまった。
(さて、庭でも散歩しようかしら)
そう思って席を立とうとしたら、テリュースがもう戻って来た。
「い、今から大丈夫でしょうか」
全速力で走って来たのか、かなり息が乱れている。
「はい、大丈夫ですが、乗馬服を持っておりませんの。このままでよろしかったでしょうか」
「乗馬服はお持ちしました。ミレイ、ここに」
「ミレイ王女!?」
「乗馬服を持って、ずっと外で待たされておりました……」
ミレイが乗馬服を抱えて部屋に入って来た。
「王女様がそんなことをっ」
「兄の誘いをお断りされたら、使用人がルミエールさんに失礼をしないかと心配して、私に頼むのですよ。もう、兄はルミエールさんのことになると、極端に考えすぎなのです」
「ミ、ミレイ、それ以上話すなっ。さあ、ルミエール殿、乗馬服をお召しください」
「ありがとうございます。それでは着替えて参ります」
私は隣りの部屋に入って乗馬服に着替えた。非常に上質な乗馬服で、サイズが私にぴったりだった。
着替え終わって出て行くと、テリュースが驚いて私を見た後、ものすごくいい笑顔になった。
「ルミエール殿、とてもお似合いです」
「ありがとうございます」
「お兄様、ルミエール殿ってのは固すぎませんこと?」
「ルミエール殿はルミエール殿ではないか」
「ルミエールさんは、兄からどのように呼ばれたいのかしら」
「え? ルミエール殿で構いませんが。もちろん、ルミエールでも構いません」
「ル、ルミエール!? だ、だめだ。お、恐れ多くて、心臓が破裂しそうだっ」
この方は本当に大げさね。
「お兄様、せっかく乗馬に行くのですから、もう少し親密な感じにされてはいかがでしょうか」
「考えておく。さあ、ルミエール殿、こちらにお越しください。乗馬は初めてでおられますか?」
「聖女の修行時代に一通りは習いました」
「お兄様、私はもうよろしいでしょうか?」
「ああ、ありがとう。苦労をかけた」
「どういたしまして。ルミエールさん、兄をよろしくお願いします」
王女から丁寧にお辞儀をされてしまった。
「申し訳ございません。不躾な妹で」
「いいえ、明るくお美しい妹君で、羨ましいです。仲がよろしいのですね」
「そうでしょうか? 昔は仲がよかったのですが、最近は実はほとんど口をきかなかったのです。ところが、私がジョージ王子を殴ってから、急に妹から話しかけて来るようになりまして」
「まあ、そうでしたの」
「ルミエール殿はご兄弟はいらっしゃるのですか?」
「ルミエールでよろしいですわ、殿下。私は兄弟はおりませんの」
「そうなのですね。私にも殿下は不要です。テリュースで結構です」
「では、そう呼ばせて頂きますわ、テリュース」
「ルミエール」
(あら、少し恥ずかしいわ)
「あの、お兄様……」
私たちはミレイがいることに気づかなかった。
「な、何だっ、まだいたのかっ」
「いえ、戻って来たのです。ルミエールさん、帽子をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます」
「それでは、お兄様、お姉様、行ってらっしゃいませ」
そう言って、ミレイは今度こそ、ガナルの宮殿へと戻って行った。
(私をお姉様だなんて……)
テリュースとの乗馬はとても楽しかった。近くの湖まで二人で早駆けしたり、湖でランチボックスを頂いたり。
私もテリュースもあまり話をしない方だが、二人でいるとなぜか会話が弾んだ。
私はあまり話が上手ではないのだが、テリュースは頭がすごく良くて、私の話を全て理解してくれた。私の話の中で、聖女の修行時代の話は、テリュースにはツボだったらしく、特にマリアンヌの私への対抗意識丸出しの話は、涙が出るほど笑っていた。
(こんなに笑う人だったなんて。それに、なんて話しやすい人なんだろう)
「も、もし、よ、よろしければ、明日の夜、か、歌劇にい、行きませんか」
どうして、この人はさっきまで普通に話していたのに、誘っていただくときには、こんなにガチガチになるのだろうか。
「はい、喜んで」
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