私の婚約者が伯爵令嬢に取られそうでしたので、思い詰めてその伯爵令嬢を殺したのですが、殺す前の日にタイムリープしちゃうのです

もぐすけ

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最終話

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 私は王妃という職業に就職したのだと考えた。非常に華やかでやり甲斐のある仕事で、私に合っていると思う。王子は上司だ。上司と部下であって、夫婦ではないから、当然エッチもなしだ。

 殿下からは、好きな男ができたら囲っていいと言われている。遠慮なく囲うつもりだ。

 だが、一つ気になることがあった。

「ねえ、アリサ、あなたの想い人は諦めたの?」

「諦めていないわよ」

「え? 不倫はダメよ」

「不倫にはならないのよ」

「どういう意味? ……! まさか、あなたっ」

「そう、私の好きな人はあなたなのよ。一緒になれて、本当に嬉しいわ」

 そうだったのか……

「いつから?」

「学園に入る少し前かな。王都の仕立て屋であなたを見かけたの。こんなに綺麗な人がいるんだって見惚れたのよ。そうしたら、チャラそうな男があなたに話しかけていて、ああ、馬鹿な男に騙されちゃってるな、って思ったの」

 確かにユリウスと二人で制服を仕立てに行ったことがあった。

「でも、その時はそれで終わりだったの。まさか同じクラスで隣になるとは思わなかったわ。運命を感じたの。それでユリウスの本性を知らせたくて、彼を誘惑したのよ」

「そうだったの!?」

「クレア、もう分かったと思うけど、あの男は最低だから。でも、なかなかクレアが目を覚ましてくれなくて、一年以上もアホの相手をする羽目になって、ほとほと疲れたわよ」

「でも、ユリウスだけでなく、他にもたくさん男を引っ張っていたわよね?」

「あなたに行かないように網張って防いでたのよ。ユリウスとはすぐに婚約破棄になると思っていたのに、長期間防ぐ羽目になって本当に大変だったわ。金山の噂まで流してね。でも、そんなに努力している私を殺しただなんて聞いたときは、立ち直れないほどショックだったわ」

「タイムリープは知っていたの?」

「そんな超常現象があるなんて、びっくりしたわよ。また殺されるかもって、しばらくビクビクしていたのよ。でも、神様が味方してくれていると思って、勇気も出た。もう少し頑張ろうって。婚約解消したって聞いて、俄然やる気出たしね」

「そういえば、あなたの寮に行ったとき、すぐに出て来たけど、朝の弱いあなたには珍しいって、後から思ったんだけど」

「あなたが来ているって寮長に言われて飛び起きたのよ。すごく嬉しかった。あの頃私はかなり絶望していて、もうこのまま死んじゃおうかな、って思ってたくらいなのよ。多分、私、自殺したんじゃない? あの日が私の人生の転機だったの」

 自殺ってのは考えなかった。

「フィリップ様は好きじゃないの?」

「何ていうか、頼れる人。好きだと思うよ。クレアのことは大好き。でも、せまったりしないから安心してね。ソウルメイトって感じの好きなんだ」

「私も前ほど嫌いではないかな」

「よかった。また殺されたら大変だから」

「殺しても死なないから大丈夫よ」

「そうね。これからもよろしくね」

「こちらこそ」
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