3 / 13
婚約破棄の動き
しおりを挟む
ユリウスから話があるのは昼休み。その前にユリウスはアリサと接触するはずだ。
アリサのクラスは私のクラスの隣であるため、休み時間には来ないだろう。いつ私が現れるか分からないからだ。
ちょっと待って。アリサは親元を離れて、学園の女子寮から通っている。一方私は馬車での送り迎えだ。ユリウスは男子寮からの通いであるため、寮から学園までの登校中に二人が話している可能性もある。
というか、ひょっとすると毎日話している可能性がある。
アリサは私の親友ということになっているため、ユリウスが婚約者の親友といっしょに話していても、違和感はないだろう。ユリウスと私が婚約関係にあることは、学園ではとても有名だからだ。
授業の合間の休み時間に、私は隣に座っているレベッカに、何気なくアリサの寮での暮らしぶりを聞いてみた。彼女も寮暮らしのはずだった。
上手く誘導させて、登校の様子を聞き出したところ、案の定、アリサはよくユリウスといっしょになるそうだ。
ただ、待ち合わせるとかではなく、会えばいっしょに歩くといった感じらしい。
「でも、最近はよく一緒になることが多いみたいよ。あなたのご結婚のご相談をされておられるのではないかしら?」
そう言って、レベッカは羨ましそうな目で私を見る。
あの二人が悪い相談をしているとも知らずに。
一回目は結婚の時期をユリウスが卒業してからではなくて、私が卒業してからに変更しようという話だった。理由としては自然なように思うが、ユリウスの両親は一刻も早く、私の家から巨額の支援を引き出したいはずで、何だかおかしいと思った。
二回目は婚約の解消を考えて欲しいという内容だった。両親の事業の犠牲になる必要はない、とか言っていたが、私の家の事業は順調で、支援を欲しているのは彼の家の方だ。事業の犠牲になっているというなら、それは彼であって、私ではない。
婚約を破棄したいなら、そんなよく分からない理由ではなく、どうせ言われるのなら、はっきりと理由を言って欲しかった。
私が嫌いになったとか、他に好きな女の子が出来たとか、そういう理由であれば、諦めることはとても出来ないが、訳の分からない理由を述べられるよりは、まだ誠意があると思う。
婚約破棄自体が、誠意のかけらもないので、どっちでも同じか。
本人同士だけなら、婚約という行為はしなくてもいいように思う。婚約というのは、他人や社会に向かって、結婚するからよろしくと挨拶する行為であり、本人同士だけの約束ではなく、他人や社会を巻き込んでの契約なのだ。
契約は守らなければならないし、違反したら、相応の罰を受ける必要があると、私は思う。
婚約破棄だなんて重要なことは、昼休みの校舎裏でさらっと言うようなことではないだろう。
ユリウスって実はアホなんじゃないか、とユリウス大好きな私は、初めて彼の見たくない面を見たような気がした。
「え? 今なんて仰ったの?」
私が考えごとをしているときに、レベッカが重要なことを話した。
「アリサさんの領地で金山が発見されたみたい、って言ったのよ。かなりの埋蔵量らしいわよ」
知らなかった。
「それ、アリサが話してたの?」
「ううん、噂よ。彼女に聞いても、よく分からない、と言われたわ。ほら、彼女って、お家のことあまりお話しされないでしょう?」
そうだった。アリサは東北地方に広大な領地を持つ由緒ある伯爵家の令嬢だが、自分の出自を決してひけらかさない。少しぐらい自慢した方が、逆に人間的には親しみを持てるというものだが、謙遜ばかりしてクソ面白くない女なのだ。
(でも、よく考えたら、私もひけらかさないわ。そういうのって下品だから。でも、あの女はそういう感じじゃなくて、ただ単にぽわんとしているだけよ。そういうところも男ウケするのよ。本当に腹が立つわ)
だが、ユリウスが婚約を解消したがっている理由が分かったような気がした。
アリサのクラスは私のクラスの隣であるため、休み時間には来ないだろう。いつ私が現れるか分からないからだ。
ちょっと待って。アリサは親元を離れて、学園の女子寮から通っている。一方私は馬車での送り迎えだ。ユリウスは男子寮からの通いであるため、寮から学園までの登校中に二人が話している可能性もある。
というか、ひょっとすると毎日話している可能性がある。
アリサは私の親友ということになっているため、ユリウスが婚約者の親友といっしょに話していても、違和感はないだろう。ユリウスと私が婚約関係にあることは、学園ではとても有名だからだ。
授業の合間の休み時間に、私は隣に座っているレベッカに、何気なくアリサの寮での暮らしぶりを聞いてみた。彼女も寮暮らしのはずだった。
上手く誘導させて、登校の様子を聞き出したところ、案の定、アリサはよくユリウスといっしょになるそうだ。
ただ、待ち合わせるとかではなく、会えばいっしょに歩くといった感じらしい。
「でも、最近はよく一緒になることが多いみたいよ。あなたのご結婚のご相談をされておられるのではないかしら?」
そう言って、レベッカは羨ましそうな目で私を見る。
あの二人が悪い相談をしているとも知らずに。
一回目は結婚の時期をユリウスが卒業してからではなくて、私が卒業してからに変更しようという話だった。理由としては自然なように思うが、ユリウスの両親は一刻も早く、私の家から巨額の支援を引き出したいはずで、何だかおかしいと思った。
二回目は婚約の解消を考えて欲しいという内容だった。両親の事業の犠牲になる必要はない、とか言っていたが、私の家の事業は順調で、支援を欲しているのは彼の家の方だ。事業の犠牲になっているというなら、それは彼であって、私ではない。
婚約を破棄したいなら、そんなよく分からない理由ではなく、どうせ言われるのなら、はっきりと理由を言って欲しかった。
私が嫌いになったとか、他に好きな女の子が出来たとか、そういう理由であれば、諦めることはとても出来ないが、訳の分からない理由を述べられるよりは、まだ誠意があると思う。
婚約破棄自体が、誠意のかけらもないので、どっちでも同じか。
本人同士だけなら、婚約という行為はしなくてもいいように思う。婚約というのは、他人や社会に向かって、結婚するからよろしくと挨拶する行為であり、本人同士だけの約束ではなく、他人や社会を巻き込んでの契約なのだ。
契約は守らなければならないし、違反したら、相応の罰を受ける必要があると、私は思う。
婚約破棄だなんて重要なことは、昼休みの校舎裏でさらっと言うようなことではないだろう。
ユリウスって実はアホなんじゃないか、とユリウス大好きな私は、初めて彼の見たくない面を見たような気がした。
「え? 今なんて仰ったの?」
私が考えごとをしているときに、レベッカが重要なことを話した。
「アリサさんの領地で金山が発見されたみたい、って言ったのよ。かなりの埋蔵量らしいわよ」
知らなかった。
「それ、アリサが話してたの?」
「ううん、噂よ。彼女に聞いても、よく分からない、と言われたわ。ほら、彼女って、お家のことあまりお話しされないでしょう?」
そうだった。アリサは東北地方に広大な領地を持つ由緒ある伯爵家の令嬢だが、自分の出自を決してひけらかさない。少しぐらい自慢した方が、逆に人間的には親しみを持てるというものだが、謙遜ばかりしてクソ面白くない女なのだ。
(でも、よく考えたら、私もひけらかさないわ。そういうのって下品だから。でも、あの女はそういう感じじゃなくて、ただ単にぽわんとしているだけよ。そういうところも男ウケするのよ。本当に腹が立つわ)
だが、ユリウスが婚約を解消したがっている理由が分かったような気がした。
2
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。
木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。
不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。
当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。
多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。
しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。
その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。
私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。
それは、先祖が密かに残していた遺産である。
驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。
そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。
それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。
彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。
しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。
「今更、掌を返しても遅い」
それが、私の素直な気持ちだった。
※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
婚約破棄された公爵令嬢、使い魔を召喚したら魔王様でした
Crosis
ファンタジー
婚約者であるカイザル殿下に無実の罪で婚約破棄をされたシャルロット・ヨハンナ・ランゲージ。
その噂は魔術学園へ一瞬にして広まり学園生活は一変、イジメに近い事も受け始めたそんな時、実家である公爵家の書斎で一人籠っている時に目の前に召喚術が記された古い書籍が落ちてくる。
シャルロットはそに書かれた召喚術式を使い使い魔を召喚したのだが、召喚されたのはどうやら『VRMMO』という国の魔王様であった。
ファンタジーと恋愛を足して二で割った内容です。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる