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してやられましたわ
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最終種目は予定通り「剣術」だった。
皇太子殿下の愛を感じるわ。
心なしかマーガレットとリリアナが悔しそうに見える。
ふふふ、もう勝ったも同然よ。
前の種目は「演説」で、私はズッコケちゃって七位だったが、トップのリリアナまで80点差に留めることに成功した。
運動系は一位と二位で20点差となっているため、五倍すれば100点で逆転できる。
私を亡き者にしようと、遂にはウィンチェスター家からも刺客が放たれたが、悉く返り討ちにした。
武闘派貴族の生まれであることが嫌で仕方なかったけど、今はリッチモンド家に心の底から感謝している。
だが、マーガレットとリリアナは、剣の実力を隠していた。
剣術はトーナメント戦で総合点順にドローが割り振られる。
三位の私は第一シードのリリアナと同じブロックで、準決勝でリリアナと対戦し、決勝で第二シードのマーガレットと対戦する。
私は順当に勝ち抜いて行ったが、リリアナとマーガレットが想像以上に強いのだ。
しかも、まだ何かを隠している感じだった。
そして、準決勝でリリアナと対戦した。
結論から言ってしまうとリリアナには何とか勝った。
だが、奥義まで出さないと勝てなかった。
打ってくるときに重心が少しぶれるような癖があると思わせておいて、重心をぶらさずに打ち込んで来る必殺技を危うくくらいそうだった。
このレベルでこんな癖を直せてないはずがないと警戒しておいてよかった。
冷や汗ものの勝利だったが、これでリリアナの皇太子妃の夢は潰えた。
勝負の後、さっぱりとした表情のリリアナが、私のところに来て、そっと囁いた。
「マーガレットの得意種目は拳闘ではなく剣術よ。幼少の頃から皇太子様と同じ師匠に師事していたわ。頑張ってね、外人サン……」
え? どういうこと?
殿下が最終種目に剣術を選んだのは、私のためではなかったの?
私は大いに動揺した。
準決勝の対戦は同時に行われていたが、マーガレットの方はあっという間に勝ってしまっていて、こちらの対戦をずっと見ていた。
そのため、奥義も見られてしまっている。
奥義は一つだけではないが、奥義の速度を見せてしまったのは痛い。
何とか動揺を抑えて、決勝に臨もうとしたとき、更なる動揺が私を襲う。
妃候補の最終戦の決勝には、国王皇后両陛下と皇太子殿下が観覧される。
3ヶ月ぶりの対面だが、皇太子殿下が私に向けたあの微笑みをマーガレットにも向けていたのだ。
その後、私にも微笑みを向けてくれたが、先にマーガレットに向けたことで、私の中に疑心が生まれてしまった。
殿下はマーガレットに妻になって欲しいのではないか?
まずい、勝負に集中しろ、私。
妹弟子に挨拶しただけだ。
開始線まで進むときにマーガレットの表情がフェイスガード越しに見えた。
あ、こいつ、今まで隠していたんだ。
性格の悪そうな実に嫌な笑みを浮かべている。
私の動揺はピタリとおさまった。
殿下のことはとりあえず横において、この勝ちを信じているバカ女を打ちのめしてやる。
マーガレットは剣の柄頭しか見えない殿下と同じ構えをしてきた。
開始早々、私は先程リリアナに決めた奥義をマーガレットに打ち込んだ。
マーガレットは風のように交わし、殿下と同じように剣を突いてくる。
学園での殿下との勝負のときのように剣先がぐいんと伸びてくる。
だが、殿下ほどの鋭さがない。
私は難なく交わし、二つ目の奥義を出し、マーガレットの右腹を打った。
「うぐっ」
マーガレットがうずくまる。
防具の上からでもダメージは大きいはずだ。
私はマーガレットを見下ろした。
マーガレットが憎々しげな目を向けてくる。
まずは私の一本先取だ。
決勝戦は二本先取した方が勝ちだ。
マーガレットはこの程度の腕で、私に勝てるとでも思っていたのだろうか?
私が後ろを向いて開始線に向かおうとしたとき、何とマーガレットが打ち込んで来た。
こいつ、卑怯者!?
会場がどよめいた。
私は後ろを向いても隙は見せたつもりはない。
すっと右にかわして、三つ目の奥義を左肩に打ち据えた。
「つっ」
マーガレットが模擬剣を落とした。
何だ、こいつ、大したことないじゃない。
リリアナの方が強かったわよ。
「開始」の合図がなかったため、今の一本は無効だったようだが、あんなの反則ではないのか?
審判がマーガレットに注意を与えているが、フェイントで威嚇しただけで、本当に打つつもりはなかったと言い訳している。
マーガレットが下賤に見えて来た。
今までマーガレットには好感を持っていたのだが、台無しだ。
早く一本取って終わらせよう。
開始線に戻るとマーガレットが冷静な表情に戻っていた。
あっ、やられた。まんまと三つ目の奥義を引き出された。
開始早々マーガレットが踏み込んできた。
先ほどとはスピードも勢いも違う。
しかも、これは私の奥義をコピーした技だ。
何とかかわしたが、フェイスガードの右上をかすった。
帝国ルールではかすっただけで一本だ。
同点にされてしまった。
そうか。実力差を補うために、恥も外聞も捨てて、あの手この手で戦っているのね。
あなたも殿下を愛しているのね。
皇太子殿下の愛を感じるわ。
心なしかマーガレットとリリアナが悔しそうに見える。
ふふふ、もう勝ったも同然よ。
前の種目は「演説」で、私はズッコケちゃって七位だったが、トップのリリアナまで80点差に留めることに成功した。
運動系は一位と二位で20点差となっているため、五倍すれば100点で逆転できる。
私を亡き者にしようと、遂にはウィンチェスター家からも刺客が放たれたが、悉く返り討ちにした。
武闘派貴族の生まれであることが嫌で仕方なかったけど、今はリッチモンド家に心の底から感謝している。
だが、マーガレットとリリアナは、剣の実力を隠していた。
剣術はトーナメント戦で総合点順にドローが割り振られる。
三位の私は第一シードのリリアナと同じブロックで、準決勝でリリアナと対戦し、決勝で第二シードのマーガレットと対戦する。
私は順当に勝ち抜いて行ったが、リリアナとマーガレットが想像以上に強いのだ。
しかも、まだ何かを隠している感じだった。
そして、準決勝でリリアナと対戦した。
結論から言ってしまうとリリアナには何とか勝った。
だが、奥義まで出さないと勝てなかった。
打ってくるときに重心が少しぶれるような癖があると思わせておいて、重心をぶらさずに打ち込んで来る必殺技を危うくくらいそうだった。
このレベルでこんな癖を直せてないはずがないと警戒しておいてよかった。
冷や汗ものの勝利だったが、これでリリアナの皇太子妃の夢は潰えた。
勝負の後、さっぱりとした表情のリリアナが、私のところに来て、そっと囁いた。
「マーガレットの得意種目は拳闘ではなく剣術よ。幼少の頃から皇太子様と同じ師匠に師事していたわ。頑張ってね、外人サン……」
え? どういうこと?
殿下が最終種目に剣術を選んだのは、私のためではなかったの?
私は大いに動揺した。
準決勝の対戦は同時に行われていたが、マーガレットの方はあっという間に勝ってしまっていて、こちらの対戦をずっと見ていた。
そのため、奥義も見られてしまっている。
奥義は一つだけではないが、奥義の速度を見せてしまったのは痛い。
何とか動揺を抑えて、決勝に臨もうとしたとき、更なる動揺が私を襲う。
妃候補の最終戦の決勝には、国王皇后両陛下と皇太子殿下が観覧される。
3ヶ月ぶりの対面だが、皇太子殿下が私に向けたあの微笑みをマーガレットにも向けていたのだ。
その後、私にも微笑みを向けてくれたが、先にマーガレットに向けたことで、私の中に疑心が生まれてしまった。
殿下はマーガレットに妻になって欲しいのではないか?
まずい、勝負に集中しろ、私。
妹弟子に挨拶しただけだ。
開始線まで進むときにマーガレットの表情がフェイスガード越しに見えた。
あ、こいつ、今まで隠していたんだ。
性格の悪そうな実に嫌な笑みを浮かべている。
私の動揺はピタリとおさまった。
殿下のことはとりあえず横において、この勝ちを信じているバカ女を打ちのめしてやる。
マーガレットは剣の柄頭しか見えない殿下と同じ構えをしてきた。
開始早々、私は先程リリアナに決めた奥義をマーガレットに打ち込んだ。
マーガレットは風のように交わし、殿下と同じように剣を突いてくる。
学園での殿下との勝負のときのように剣先がぐいんと伸びてくる。
だが、殿下ほどの鋭さがない。
私は難なく交わし、二つ目の奥義を出し、マーガレットの右腹を打った。
「うぐっ」
マーガレットがうずくまる。
防具の上からでもダメージは大きいはずだ。
私はマーガレットを見下ろした。
マーガレットが憎々しげな目を向けてくる。
まずは私の一本先取だ。
決勝戦は二本先取した方が勝ちだ。
マーガレットはこの程度の腕で、私に勝てるとでも思っていたのだろうか?
私が後ろを向いて開始線に向かおうとしたとき、何とマーガレットが打ち込んで来た。
こいつ、卑怯者!?
会場がどよめいた。
私は後ろを向いても隙は見せたつもりはない。
すっと右にかわして、三つ目の奥義を左肩に打ち据えた。
「つっ」
マーガレットが模擬剣を落とした。
何だ、こいつ、大したことないじゃない。
リリアナの方が強かったわよ。
「開始」の合図がなかったため、今の一本は無効だったようだが、あんなの反則ではないのか?
審判がマーガレットに注意を与えているが、フェイントで威嚇しただけで、本当に打つつもりはなかったと言い訳している。
マーガレットが下賤に見えて来た。
今までマーガレットには好感を持っていたのだが、台無しだ。
早く一本取って終わらせよう。
開始線に戻るとマーガレットが冷静な表情に戻っていた。
あっ、やられた。まんまと三つ目の奥義を引き出された。
開始早々マーガレットが踏み込んできた。
先ほどとはスピードも勢いも違う。
しかも、これは私の奥義をコピーした技だ。
何とかかわしたが、フェイスガードの右上をかすった。
帝国ルールではかすっただけで一本だ。
同点にされてしまった。
そうか。実力差を補うために、恥も外聞も捨てて、あの手この手で戦っているのね。
あなたも殿下を愛しているのね。
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