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第七章 教会

前世の神罰

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神託は傑作だった。

俺はマリアンヌを見直した。いつ殺されるか分からないグレースに仕え続け、神託も適当な内容でしれっと流す鋼のハートの持ち主だ。ただ、かなりの脳筋だが。

その神託を下した女神は、グレースの転生を担当したという。俺に説教をした女神に違いない。

だが、俺にとっては三百年も前のことで、女神との話の内容はかなりうろ覚えだ。女神の方は俺たちのことをすっかり忘れているらしい。

グレースの妖精になって、グレースの幸せの手助けを生涯に渡って行う、というのが、今世の俺の望みであり、使命でもある。それは俺の魂に刻み込まれていて、忘れることは絶対にない。

その女神がまたグレースに降りて来たようだ。

あれ? 俺にも女神の念話が聞こえるぞ?

『あなたね、神託で伝言ゲームするなんて前代未聞よ! どういう神託を下しているんだとジジ神に散々しぼられたわよ』

(申し訳ございませんでした。再確認しようとしたら、もういらっしゃらなかったので)

『そういう時は呼んでくれる? あなた聖女でしょ?』

(女神様をお呼び出来るんですか?)

『聖女が祈れば声は届くわよ』

(次回からそうします。ところで、女神様、私の前世のことを質問しても構わないでしょうか?)

『それはダメ、禁忌よ』

(では、私の妖精について教えていただけますでしょうか)

『この子猫妖精がどうかしたの?』

(彼も女神様が転生の手続きをして、私の妖精になるよう設定されたそうなのです)

『私が!? 全く覚えてないわ。おかしいわね。それだけ特殊なケースであれば記憶に残っていても良さそうなのに』

俺は思い切って、念話に加わることにした。

『私は三百年前の妖精界に転生して、三百年間修行して、グレースに召喚されたのです」

『お、念話出来るのね。さすがモフドラね。でも、過去に転生させるなんて、本当に私かなあ。今度、記録を調べてくるよ。さて、前の神託はもう諦めて、次の神託行くわよ。メモの用意はいい?』

「はい、大丈夫です」

『人はパンのみに生きるにあらず!』

あれ? また出典が聖書だ。ここは一言突っ込んでおこう。

『あのう、女神様、それ、「聖書」のパクリですよね?』

『違うわよ、「聖書」が我々の神託を載せているのよ。じゃ、また』

行ってしまった。せわしない女神様だなあ。あれ? グレースが何か思い悩んでいるな。こういうときは、そっと近くにいてあげて、グレースから話し出すのを待つのがいい。

恐らく俺と一緒になる方法を女神様に早く聞きたいということだとは思うが、悪い結果を恐れて、質問を先延ばしにしている感じかな。

グレースは俺と結婚したいと言うが、俺は人間界では猫型でしかいられないし、仮に人型になれたとしても、契りを交わした瞬間に、妖精界に戻されてしまうはずだ。保護対象が男と契りを結ぶと、妖精は人間界にはいられなくなるのだ。

逆にグレースを妖精界に連れて来た場合は、一日もしないうちに死んでしまう。人間は妖精界に長時間いると、魂が溶け出してしまうのだ。

要するに人と妖精は結婚できないのだ。

したがって、俺が人になるしかない。グレースが妖精になるという逆パターンは、俺が消滅する可能性があるからだ。だが、妖精が人になったという話は今まで聞いたことがない。

俺だってグレースと一緒になりたいと三百年以上思っていて、妖精界で色々と調べたのだ。だが、俺の中では不可能と答えが出てしまっていた。

これが前世で心中という愚かな選択をしてしまった俺たちへの神罰なのだ。

(シルバ)

お、来たかな?

『どうした?』

(「聖書」って何?)

そっちか。というか、俺に相談しても仕方がないと思ったのだろう。
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