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幕間 シルバの過去

異世界転生

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周囲から結婚を反対された二人は、心中という悲しい選択をした。

「来世で結ばれよう」

「ええ、愛してるわ」

「俺もだよ」

***

「心中ってのはないなあ。いくら世間が冷たいからって、彼女まで巻き添えにして死んでどうすんのよ。神としての評価は0点だよ、このアホが」

俺は気がついたら、女神様に延々と説教をされていた。

「あの女の子可哀想でしょ。あなたを信じて、身分も婚約者も両親もぜいたくな暮らしも全部捨ててあなたのところに来たのに、半年もしないうちにあなたに殺されちゃったのよ。いやあ、ないわ」

いや、俺だって心中なんてしたくなかったのだが、あの状況でどうやって生きていけるというのだ。

「やりもしないであきらめるやつは、もう人間やめたほうがいいわよ。次のお前のお勤めは『モフドラ』にしたからね」

モフドラ? なんだそれは。

「彼女の方はあまりにも哀れなので、今度こそはいい人生を歩ませてやりたいわね。それで高貴なお嬢様に生まれるように設定済なのよ。でも、お前のことばかり気にしてるのよねえ。本当に一途で綺麗な心の持ち主よね。どうして、いい女はアホな男に引っかかるのかねえ、女神でもわからないなあ、これだけは」

そうか、メグミは次の人生では幸せになれるのか。だったら、心中してよかったんじゃ……

「あ? あの娘はね、あなたと幸せになりたかったのよ。このバカたれは全くわかってないわね。バカは死ななきゃ治らないってお前たち人間はいうけど、死んでも治らないじゃないの。本当にアホね、お前は」

アホだバカだと言われて、少しむっとしたので、女神様だと遠慮していたのだが、思い切って聞いてみた。

「あの、他に手があったのでしょうか?」

「いくらでもあったわよ。彼女は貧しくても、世間からなんと言われようとも、あなたがいればそれでよかったのよ。山の中にでも入って、サバイバルするなり、無人島を探して、船で海に出るなりしてもよかったんじゃない? それで運悪く死ぬならまだしも、何もしないうちに死を選ぶなんて、まったく、あなたは死んで正解かもね」

そう言われてみると、確かにやりようがあったかもしれない。俺は精神的に疲れてしまって、彼女を巻き添えにしてしまったのか。

「そうよ。少しはわかってきたかな。とにかく、彼女があなたと離れたくないって聞かないのよ。仕方がないから、彼女の『モフドラ』にしてやることにしたわよ。あなた、彼女が幸せになるように、今回は彼女に尽くしなさいよ。自分のしでかした愚かな行為を反省し、彼女に生涯尽くすのよ」

それはわかったけど、「モフドラ」って何?

「細かいことにこだわる男だね。本当になんでこんな男を好きになるかなあ。さっさと行きなさいよ。ほらっ」

おわっ、蹴飛ばされた。

俺は「モフドラ」が何たるかを知らないまま、異世界へと転生させられた。
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