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第五章 迎撃

伝言

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エカテリーナが山から戻って、リッチモンド邸に到着したとき、セバスチャンから驚くべき報告を受けることとなった。

グレースが数日前にふらりと帰って来て、屋敷で使用人を罰して、リチャードを殺し、その後、また山に戻ってしまったようなのだ。詳細は地下牢にいるマークに聞けというのが、エカテリーナへの伝言らしい。

「どうやって?」

エカテリーナは驚いた。まず、数日前に帰って来ているというのがおかしい。転移でも出来るのだろうか。また、リチャードは空から落下させて殺したとのことだが、これも魔法なのだろうか。

「恐らく宙に浮かせる不思議な魔法をお使いになったのだと思います。私はこの通り、その魔法で腕を折られました。お嬢様を一年前に牢に入れたときのことをお恨みになられていたようです」

セバスチャンがグレースに対して丁寧な敬語を使っている。余程怖い目にあったようだ。

「アニーとテイルはどうしたの?」

「アニー様とテイル様は地下牢に入れられています」

「何ですって? 何故そんなことを」

エカテリーナはピンと来た。

「仕返しね。そうね、これで許してくれるのであれば、このまま入ってもらうしかないわね。風呂ダメ、面会ダメ、囚人食で暮らせ、でしょう?」

「その通りでございます」

「ところで、あの男は何故下半身裸で作業しているの?」

少し先に一人ポツンと薪割りをしている男をエカテリーナは指差した。

「お嬢様から命じられたからです。一年前、ビルはお嬢様のスカートをめくったために罰を受けています」

「ふふふ、愉快ね。他に罰を受けた使用人はいるの?」

「マークです。エドワード様の守衛たちに酷く殴られたそうです。リチャード様の死も目撃していますが、エカテリーナ様以外には話すな、とお嬢様から命じられているそうです」

「分かったわ、早速会って話を聞いてみるわ」

エカテリーナはすぐに地下牢へと向かった。娘たちは面会禁止で、メイドたちが目を血走らせて見張っている。何人たりとも侵入させない、という気合いがヒシヒシと伝わって来る。

「ご苦労様」

エカテリーナはメイドたちにそう言って、娘たちの地下牢の区画は素通りした。セバスチャンから教わった区画に入るとマークが牢に入っていた。この区画の突き当たりには隠し部屋がある。

「マーク、グレースからの伝言を聞かせて頂戴」

「奥様! 牢から出ひてくらはい」

「グレースは当主よ。当主の命には背けないわ。何があったか教えなさい」

「……。はひ」

歯が何本か抜けていて聞き取りにくいところがあったが、マークは順を追って何があったかを説明し始めた。

どうやら、グレースは化け物になってしまったようだ。ローズが言っていたが、あの子猫は本当に恐ろしい妖精のようだ。

マークの話の場面が、王宮に移った。リチャードはここではなく、王宮で殺されたのか。そして、王子と側妃を助けた話をしている。

「何ですって? エドワード王子様とお妃様がここに!?」

すぐに立ち去ろうとするエカテリーナをマークが引き止めた。

「奥様、お待ちくらはい。お嬢様から、リッチモンド家は引き続きお嬢様を追放処分のままにしておいて欲しい、とのことれす」

エカテリーナは少し考えてから、マークに礼を言って、急いで隠し部屋に向かった。

「エドワード王子様、お妃様、ご挨拶が遅れました。エカテリーナでございます」
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