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第四章 敵討ち
真の敵
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いったんはエドワードの要望に従うことにした。
エドワードの母の寝殿に向かう途中でエドワードが話を始めた。
「リチャードが死んだとなっては、私も覚悟を決めなければならない。母の命さえ守れるならば、ぜひともグレースの力になりたい」
エドワードのこの申し出は、正直なところ、有難迷惑だ。シルバ以外の味方は必要ないと思っているし、かえって、足手まといになってしまうだろう。
婚約破棄したということは、いったんは私よりも自分の母を選択したということなのだ。エドワードの事情はわからないが、厳しい見方をすれば、シルバの力を見た後で、敵側からこちら側に乗り替えたいと言っているようにしか思えない。
「殿下、はっきり申し上げます。私の味方はシルバだけで十分です。殿下のお母様には私もお世話になりましたので、命が危ないということであれば、ご助力いたしますが、それまでの関係とさせていただきます」
エドワードは苦しそうな表情をしている。
「わかった。自分勝手な話をしているとの自覚が希薄だった。婚約破棄は申し訳なかった。どういう事情があろうと、グレースを傷つけたことに違いはない。改めてお詫びがしたい。申し訳なかった」
エドワードが頭を深々と下げてくるのには、さすがにちょっと困ってしまった。
「殿下、婚約の件はもういいです。そもそも両親も私も婚約には乗り気でなかったんです。陛下から直々にお願いされて、仕方なくお受けした婚約ですので、むしろ、破棄していただいて助かりました」
エドワードは何だか複雑な顔をしている。シルバは『あちゃあ、言っちゃったよ』とか言いながら、右前足で額のあたりを触るようなポーズをしている。
一体何だというのだろう。エドワードが気にしているようだから、そんなに大したことはないって、教えてあげただけだ。
「わ、わかった。婚約解消の話はこれ以上しないようにする。私の敵について話をしたい」
「殿下の敵?」
「そうだ。私の敵は陛下と教会だ。リッチモンド家は敵の目標の一つだった」
ここまで話したところで、エドワードの母の寝殿の上空に到着した。
「申し訳ないが、いったん話はここまでにして、母を助けたい。図々しいお願いだとは承知しているが、ぜひとも助太刀を頼みたい」
『おいおい、風呂敷ぶちまけておいて説明なしかよ』
とシルバは突っ込んでいるが、緊急事態のようだから仕方がない。
「わかりました。お母さまを外まで連れ出して来てくださいますか?」
エドワードは首を振った。
「それはかなり難しいと思う。まだ、リチャードの死は伝わっていないと思うが、母の寝殿のなかは敵の見張りだらけだ。私は今は彼らの敵ではなく、協力者を装っているが、ずっと彼らから疑われている。敵の目には私とグレースが協力して、リチャードを葬ったと見えるに違いない」
「なぜそんな風に? 私が殿下の味方の訳がないでしょう」
「敵はそうは思っていない」
「どうしてですか?」
「そ、それは……」
エドワードが何かを言いよどんでいる。
『こいつがグレースのことを好きだってのがバレバレだからさ。グレースもいい加減気づけよ』
シルバが念話で突然乱入してきたため、私は普通の声の音量でシルバに反応してしまった。
「え? そうなの?」
「な、何がだ? 何も言ってないが……」
当然エドワードには何のことかわからないだろう。
「いいえ、何でもないです」
(シルバ、ややこしいところで、口出さないでよ)
『いや、お前が鈍感すぎて、イライラして見ていられないんだよ。この殿下は恐らくお前を守るために婚約破棄しているぜ。お前のことが大好きなんだよ、このイケメン王子は』
(そんな、まさか……)
私が考え込んでいると、シルバがまた念話してきた。
『グレース、突入すればいいよ。何とかしてやる』
(わかったわ、頼みにしているわよ)
いったんはエドワードの好意について考えるのはやめにした。以前ならまだしも、今はシルバの存在が、私の中で大きすぎるのだ。
「と、とりあえず、お母様の救出のお手伝いはします。いっしょに寝殿に乗り込みましょう。シルバがついていれば大丈夫です」
「それは頼もしいが、寝殿には未婚の女性ばかりで、恐ろしい数の妖精がいるが、それでも大丈夫か?」
『はっ、この王子はわかっちゃいないね。全く問題ないさ』
「全く問題ないそうです」
「そ、そうか。では、行くぞ」
エドワードの母の寝殿に向かう途中でエドワードが話を始めた。
「リチャードが死んだとなっては、私も覚悟を決めなければならない。母の命さえ守れるならば、ぜひともグレースの力になりたい」
エドワードのこの申し出は、正直なところ、有難迷惑だ。シルバ以外の味方は必要ないと思っているし、かえって、足手まといになってしまうだろう。
婚約破棄したということは、いったんは私よりも自分の母を選択したということなのだ。エドワードの事情はわからないが、厳しい見方をすれば、シルバの力を見た後で、敵側からこちら側に乗り替えたいと言っているようにしか思えない。
「殿下、はっきり申し上げます。私の味方はシルバだけで十分です。殿下のお母様には私もお世話になりましたので、命が危ないということであれば、ご助力いたしますが、それまでの関係とさせていただきます」
エドワードは苦しそうな表情をしている。
「わかった。自分勝手な話をしているとの自覚が希薄だった。婚約破棄は申し訳なかった。どういう事情があろうと、グレースを傷つけたことに違いはない。改めてお詫びがしたい。申し訳なかった」
エドワードが頭を深々と下げてくるのには、さすがにちょっと困ってしまった。
「殿下、婚約の件はもういいです。そもそも両親も私も婚約には乗り気でなかったんです。陛下から直々にお願いされて、仕方なくお受けした婚約ですので、むしろ、破棄していただいて助かりました」
エドワードは何だか複雑な顔をしている。シルバは『あちゃあ、言っちゃったよ』とか言いながら、右前足で額のあたりを触るようなポーズをしている。
一体何だというのだろう。エドワードが気にしているようだから、そんなに大したことはないって、教えてあげただけだ。
「わ、わかった。婚約解消の話はこれ以上しないようにする。私の敵について話をしたい」
「殿下の敵?」
「そうだ。私の敵は陛下と教会だ。リッチモンド家は敵の目標の一つだった」
ここまで話したところで、エドワードの母の寝殿の上空に到着した。
「申し訳ないが、いったん話はここまでにして、母を助けたい。図々しいお願いだとは承知しているが、ぜひとも助太刀を頼みたい」
『おいおい、風呂敷ぶちまけておいて説明なしかよ』
とシルバは突っ込んでいるが、緊急事態のようだから仕方がない。
「わかりました。お母さまを外まで連れ出して来てくださいますか?」
エドワードは首を振った。
「それはかなり難しいと思う。まだ、リチャードの死は伝わっていないと思うが、母の寝殿のなかは敵の見張りだらけだ。私は今は彼らの敵ではなく、協力者を装っているが、ずっと彼らから疑われている。敵の目には私とグレースが協力して、リチャードを葬ったと見えるに違いない」
「なぜそんな風に? 私が殿下の味方の訳がないでしょう」
「敵はそうは思っていない」
「どうしてですか?」
「そ、それは……」
エドワードが何かを言いよどんでいる。
『こいつがグレースのことを好きだってのがバレバレだからさ。グレースもいい加減気づけよ』
シルバが念話で突然乱入してきたため、私は普通の声の音量でシルバに反応してしまった。
「え? そうなの?」
「な、何がだ? 何も言ってないが……」
当然エドワードには何のことかわからないだろう。
「いいえ、何でもないです」
(シルバ、ややこしいところで、口出さないでよ)
『いや、お前が鈍感すぎて、イライラして見ていられないんだよ。この殿下は恐らくお前を守るために婚約破棄しているぜ。お前のことが大好きなんだよ、このイケメン王子は』
(そんな、まさか……)
私が考え込んでいると、シルバがまた念話してきた。
『グレース、突入すればいいよ。何とかしてやる』
(わかったわ、頼みにしているわよ)
いったんはエドワードの好意について考えるのはやめにした。以前ならまだしも、今はシルバの存在が、私の中で大きすぎるのだ。
「と、とりあえず、お母様の救出のお手伝いはします。いっしょに寝殿に乗り込みましょう。シルバがついていれば大丈夫です」
「それは頼もしいが、寝殿には未婚の女性ばかりで、恐ろしい数の妖精がいるが、それでも大丈夫か?」
『はっ、この王子はわかっちゃいないね。全く問題ないさ』
「全く問題ないそうです」
「そ、そうか。では、行くぞ」
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