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第三章 逆襲
逆襲の誘い
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「放火?」
聞き捨てならない。私はカトリーヌに説明を求めた。
「最初から順を追って説明するわ。あなたを追放した後、リッチモンド家の家督相続を私が行うにあたって、リチャードがいろいろと助けてくれるうちに、私たちは恋仲になったの。それで、リチャードはリッチモンド家に婿入りしたわ」
これは明らかに財産狙いだ。
「叔母様、それって……」
エカテリーナは頷いた。
「ええ、私はすっかり騙されたのよ。その後も、領地経営でいろいろとアドバイスをもらって、慣れない私は何かとリチャードに頼るようになったの。そしたら、いつの間にか、昔から仕えてくれた家臣たちが排除されていて、リチャードの子飼いの部下たちが領地経営を牛耳るようになっていたのよ」
エカテリーナは悔しそうだ。いろいろと目まぐるしく環境が変化する中で、エカテリーナはいっぱいいっぱいだったのだろうが、いいようにやられすぎではないか? だが、よく考えたら、自分もいいようにやられているので、人のことは言えないことに気づいた。
「私は何とか巻き返そうとしたのよ。すると、リチャードは、今度は私を殺害しようとして来たの。リチャードから紹介された商人から口紅のサンプルを頂いたのだけど、若い子向きの色だったので、侍女にあげたら、死んでしまったの」
商人はすぐにつかまって処刑されてしまったらしい。こんなにわかりやすい直接的な殺害を仕掛けて来るのは愚かすぎる。恐らく商人は利用されただけだろう。成功しても失敗しても始末されたのだと思う。
「そんなことがあったので、私の最近の体調不良の原因が気になって、信頼できる医者に診せたら、案の定、毒に侵されていたわ。幸いにも解毒できるそうだけど、このままではいつ殺されるかわからないので、ローズに相談したの」
エカテリーナがローズに説明を促した。ローズが頷いて、口を開いた。
「エカテリーナから相談を受けて、まずは身内の分断の修復をすべきと思いました。お嬢様の汚名をそそぐことにしたのです。最初に実家の力を借りて、お嬢様の魔法の残り火の偽証をしたメイドたちを探したのですが、すでに全員が殺害されていました」
証言したメイドたちは割と古株だった。全員の顔を思い出せる。彼女たちが裏切ったと知って、かなりショックだった。
「しかし、彼女たちは保身のために、真相を書いた文書を何か所かに隠していたのです。そのうちの一通を入手しました。それによりますと、旦那様の寝室のドアを開けられないように細工したうえで放火したようです。指示したのはリチャードです」
両親は殺されたのか。リチャードへの憎しみが膨れ上がるが、少し違和感がある。こんな力任せのやり方では、普通であればすぐに発覚して潰されるはずだ。現にローズが真相に行きついている。真相を掴まれても潰されない強力なバックが存在しているということか。
「叔母様、話は分かりましたが、私に何をしろとおっしゃるのでしょうか?」
「あなたにリッチモンド家の家督を継いでもらって、リチャードたちに対抗してほしいのよ」
エカテリーナが実に難しいことをずいぶんとあっさりという。
「え? それは現当主の叔母様がやるべきでは?」
エカテリーナは首をゆっくりと横に振った。
「私は娘たちが人質になっていて、何もできないのよ」
私はアニーとテイルのことを久しぶりに思い出して、はらわたが煮えくり返った。
「私が仮に当主になったとして、私を辱めたアニーとテイルを許すとでも思っていらっしゃるのかしら」
「思っていないわ。でも、殺したりはしないでしょう?」
確かに殺すことまでは考えていなかった。腕を乱暴に掴んだセバスチャン、肘鉄を食らわせたマーク、スカートをめくったビルは死刑確定だけど。
「本来リッチモンド家の家督はあなたが継ぐはずだったのよ。私の敬愛する兄の一粒種のあなたがね。私はこの一年間、あなたのことを忘れたことはなかったわよ」
いやいやいや、それは嘘だろう。私を追放したのはエカテリーナだ。
「叔母様、この山で私のような世間知らずが生きていけるはずがございません。追放とは名ばかりの死刑執行ではないでしょうか?」
私の突っ込みに対抗したのは意外にもローズだった。
「いいえ、お嬢様、エカテリーナは私にお嬢様を密かに支援するよう依頼していました。そのため、常にお嬢様に見張りをつけて、万一のときには救助するつもりでした」
(シルバ、本当かな?)
『女が一人いつも見張っていたのは本当だ。殺意はなかった。殺してしまうと問題になるし、お前が気づいても問題になると思ったので、放置していたんだ』
「わかりました。でも、そんなに簡単に私に家督を譲れるのでしょうか?」
エカテリーナが目に力を入れて、私を見つめた。
「譲るのではなく、あなたが奪うのよ」
聞き捨てならない。私はカトリーヌに説明を求めた。
「最初から順を追って説明するわ。あなたを追放した後、リッチモンド家の家督相続を私が行うにあたって、リチャードがいろいろと助けてくれるうちに、私たちは恋仲になったの。それで、リチャードはリッチモンド家に婿入りしたわ」
これは明らかに財産狙いだ。
「叔母様、それって……」
エカテリーナは頷いた。
「ええ、私はすっかり騙されたのよ。その後も、領地経営でいろいろとアドバイスをもらって、慣れない私は何かとリチャードに頼るようになったの。そしたら、いつの間にか、昔から仕えてくれた家臣たちが排除されていて、リチャードの子飼いの部下たちが領地経営を牛耳るようになっていたのよ」
エカテリーナは悔しそうだ。いろいろと目まぐるしく環境が変化する中で、エカテリーナはいっぱいいっぱいだったのだろうが、いいようにやられすぎではないか? だが、よく考えたら、自分もいいようにやられているので、人のことは言えないことに気づいた。
「私は何とか巻き返そうとしたのよ。すると、リチャードは、今度は私を殺害しようとして来たの。リチャードから紹介された商人から口紅のサンプルを頂いたのだけど、若い子向きの色だったので、侍女にあげたら、死んでしまったの」
商人はすぐにつかまって処刑されてしまったらしい。こんなにわかりやすい直接的な殺害を仕掛けて来るのは愚かすぎる。恐らく商人は利用されただけだろう。成功しても失敗しても始末されたのだと思う。
「そんなことがあったので、私の最近の体調不良の原因が気になって、信頼できる医者に診せたら、案の定、毒に侵されていたわ。幸いにも解毒できるそうだけど、このままではいつ殺されるかわからないので、ローズに相談したの」
エカテリーナがローズに説明を促した。ローズが頷いて、口を開いた。
「エカテリーナから相談を受けて、まずは身内の分断の修復をすべきと思いました。お嬢様の汚名をそそぐことにしたのです。最初に実家の力を借りて、お嬢様の魔法の残り火の偽証をしたメイドたちを探したのですが、すでに全員が殺害されていました」
証言したメイドたちは割と古株だった。全員の顔を思い出せる。彼女たちが裏切ったと知って、かなりショックだった。
「しかし、彼女たちは保身のために、真相を書いた文書を何か所かに隠していたのです。そのうちの一通を入手しました。それによりますと、旦那様の寝室のドアを開けられないように細工したうえで放火したようです。指示したのはリチャードです」
両親は殺されたのか。リチャードへの憎しみが膨れ上がるが、少し違和感がある。こんな力任せのやり方では、普通であればすぐに発覚して潰されるはずだ。現にローズが真相に行きついている。真相を掴まれても潰されない強力なバックが存在しているということか。
「叔母様、話は分かりましたが、私に何をしろとおっしゃるのでしょうか?」
「あなたにリッチモンド家の家督を継いでもらって、リチャードたちに対抗してほしいのよ」
エカテリーナが実に難しいことをずいぶんとあっさりという。
「え? それは現当主の叔母様がやるべきでは?」
エカテリーナは首をゆっくりと横に振った。
「私は娘たちが人質になっていて、何もできないのよ」
私はアニーとテイルのことを久しぶりに思い出して、はらわたが煮えくり返った。
「私が仮に当主になったとして、私を辱めたアニーとテイルを許すとでも思っていらっしゃるのかしら」
「思っていないわ。でも、殺したりはしないでしょう?」
確かに殺すことまでは考えていなかった。腕を乱暴に掴んだセバスチャン、肘鉄を食らわせたマーク、スカートをめくったビルは死刑確定だけど。
「本来リッチモンド家の家督はあなたが継ぐはずだったのよ。私の敬愛する兄の一粒種のあなたがね。私はこの一年間、あなたのことを忘れたことはなかったわよ」
いやいやいや、それは嘘だろう。私を追放したのはエカテリーナだ。
「叔母様、この山で私のような世間知らずが生きていけるはずがございません。追放とは名ばかりの死刑執行ではないでしょうか?」
私の突っ込みに対抗したのは意外にもローズだった。
「いいえ、お嬢様、エカテリーナは私にお嬢様を密かに支援するよう依頼していました。そのため、常にお嬢様に見張りをつけて、万一のときには救助するつもりでした」
(シルバ、本当かな?)
『女が一人いつも見張っていたのは本当だ。殺意はなかった。殺してしまうと問題になるし、お前が気づいても問題になると思ったので、放置していたんだ』
「わかりました。でも、そんなに簡単に私に家督を譲れるのでしょうか?」
エカテリーナが目に力を入れて、私を見つめた。
「譲るのではなく、あなたが奪うのよ」
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