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第一章 追放
追放される
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私はエカテリーナの前にひざまずかされた。
部屋には調査員のリチャード、エカテリーナ、アニー、テイル、そして、婚約者のエドワードがいた。
(エドワード!? 私こんな汚い格好で彼の目の前に……)
「なんか臭いわよ、グレース」
アニーが鼻をつまんで手でパタパタしている。
エドワードも顔をしかめている。
私は恥ずかしくて、ひざまずいたままうつむいた。床に涙がポタポタと落ちる。
エドワードの声が聞こえて来た。
「グレース、過失とはいえ、取り返しのつかない失態だ。婚約は破棄させてもらう。リッチモンド公爵、異存はないですね?」
(リッチモンド公爵? お父様!? 生きていらしたの!)
私は父の姿を探したが、どこにもいない。
エカテリーナはゴミを見るような目つきで私をみていた。
「グレース、なにをキョロキョロしているの? 頭がおかしくなったの? エドワード王子、グレースとの婚約解消はもちろんですわ。我が娘テイルとの婚約をご所望とのこと、喜んでお受けいたします」
(エカテリーナが公爵? テイルがエドワードと婚約? いったい二週間の間に何があったの?)
「お母様、ちょっと臭いがきついので、もうグレースは外に出しませんか?」
テイルの声が耳に入ってきたが、私はもう何も考えられなくなっていた。
「グレース、兄と義姉を焼死させた罪は重いわ。でも、故意ではないし、私の敬愛する兄の娘だから、罪人とはしないでおきます。それに今日はお前の16歳の誕生日よ。精霊の儀式があるでしょう。領内のテンタクル山をお前に与えるから、儀式が済んだら、そこで暮らしなさい。もうここに帰って来てはだめよ。ローズ、連れていきなさい」
外で控えていたのであろう。ローズが入室して、私の近くまで来た。ローズの顔に殴られたあとがある。恐らく私のために戦ってくれたのだろう。ローズは私をおぶって、部屋を出て行った。
部屋を出て行くとき、エドワードとアニーとテイルの笑い声が背中から聞こえてきた。私がこんな目に遭っているのに、何がおかしいの?
廊下に出ると、使用人たちの憎しみの目が私たち二人を刺した。誰かがローズの足を引っかけたのか、ローズは私をおぶったまま転んでしまった。
(ローズ!)
使用人たちが転んだ私たちを見て、笑い声をあげている。なんだかおかしい。ここまで私は侮辱されるいわれはない。
騒ぎを聞いてエカテリーナが部屋から顔を出して叫んだ。
「お前たち、ローズに手を出したら、ただじゃ済まさないよ。早く外に出しなさいっ」
使用人たちが慌ててローズを抱き上げた。そのとき、私はわざとお腹に肘をあてられ、思わず呻いた。こ、こいつ、何てひどい奴。
「そこのお前っ! 当主への恨みはわかるけど、グレースは当主の娘よ。立場を弁えなさいっ」
使用人たちはそれ以上は私たちに手を出しては来なかったが、ああ臭い、と言われたり、ふざけてスカートをめくり上げられたり、さんざん辱められた。
屋敷の外には馬車が用意されていた。馬車の御者はローズの実家が手配したらしい。
御者が私とローズの惨状に驚いていた。
「ローズお嬢様、中にお着換えがございますので、着替えてください。グレース様もお着換えを」
私はローズに支えられ、馬車の中に入った。ローズは私の横に座り、大きなため息をついた。
「グレースお嬢様、やられました。王家の陰謀です。私の実家も牽制されて動けません。エカテリーナが馬車の手配だけ許してくれました。さあ、着替えてください。濡れたタオルも用意しましたので、お体も拭いてください」
私は差し出されたタオルで体を拭いた。少し体をなぞっただけで、タオルが茶色に染まる。こんな状態でエドワードの前に出されたのか。そして、使用人たちの前にも。なんという屈辱だ。
でも、何もできない。敵が巨大すぎる。私は完全に心が折られてしまっていた。
「お嬢様、今日はお嬢様の誕生日ですよ。精霊の儀式を郊外の教会で行ってから、テンタクル山に向かいましょう」
私は茫然として座るだけで、ローズの言葉に反応すらできなくなってしまっていた。
部屋には調査員のリチャード、エカテリーナ、アニー、テイル、そして、婚約者のエドワードがいた。
(エドワード!? 私こんな汚い格好で彼の目の前に……)
「なんか臭いわよ、グレース」
アニーが鼻をつまんで手でパタパタしている。
エドワードも顔をしかめている。
私は恥ずかしくて、ひざまずいたままうつむいた。床に涙がポタポタと落ちる。
エドワードの声が聞こえて来た。
「グレース、過失とはいえ、取り返しのつかない失態だ。婚約は破棄させてもらう。リッチモンド公爵、異存はないですね?」
(リッチモンド公爵? お父様!? 生きていらしたの!)
私は父の姿を探したが、どこにもいない。
エカテリーナはゴミを見るような目つきで私をみていた。
「グレース、なにをキョロキョロしているの? 頭がおかしくなったの? エドワード王子、グレースとの婚約解消はもちろんですわ。我が娘テイルとの婚約をご所望とのこと、喜んでお受けいたします」
(エカテリーナが公爵? テイルがエドワードと婚約? いったい二週間の間に何があったの?)
「お母様、ちょっと臭いがきついので、もうグレースは外に出しませんか?」
テイルの声が耳に入ってきたが、私はもう何も考えられなくなっていた。
「グレース、兄と義姉を焼死させた罪は重いわ。でも、故意ではないし、私の敬愛する兄の娘だから、罪人とはしないでおきます。それに今日はお前の16歳の誕生日よ。精霊の儀式があるでしょう。領内のテンタクル山をお前に与えるから、儀式が済んだら、そこで暮らしなさい。もうここに帰って来てはだめよ。ローズ、連れていきなさい」
外で控えていたのであろう。ローズが入室して、私の近くまで来た。ローズの顔に殴られたあとがある。恐らく私のために戦ってくれたのだろう。ローズは私をおぶって、部屋を出て行った。
部屋を出て行くとき、エドワードとアニーとテイルの笑い声が背中から聞こえてきた。私がこんな目に遭っているのに、何がおかしいの?
廊下に出ると、使用人たちの憎しみの目が私たち二人を刺した。誰かがローズの足を引っかけたのか、ローズは私をおぶったまま転んでしまった。
(ローズ!)
使用人たちが転んだ私たちを見て、笑い声をあげている。なんだかおかしい。ここまで私は侮辱されるいわれはない。
騒ぎを聞いてエカテリーナが部屋から顔を出して叫んだ。
「お前たち、ローズに手を出したら、ただじゃ済まさないよ。早く外に出しなさいっ」
使用人たちが慌ててローズを抱き上げた。そのとき、私はわざとお腹に肘をあてられ、思わず呻いた。こ、こいつ、何てひどい奴。
「そこのお前っ! 当主への恨みはわかるけど、グレースは当主の娘よ。立場を弁えなさいっ」
使用人たちはそれ以上は私たちに手を出しては来なかったが、ああ臭い、と言われたり、ふざけてスカートをめくり上げられたり、さんざん辱められた。
屋敷の外には馬車が用意されていた。馬車の御者はローズの実家が手配したらしい。
御者が私とローズの惨状に驚いていた。
「ローズお嬢様、中にお着換えがございますので、着替えてください。グレース様もお着換えを」
私はローズに支えられ、馬車の中に入った。ローズは私の横に座り、大きなため息をついた。
「グレースお嬢様、やられました。王家の陰謀です。私の実家も牽制されて動けません。エカテリーナが馬車の手配だけ許してくれました。さあ、着替えてください。濡れたタオルも用意しましたので、お体も拭いてください」
私は差し出されたタオルで体を拭いた。少し体をなぞっただけで、タオルが茶色に染まる。こんな状態でエドワードの前に出されたのか。そして、使用人たちの前にも。なんという屈辱だ。
でも、何もできない。敵が巨大すぎる。私は完全に心が折られてしまっていた。
「お嬢様、今日はお嬢様の誕生日ですよ。精霊の儀式を郊外の教会で行ってから、テンタクル山に向かいましょう」
私は茫然として座るだけで、ローズの言葉に反応すらできなくなってしまっていた。
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