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第五章 終局

譲位と処罰

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レオン・カイザー二世はアレンの母の不義密通の罪は冤罪だったとし、死後ではあるが、アレンの母を復位させた。

そして、リチャードを廃太子し、アレンを立太子させた後、王位をアレンに譲位した。

「アレン君、エルグランドの王位は要らないんじゃない?」

久々に王都に帰って戴冠式の準備をしている俺にルナが話しかけてきた。

「いったんはこういう形にしないと、貴族たちが騒ぐからな」

「別に騒いでもいいじゃない。というか、騒いだ方が面白くない?」

「戦争よりも技術開発でしのぎを削る方が面白いぞ」

「まあ、確かにね。早くクーラー作ってくれないかな、暑くてたまらないよ」

ルナがシャツをバサバサして、涼んでいるのだが、オッパイ見えてるんですけど!

「いや、俺、クーラーの仕組みよく知らないんだ」

「インターネットってスキル作れないかなあ」

ルナが美しい眉をひそめて真剣に考えている。

「それ出来たら最強だな。理論的には出来るのか?」

「そうね。スキルではないけど、地球の人間に憑依した神と連絡して、調べてもらうって方法で出来るわね」

「そんな神がいるのか?」

「いるわよ。でも、コンタクト役はお母様では無理ね。異世界へのアクセスは出来ないわ。あと、アクセス出来たとしても、そんな簡単に大量の情報を覚えられなわよ。そうか、ムネモシュネに頼めば大丈夫か」

ムネモシュネは確か記憶の女神だったか。

「蒸気機関は何とかなりそうだし、電気も大丈夫そうだ。冷蔵庫とクーラーの仕組みと醤油の作り方を教えて欲しい」

俺は日本の記憶の比重が大きくて、日本食が食べたくて仕方ないのだ。

「分かったわ。お母様に天界に行ってもらって、ムネモシュネを呼んで来てもらいましょう」

でも、言葉だけで図がなくて、ちゃんとわかるかな? いずれにしろ、戴冠式が終わってからだ。

「さて、戴冠式に行ってくる」

戴冠式は無事終わるかと思いきや、何とリチャード本人が乱入してくるというハプニングがあった。心身衰弱してしまって、冷静な思考能力をなくしてしまっていたようだ。

ここまで来るとさすがに哀れだが、こいつは殺しておかないとろくなことにならない。兵士に命じてその場で斬首とした。次の人生でやり直してくれ。

息子の死を前にして、式に参列していたセレナ妃が取り乱して泣き喚いていたが、この女も悪どいことを相当しでかして、多くの人を不幸にして来た。謀反人の一族として、サーシャに引き渡して、一生罪滅ぼししてもらおう。

ちなみにスティーブだが、自殺を命じた。自殺したときに着ていた衣服を15歳になる娘に渡してやると言ったら、それはやめてくれ、と懇願された。スティーブが15歳の俺にしたことをやり返すだけじゃないか。母さんにどうしようか、と確認したら、やめてあげてと言われた。

俺はこのスティーブだけは、母さんを穢した張本人なので、どうしても許せない。娘に衣服を渡すと伝えたまま自殺させた。

人は転生するので、悪い魂になってしまっている人生は早く終わらせた方が、本人にも世の中のためにもいいのだ。そう考えて、俺は悪い奴はさっさと殺すことにしている。

ルナがすぐに人を殺そうとするのは慈悲だと本人は言っているが、面倒だから殺す、というのは慈悲ではない気がする。

最後に残った前王の父だが、母さんが許してやってくれと何度も頼んでくるのだ。全ては父の無慈悲な所行が発端なので、何らかの罰は与えるべきなのだが。

殺すよりは生かした方が罰になるか。

そう思って、何もしないことにした。

なお、ダレン公爵とライデン伯爵は爵位を剥奪して、平民に落とした。
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