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第二章 就職

養蚕無双

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俺の脳は今世と1つ前の前世で60%ぐらいの使用状況らしい。80%までは問題ないとのことなので、養蚕業のノウハウだけであれば全然大丈夫とのことだった。

それでもまだ少し空きがあるので、護身のために拳法の達人だったころのノウハウも思い出しておこうということになった。

俺は自分ではかなり武術ができると思っていたのだが、ルナからすれば、拳法の達人だったときの俺とは雲泥の差があるらしい。

記憶を呼び出すにはキーワードがあり、それを脳の特定部分に刺激を与えながら刷り込むことで、蘇るらしい。ということで、母さんでもできるそうなのだ。

今回のキーワードは「養蚕」と「拳法」だ。

母さんがルナからレクチャーを受けたらしいが、少し緊張した雰囲気が伝わってくる。何だかこっちも心配になってしまうが、上手くいったようだ。

なぜなら、頭がとてつもなく痛く、思いっきり気持ち悪いからだ。

「母さん、ありがとう。ルナにも礼言っといてね。俺はこのまま寝るから」

あー、気持ち悪い……。

翌日から俺の養蚕無双が始まった。

蚕の餌となる桑畑をまずは視察し、肥料のやり方、水のやり方のヒアリングを行い、いくつか改善ポイントを指示した。また、桑の葉の収穫が早く効率的にできる道具の作り方と使い方を教えた。

蚕が生まれてから繭を作るまでの餌のやり方、育て方もヒアリングを行い、問題点を指摘した。

繭を作る場所の作り方や繭からの製糸工程も改善策を提示した。

後は指摘した内容を各々が正しく実践できるまで、丁寧に根気よく繰り返し教えて、きっちりと浸透させることが重要だ。

それなりに時間はかかるが、確実に生産量は上がっていくはずだ。

ところで、そろそろ警戒しないといけないのが、兄貴たちだ。王都にいる家族を人質にして、島民に脅しをかけ、俺に対して、不都合なことを起こさせようと画策しているというのが、母さんの前回の報告だった。

(母さん、脅しをかけようとしている住民わかった?)

「それがね、イーサンみたいなの」

(え? でも町長はニ世って言ってたので、家族は王都にはいないのでは?)

「彼の奥さんが狙いなのよ。彼女はわりと最近護送されて来た囚人で、小さな弟が王都に住んでいるのよ」

今ならまだルナの部下が王都にいるので、対抗出来るかもしれない。

(ルナの王都にいる諜報員に対策をお願い出来るかな)

「聞いてみるわ」

(ターゲットは1人だけ?)

「あと4人いるけど、誰なのか分からないのよ」

(来歴簿を調べるから名前を教えてくれる?)

来歴簿というのは、ここに来た理由が記載された帳簿で、誰でも自由に閲覧が可能だ。

レオン・コーナン
サイラス・レイン
レベッカ・キルリス
シンジ・ルーベース

をまずは来歴簿で調べてみよう。
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