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第十一章 エルフの国
エルフ王
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「サビーヌが無条件降伏したのか」
エルフ王のサージは、マルクスからの報告に驚きを隠せなかった。サビーヌからの要請に従い、援軍を送る手筈を整えたばかりだったのだ。援軍は不要だという。
エルフの大陸は北方にダークエルフの国、南方にエルフの国があり、エルフの国は北、南、西、東、中央の五つの区画から構成されていた。
中央区画の王がエルフ族全体の長であり、エルフ王を名乗っているが、それぞれの区画はそれぞれの王が統治しており、五つの国があるに等しい。だが、ダークエルフに対抗して、五カ国は軍事同盟を結んでいて、有事の際には中央区画が全区画を指揮する取り決めとなっていた。
「はい、人間どもから提示された屈辱的な条件をあっさりと受け入れました。サビーヌ様は売国奴ですぞ」
「言葉を慎め、マルクス」
サージはマルクスをたしなめた。だが、マルクスのように思うものは多くなると思われる。年一回の区画長会議は終わったばかりだ。臨時会議を招集せねばなるまい。
サビーヌが送り込んできた東区画情報部長のリンクから、人間が東海岸に上陸し、村を占領し始めたと報告を受けたのは一週間前だ。たった一週間で降伏だ。しかも、無条件での降伏だ。
全面交戦したわけでもなく、国土を蹂躙されたわけでもなく、大量の戦死者を出したわけでもない。いったい何があったのか。あの頭脳明晰で合理性の権化のようなサビーヌが下した判断だ。それ相応の理由があるはずだ。
「相手の戦力は本当に二十人で間違いないのか?」
「間違いないです。サビリンとの国境に詰めている兵は二十名です。雷と風を操る妖術を使います」
「妖術か。でも、たった二十だぞ」
「そうです。五千の兵で殲滅する予定でしたが、妖術を警戒して全軍退却して無条件降伏しました。ただ、これはいったん二十名を取り込んでから暗殺するための作戦だと聞いてました」
「それが人間の使者から提示された条件を本当にのんでいるということか。暗殺するまで、従順なふりをしているだけではないのか」
「そうかもしれませんが、エルフの女性を人間に献上するなど我慢できませぬ」
「それはお前よりもサビーヌの方が我慢できないはずだ。やはり直接話を聞いた方がいいな。臨時の区画長会議を開きたい。各区画長を招集しろ。もちろんサビーヌもだ。占領されているわけではなく、独立を保証されているのだ。呼べば来るだろう」
「かしこまりました」
「それと使者が使ったという同胞をチリにしたという力については、最優先で解明するよう軍部に言っておいてくれ」
「はい、手配済です。ところで、王様、ダークエルフはどうしましょうか」
「肌の色が違うとはいえ、同じエルフだ。人間という共通の敵を前にすれば共同戦線をはれると思うのだが、マルクス、お前の意見はどうだ?」
「王様と同じ考えですが、もう人間側についているやもしれません。まずは使者を出すべきかと」
「まあ、そうだな。使者を手配しろ。区画長会議への参加を要請してくれ」
「了解しました。すぐに動きます」
エルフ王のサージは、マルクスからの報告に驚きを隠せなかった。サビーヌからの要請に従い、援軍を送る手筈を整えたばかりだったのだ。援軍は不要だという。
エルフの大陸は北方にダークエルフの国、南方にエルフの国があり、エルフの国は北、南、西、東、中央の五つの区画から構成されていた。
中央区画の王がエルフ族全体の長であり、エルフ王を名乗っているが、それぞれの区画はそれぞれの王が統治しており、五つの国があるに等しい。だが、ダークエルフに対抗して、五カ国は軍事同盟を結んでいて、有事の際には中央区画が全区画を指揮する取り決めとなっていた。
「はい、人間どもから提示された屈辱的な条件をあっさりと受け入れました。サビーヌ様は売国奴ですぞ」
「言葉を慎め、マルクス」
サージはマルクスをたしなめた。だが、マルクスのように思うものは多くなると思われる。年一回の区画長会議は終わったばかりだ。臨時会議を招集せねばなるまい。
サビーヌが送り込んできた東区画情報部長のリンクから、人間が東海岸に上陸し、村を占領し始めたと報告を受けたのは一週間前だ。たった一週間で降伏だ。しかも、無条件での降伏だ。
全面交戦したわけでもなく、国土を蹂躙されたわけでもなく、大量の戦死者を出したわけでもない。いったい何があったのか。あの頭脳明晰で合理性の権化のようなサビーヌが下した判断だ。それ相応の理由があるはずだ。
「相手の戦力は本当に二十人で間違いないのか?」
「間違いないです。サビリンとの国境に詰めている兵は二十名です。雷と風を操る妖術を使います」
「妖術か。でも、たった二十だぞ」
「そうです。五千の兵で殲滅する予定でしたが、妖術を警戒して全軍退却して無条件降伏しました。ただ、これはいったん二十名を取り込んでから暗殺するための作戦だと聞いてました」
「それが人間の使者から提示された条件を本当にのんでいるということか。暗殺するまで、従順なふりをしているだけではないのか」
「そうかもしれませんが、エルフの女性を人間に献上するなど我慢できませぬ」
「それはお前よりもサビーヌの方が我慢できないはずだ。やはり直接話を聞いた方がいいな。臨時の区画長会議を開きたい。各区画長を招集しろ。もちろんサビーヌもだ。占領されているわけではなく、独立を保証されているのだ。呼べば来るだろう」
「かしこまりました」
「それと使者が使ったという同胞をチリにしたという力については、最優先で解明するよう軍部に言っておいてくれ」
「はい、手配済です。ところで、王様、ダークエルフはどうしましょうか」
「肌の色が違うとはいえ、同じエルフだ。人間という共通の敵を前にすれば共同戦線をはれると思うのだが、マルクス、お前の意見はどうだ?」
「王様と同じ考えですが、もう人間側についているやもしれません。まずは使者を出すべきかと」
「まあ、そうだな。使者を手配しろ。区画長会議への参加を要請してくれ」
「了解しました。すぐに動きます」
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