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第十一章 エルフの国
使者
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「貴殿たちの目的が侵略と略奪ということであれば、黙って好きにはさせない。徹底抗戦する」
使者の女の一人が憤まんやるかたないといった感じだ。そりゃあそうだろう。勝手にやって来て、宣戦布告もなく、いきなり攻撃して、略奪を始めているのだから。どこの野蛮人だよ、本当に。
「どうぞ。徹底抗戦して下さい。次は女王区画に進軍します」
使者が絶句している。エルフの女ってのは、揃いも揃って全員が整った顔をしているが、色気がない。使者二人も美人なのだが、胸ぺったんで痩せっぽっちだ。
「き、貴殿たちの目的は何なのだ?」
「エルフの皆さんの解放ですよ」
「すまない。言っていることがさっぱり分からない」
エルフとは言葉が通じないので、霊話で「てれぱしい」とかいう方法で会話をしている。エルフの大陸に来る前に、クロから教わった。霊話なのに分からないというのはおかしな話だ。
「今のエルフの文明はつまらないから、ぶち壊してあげるのですよ。我らの主がそうしろと言うのですから、正しいことをしていると思ってます。我々がしていることは、あなた方から家と食糧を奪うことです。あなた方の命は大切にしています」
クロは好きにしろと言っていたが、そんなことをしたら塵にされてしまう。男はクロから朝晩聞かされ、復唱しているクロの軍団の目的に沿った説明を行った。クロは最初から男を使者に当てるつもりで男に接触したに違いない。
「我々の文明がつまらないなどと勝手に決めるな」
「ええ、我々人間の主観です。でも、そう思うのだから仕方ないでしょう。どうです? お食事を一緒にいかがでしょうか。我々の食を紹介します。まずいと思うのもよし、美味いと思うのもよしです。主観で決めて下さい」
男はおにぎりをいくつかテーブルに置いた。
「それは何だ?」
「これは『おにぎり』というものです。米という穀物を炊いて作るのです。携帯しやすく、食べやすく、エネルギーになりやすいので、軍ではよく作ります。おひとつどうぞ」
おにぎりでも食べて、この女たちは少し太った方がいい。もうちょっとムチムチしてくれないと困るんだと男は思った。何が困るのかよく分からないが。
使者が二人でごくりと唾を飲み込んでいる。興味はあり、腹も空いているようだが、決断出来ないようだ。まるで野良猫が差し出した餌に躊躇しているようだ。何だか可愛らしいと男は思った。
「我々は一人も殺していません。全員を地上に下ろして、木の上に登って来られないようにしているだけです。使者殿も丁重におもてなししますよ」
確かにその通りだと女エルフは思った。人間たちはエルフを家から追い出して略奪してはいるが、誰も傷つけていない。情けないことに、家をなくしたエルフの一部が暴徒化して、女を襲ったりしていて、同族同士で傷つけ合う馬鹿げた事件が発生している。
「では、おひとつ頂きます」
先ほどから話を聞くだけだったもう一人の女エルフの方が、おにぎりを一つ手に取って、男を真似て、一口口にした。彼女の目が輝いた。
「あまい! 暖かくて甘くて弾力があって、少し塩気があって、とても美味しいわ」
もう一人の女エルフも、我慢出来なくなったのか、おにぎりにかぶりついた。
「お、おいしい! 甘くて暖かくて、なんておいしいの!」
「おにぎりが甘いだなんて。じゃあ、ちょっと待ってて下さいよ。さっき焼き芋を作っておいたんですよ。こっちはもっと甘いですよ」
男はそう言いながら、落ち葉の焚き火の中から、布に包まれたサツマイモを持ってきた。そして、おにぎりを既に二つ食べ終わった使者に渡した。
「これもおいしいわ! すごく甘くて、なんておいしいの。果物ではないわね」
「さつまいもですよ。こういう美味しいものを地面に植えて、たくさん生産することが出来るんです。そういうのを農業というのですが、我々は農業をしに来たのです。それで、エルフの皆さんにも無理矢理手伝ってもらおうと、木の上から地上に下ろしているんです」
こんなに美味いものを出されては、少なくとも食事に関しては、エルフの文明は面白くないと言われても仕方ない、と女エルフたちは思った。
「ご馳走になった。お前たちの発言内容は女王に伝える」
「明日には攻めますので、よろしくお伝えください」
攻めるのによろしくってのも変だな、男はそう思った。
使者の女の一人が憤まんやるかたないといった感じだ。そりゃあそうだろう。勝手にやって来て、宣戦布告もなく、いきなり攻撃して、略奪を始めているのだから。どこの野蛮人だよ、本当に。
「どうぞ。徹底抗戦して下さい。次は女王区画に進軍します」
使者が絶句している。エルフの女ってのは、揃いも揃って全員が整った顔をしているが、色気がない。使者二人も美人なのだが、胸ぺったんで痩せっぽっちだ。
「き、貴殿たちの目的は何なのだ?」
「エルフの皆さんの解放ですよ」
「すまない。言っていることがさっぱり分からない」
エルフとは言葉が通じないので、霊話で「てれぱしい」とかいう方法で会話をしている。エルフの大陸に来る前に、クロから教わった。霊話なのに分からないというのはおかしな話だ。
「今のエルフの文明はつまらないから、ぶち壊してあげるのですよ。我らの主がそうしろと言うのですから、正しいことをしていると思ってます。我々がしていることは、あなた方から家と食糧を奪うことです。あなた方の命は大切にしています」
クロは好きにしろと言っていたが、そんなことをしたら塵にされてしまう。男はクロから朝晩聞かされ、復唱しているクロの軍団の目的に沿った説明を行った。クロは最初から男を使者に当てるつもりで男に接触したに違いない。
「我々の文明がつまらないなどと勝手に決めるな」
「ええ、我々人間の主観です。でも、そう思うのだから仕方ないでしょう。どうです? お食事を一緒にいかがでしょうか。我々の食を紹介します。まずいと思うのもよし、美味いと思うのもよしです。主観で決めて下さい」
男はおにぎりをいくつかテーブルに置いた。
「それは何だ?」
「これは『おにぎり』というものです。米という穀物を炊いて作るのです。携帯しやすく、食べやすく、エネルギーになりやすいので、軍ではよく作ります。おひとつどうぞ」
おにぎりでも食べて、この女たちは少し太った方がいい。もうちょっとムチムチしてくれないと困るんだと男は思った。何が困るのかよく分からないが。
使者が二人でごくりと唾を飲み込んでいる。興味はあり、腹も空いているようだが、決断出来ないようだ。まるで野良猫が差し出した餌に躊躇しているようだ。何だか可愛らしいと男は思った。
「我々は一人も殺していません。全員を地上に下ろして、木の上に登って来られないようにしているだけです。使者殿も丁重におもてなししますよ」
確かにその通りだと女エルフは思った。人間たちはエルフを家から追い出して略奪してはいるが、誰も傷つけていない。情けないことに、家をなくしたエルフの一部が暴徒化して、女を襲ったりしていて、同族同士で傷つけ合う馬鹿げた事件が発生している。
「では、おひとつ頂きます」
先ほどから話を聞くだけだったもう一人の女エルフの方が、おにぎりを一つ手に取って、男を真似て、一口口にした。彼女の目が輝いた。
「あまい! 暖かくて甘くて弾力があって、少し塩気があって、とても美味しいわ」
もう一人の女エルフも、我慢出来なくなったのか、おにぎりにかぶりついた。
「お、おいしい! 甘くて暖かくて、なんておいしいの!」
「おにぎりが甘いだなんて。じゃあ、ちょっと待ってて下さいよ。さっき焼き芋を作っておいたんですよ。こっちはもっと甘いですよ」
男はそう言いながら、落ち葉の焚き火の中から、布に包まれたサツマイモを持ってきた。そして、おにぎりを既に二つ食べ終わった使者に渡した。
「これもおいしいわ! すごく甘くて、なんておいしいの。果物ではないわね」
「さつまいもですよ。こういう美味しいものを地面に植えて、たくさん生産することが出来るんです。そういうのを農業というのですが、我々は農業をしに来たのです。それで、エルフの皆さんにも無理矢理手伝ってもらおうと、木の上から地上に下ろしているんです」
こんなに美味いものを出されては、少なくとも食事に関しては、エルフの文明は面白くないと言われても仕方ない、と女エルフたちは思った。
「ご馳走になった。お前たちの発言内容は女王に伝える」
「明日には攻めますので、よろしくお伝えください」
攻めるのによろしくってのも変だな、男はそう思った。
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