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第十一章 エルフの国
上陸
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エルフの住む大陸は森林が95パーセント以上を占める。大地を覆う木々は、樹齢数千年の大木から、若く小さな木まで様々だ。
エルフは住居を木の上に造る。大木を独占する豪邸に住むものは、力を持っているという証だ。
トマの森で一番大きな木に居を構えるのは、大陸の東側一帯を統治する区画女王のサビーヌだ。
サビーヌは樹上にあるいくつかの部屋の一つを執務室としており、そこで情報部長からの報告を受けていた。
「東の海岸に上陸した不審者は二十名です。海岸から少し森に入ったところの地面に奇妙な住居を造っています。全員が同じ服装をしており、統制がとれています。軍隊のような動きです」
情報部長のリンクは眼鏡を外して報告書を見ている。もう五百歳になり、そろそろ老眼が始まっているのだろう。
「容姿は我々と似ていますが、髪の色や目の色が様々で、耳が全員非常に短いです」
そう言って、リンクはサビーヌに報告書に描かれている絵を見せた。
「ふむ。おかしな服装だが、顔は確かに我々に似ているな。女と男がいるのか?」
「確信はないですが、男だけのようです。いかがいたしましょうか」
「まずは接触してみるしかあるまい。念話はできそうか?」
「分かりません。やってみます」
リンクは後ろに控えていたニ名の女性情報部員に目で合図を送った。女性二人がうなずいて、執務室を出ていった。
二人が退出した後、サビーヌは疑問に思っていたことを口にした。
「さっきの報告だが、地面に住居を作るとは、魔物が怖くはないのか?」
「それが、奇妙な能力があり、アタックウルフの群れをあっという間に全滅させたらしいです」
「どういう能力だ?」
「報告を聞く限り、神々の使う奇跡に似ていると思われます」
「なんだと!? では、不審者は神々だというのか?」
「いいえ、神々ほど絶対的ではないです」
「そうか、お前は神々の闘いを実際に見ているのだったな」
「はい、我らエルフの創造主たるシルフィーヌ様とライゼン様が闘うお姿をこの目で見ました。無念にもあの耳の短い狂気の邪神に敗れてしまいましたが」
「ひょっとして、四百年前のあの邪神が復活したのではないか? そして、使徒を送り込んで来たのでは?」
「確かに不審者たちの容姿の特徴は、邪神によく似ております。邪神ほど美しくはありませんが」
リンクは幼少時に見た美しい女性の姿をした邪神を思い出していた。四百年も前のことだが、シルフィーヌ様を凌ぐ美しさとライゼン様を歯牙にも掛けない圧倒的な暴力を今でも鮮明に思い出すことが出来る。恐怖と憧憬とが混じった強烈な印象が記憶に刷り込まれていた。
「使徒だとすると、目的は碌でも無いな」
「はい、侵略と略奪だと思います」
「いずれにせよ、まずは接触しないことには進まないが、念のため、軍を待機させておけ。それと、エルフ王様にも報告を入れておけ」
「かしこまりました」
報告を一通り終えたリンクが部屋を出ようとしたとき、報告官が慌てて木を登ってきた。
リンクが報告官に声をかけた。この慌てようは、嫌な予感しかしない。
「どうした」
「不審者がエレン村に攻撃を仕掛けて来ました。村は壊滅し、略奪されていますっ」
リンクはにわかには信じられなかった。エレン村は二百人ほどだが、半分は猟師で、弓が使えるはずだ。たかが二十人相手にそんなに簡単に壊滅するとは思えない。
執務室にも報告は聞こえたようで、リンクの耳にサビーヌから新たな指令が入って来た。
「リンク、すぐに軍隊を出動させろ、エルフ王様にも報告ではなく、応援を送るよう要請してくれ」
「か、かしこまりました」
リンクは報告官と一緒に軍本部に向かった。
エルフは住居を木の上に造る。大木を独占する豪邸に住むものは、力を持っているという証だ。
トマの森で一番大きな木に居を構えるのは、大陸の東側一帯を統治する区画女王のサビーヌだ。
サビーヌは樹上にあるいくつかの部屋の一つを執務室としており、そこで情報部長からの報告を受けていた。
「東の海岸に上陸した不審者は二十名です。海岸から少し森に入ったところの地面に奇妙な住居を造っています。全員が同じ服装をしており、統制がとれています。軍隊のような動きです」
情報部長のリンクは眼鏡を外して報告書を見ている。もう五百歳になり、そろそろ老眼が始まっているのだろう。
「容姿は我々と似ていますが、髪の色や目の色が様々で、耳が全員非常に短いです」
そう言って、リンクはサビーヌに報告書に描かれている絵を見せた。
「ふむ。おかしな服装だが、顔は確かに我々に似ているな。女と男がいるのか?」
「確信はないですが、男だけのようです。いかがいたしましょうか」
「まずは接触してみるしかあるまい。念話はできそうか?」
「分かりません。やってみます」
リンクは後ろに控えていたニ名の女性情報部員に目で合図を送った。女性二人がうなずいて、執務室を出ていった。
二人が退出した後、サビーヌは疑問に思っていたことを口にした。
「さっきの報告だが、地面に住居を作るとは、魔物が怖くはないのか?」
「それが、奇妙な能力があり、アタックウルフの群れをあっという間に全滅させたらしいです」
「どういう能力だ?」
「報告を聞く限り、神々の使う奇跡に似ていると思われます」
「なんだと!? では、不審者は神々だというのか?」
「いいえ、神々ほど絶対的ではないです」
「そうか、お前は神々の闘いを実際に見ているのだったな」
「はい、我らエルフの創造主たるシルフィーヌ様とライゼン様が闘うお姿をこの目で見ました。無念にもあの耳の短い狂気の邪神に敗れてしまいましたが」
「ひょっとして、四百年前のあの邪神が復活したのではないか? そして、使徒を送り込んで来たのでは?」
「確かに不審者たちの容姿の特徴は、邪神によく似ております。邪神ほど美しくはありませんが」
リンクは幼少時に見た美しい女性の姿をした邪神を思い出していた。四百年も前のことだが、シルフィーヌ様を凌ぐ美しさとライゼン様を歯牙にも掛けない圧倒的な暴力を今でも鮮明に思い出すことが出来る。恐怖と憧憬とが混じった強烈な印象が記憶に刷り込まれていた。
「使徒だとすると、目的は碌でも無いな」
「はい、侵略と略奪だと思います」
「いずれにせよ、まずは接触しないことには進まないが、念のため、軍を待機させておけ。それと、エルフ王様にも報告を入れておけ」
「かしこまりました」
報告を一通り終えたリンクが部屋を出ようとしたとき、報告官が慌てて木を登ってきた。
リンクが報告官に声をかけた。この慌てようは、嫌な予感しかしない。
「どうした」
「不審者がエレン村に攻撃を仕掛けて来ました。村は壊滅し、略奪されていますっ」
リンクはにわかには信じられなかった。エレン村は二百人ほどだが、半分は猟師で、弓が使えるはずだ。たかが二十人相手にそんなに簡単に壊滅するとは思えない。
執務室にも報告は聞こえたようで、リンクの耳にサビーヌから新たな指令が入って来た。
「リンク、すぐに軍隊を出動させろ、エルフ王様にも報告ではなく、応援を送るよう要請してくれ」
「か、かしこまりました」
リンクは報告官と一緒に軍本部に向かった。
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