見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第十章 強者の育成

ダンジョン

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 戦闘リーグは王国が「ゆうき神国」に改名した後も、国民に大人気であった。毎週水曜日と土曜日に開かれる王都のコロシアムでのリーグ戦はいつも満席で、よほどのコネがないとチケットを入手出来ないほどの加熱ぶりだ。

 だが、それは一般リーグの話であって、メルサとゲンムが所属するジュニアリーグは、同年代ではそれなりに人気があるが、世間一般からの関心はそんなに高くはなかった。

 そんななか、戦闘リーグを運営する神国は、一般、ジュニアの境界をなくし、誰もが参加できるオープンリーグに統合させた。種族、出身地も問わないため、本当に誰もが参加可能となった。

 オープンリーグ最初の戦闘が、ギラン島でのダンジョン戦だ。ルールは単純で、何をしてもよい。地下十階のラスボスを攻略したチームが優勝で、二位以下はダンジョン内で取得できる「魂ポイント」と呼ばれるポイントの多い順に順位が決まる。

 すでに開幕から三日が経過しており、現在、四人一組の戦闘チーム二十組が、ダンジョンを攻略中だった。ダンジョンには無数の魔水晶が設置されており、コロシアムに設置された巨大な白壁スクリーンに戦闘の様子が映し出される。集まった観客たちは大興奮だ。

 スクリーンにはメルサがアップで映し出されていた。公爵令嬢でありながら戦闘リーグに参加している変わり種だが、気品が高く美しいため、人気急上昇中だ。

「ミサ様、ゆうくん、前衛をお願いします。ゲンム、大技行くから牽制して」

 メルサは司令塔であり、火力担当でもあった。ミサが無言で前衛に出る。ゆうがおちゃらけたステップで後につづいた。

 メルサ、ゲンム、ミサ、ゆうの四人は、地下六階のフロアボスである「リッチー一家」と戦闘を開始するところだった。敵はパパリッチー、ママリッチー、アネリッチー、ボクリッチーの四体だ。

 パパとボクがボロボロになって前衛を務めている間に、ママとアネが後方から強力な魔法を打ち放って来る。昨夜、元一般ランカー一位組と三位組からなる優勝候補No.1チームの「さざなみ」が、このリッチー一家に敗れるという大波乱があった。メルサたちのチーム「くろーばー」は「さざなみ」の離脱で、現在トップを走っていた。

 パパリッチーが背中を丸めて、よぼよぼした足取りで前衛の位置取りをする。ボクリッチーがうつむき加減にゆっくりと前進し、パパリッチーの右隣に位置取りした。魔法合戦の始まりだ。観客はかたずをのんで見守っている。

「ぎゃらくてぃっくさんだあ」

 ママリッチーがガラスに爪を立てたような声で魔法を唱えた。観客はぞわわっとした。

 数十本の稲妻が轟音とともにママリッチーの頭上に発生し、メルサたちに襲い掛かる。そのうちの数本が味方のパパリッチーに当たり、体がビクンビクンとなっているが、ママリッチーは気に留めない。

「ゆう、食べちゃって」

 ミサに言われるまでもなく、ゆうは両手を上げていた。すべての稲妻がゆうの両手に吸い込まれていく。ゆうはゆうきが憑依しているホムンクルスだ。権能が大幅に制限されているとはいえ、カミナリ様のゆうきにとって、雷魔法はお手の物だ。

 渾身の雷魔法があっという間に無効化され、ママリッチーはたじろいでいるようだった。しかし、すぐにアネリッチーが母親そっくりの声で魔法を唱える。

「ぎゃらくてぃっくなぱーむ」

 リッチー一家は魔法に「ぎゃらくてぃっく」をつけたがるらしい。だが、アネリッチーが生成した数十個の火の球が放たれることはなかった。ミサトが憑依しているミサから放出された強力な風の力で、魔法もアネリッチーも後方の壁まで飛ばされてしまったのだ。

 ゲンムが剣を構えながら、リッチーたちにとびかかる。雷魔法はゆうが吸収し、それ以外の魔法はすべてミサが吹き飛ばしてしまう。リッチー一家は大混乱に陥っていた。

「ホーリーライト」

 数分後、メルサの魔法構築が完成し、聖魔法の奥義「ホーリーライト」が放たれた。魔法はパパリッチーとボクリッチー二体と戦闘中のゲンムにも直撃するが、アンデッド以外はこの魔法の影響は受けない。

 ボクリッチー、パパリッチーが「おぉぉぉ」とうめきながら消滅していく。その後、ホーリーライトはママリッチーとアネリッチーも包み込んでいく。二体は「いやああーん」という意外とセクシーな叫び声をあげながら、続いて天に召されていった。

 フロアボスを倒した魂ポイントの1万点がメルサたちに配分された。この魂ポイントは、身体の各種ステータスを引き上げる力を持っている。強いものはより強くなっていくのだ。

「進みます」

 メルサたちは地下七階へと降りて行った。

 圧倒的な強さに、観客からの大声援が送られるなか、何事もなかったかのように、リッチー一家が復活した。ママリッチーが敗戦の責任をパパリッチーに押し付け、アネリッチーと二体でパパリッチーを叱咤する姿が画面に映し出されていた。
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