見知らぬ美女と一緒に異世界召喚され、お互い幽霊になりました。勇者たちよりも強い最強な俺たちですが、俺は彼女とラブコメしたいです

もぐすけ

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第八章 神の統治

神界

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 さっきの部屋に戻ると、狐面の三人の女はいるが、エリコがいない。

「ねえ、エリコはどうしたの」

 狐面の一人が答えた。

「カミナリ様の元に送り届けました。カザナミ様を神界にご案内致します」

「先に用を済ませってこと?」

 別の狐面が答えた。

「サルヒコ様より永久ビザをお預かりしております。イザナギ様のご用件をお済ませいただければお渡しします」

「なるほど、悪くないわね」

 永久ビザを手に入れれば、古代寺の五重塔からいつでも好きなところに転移できるようになる。

「エリコにはどう話したの?」

 最後の狐面が答えた。

「カザナミ様は急用ができたゆえ、カミナリ様に庇護してもらうようにと。戻る戻らないも自由だと」

 ゆうきはエリコのことも気に入っている。今はまだ記憶が戻っていないからいいが、記憶が戻ったら、手当たり次第に手をつけまくる危険性がある。私の術が効いているうちはいいけど、いつかは破るに違いない。用は早めに済ませておくか。

「分かったわ。あなたたちが身代わりになってくれるのね」

「はい。それでは参ります。こちらにお座りになってください」

 神界への転移は神門の許可が必要だが、私は顔パスだ。そのため、神界にはいつでも行けるのだが、神界への転移は神霊でも酷い転移酔いになる。この娘たちが、転移酔いの身代わりを務めてくれるのだ。

 私は三人の娘に囲まれた。周りの景色が回転し始めた。他者の力で転移するときの現象だ。私は目を瞑った。

***

「おお、カザナミ、待っておったぞ。こっちに参れ。お前はいつ見ても可愛いの」

 う、パパのところに直接転移したのね。目を開けると狐面の娘三人が倒れていた。神の身でも相当キツイ転移酔いだ。いくら三人で分担したとしても、人間では死んでしまう。彼女たちの姿がだんだんと消えて行く。どこかの世界に転生するのだ。転生先は交渉済みなのだろう。

「お父様、お久しぶりでございます」

「おお、はようこっちに参れ。元気そうで何よりじゃ」

 私は父の横に座らされた。父に会うのも父の神殿に来るのもずいぶんと久しぶりだ。

「イザナギからの伝言を持って参りました」

「もう聞いておる。人間を粛正するそうじゃな。もっと別の手があると思うのだが、あいつがそう判断したらそれでいい。お前に伝言とは名ばかりじゃ。わしに最愛の娘に会わせる機会を作ってくれたのじゃよ」

 何だ、そういうことだったのか。上司へのゴマすりの道具として使われたか。まあいいか。

「お父様、では、伝言は不要ですわね」

「おお、そんな話はどうでもよい。それよりもお前の話をしてくれ。いつ神界こっちに帰って来るのじゃ?」

「百年に一度は帰ってきます。今回はお父様からの罰でしたので、間が開きました」

 神祖の眉が下がった。

「仕方なかったのじゃ。お前、手加減なさすぎだろう。あんなに魂を削るまでぶちのめしたら、神でなくなってしまうぞ。あやつらは完全復活まであと五百年はかかるぞ。いくら最愛の娘といえども、罰しなければ周りに示しがつかんじゃろう」

 四百数十年前、私は父が議長を務める神界委員会に五百年間人界で幽閉という刑を言い渡された。

 それをゆうきが、幽閉ではなく、留学とするよう動いてくれたのだ。ゆうきが同伴し、イザナギが受け入れ先となり、ゆうきの母である女神祖じょしんその圧力があって、ようやく留学が認可された。

 留学の場合、神格を消しての暮らしができる。神格を持ったまま人として暮らすのは、耐え難い苦痛だったので、ゆうきたちには感謝している。

 でも、自分は間違っていないと思う。

「私は今でも間違ったことはしていないと思います。私を侮辱した相手が悪いと思います」

「だとしても、ちとやりすぎじゃ。次はないぞ」

 父が珍しく真剣な目をしている。でも、私は簡単には納得出来なかった。

「分かりました。次は少しやり方を変えるようにします」

 父は呆れた表情をした。

「強情なやつだ。ところで、カミナリはどうした? 別れることにしたのか?」

 父が嬉しそうにしている。父は犬猿の仲の女神祖の最愛の息子との結婚に今でも反対していた。

「別れていません。カミナリは今、ヨロズで人間の相手をしてます」

 たちまち父の顔が不機嫌になる。

「ふん、しぶといな。まあ、お前が幸せならそれでいい」

「お父様、ところで、五百年の予定が四百年ちょっとになった理由はご存知ですか?」

「おう、わしが頑張ったのじゃ。お前が懲らしめた奴らに嘆願書を書かせたのだ」

「あいつらにですか?」

「そうじゃ。喜んで書いてくれたぞ」

 喜んで書くはずがない。なんらかの取引をしたか、圧力をかけたに違いない。でも、礼は言っておくべきだろう。

「お父様、ありがとうございます」

「神界にはしばらくいるのだろう?」

「今、人口増加政策を実施中で、大切なところなのです。すぐに降りるつもりです」

 神界からは一刻も早く出たかった。父はまだいいが、母にはあまり会いたくないし、ゆうきの母には絶対に会いたくない。

「む、そうか、仕事なら仕方がないな」

 父には仕事を理由にすればいい。

「お父様、お元気で、また来ます」

「おお、お前もな」

 父は私の顔を見て、満足したようだった。

 私はヨロズには行かず、自国のヤラタ大陸に降りることにした。ヨロズにはいつでも行けるようになったからだ。

 神界に昇るのは大変だが、下界に降りるのは簡単だ。「覗きの池」まで行き、池に大陸を写してから、そこに糸を垂らせば良い。私が糸を垂らそうとしたとき、横に気配を感じた。

「あら? カザナミ、帰ってきてたの?」

「お、お義母さま、ご無沙汰しております」

 一番会いたくない人に会ってしまった。ゆうきの母親だ。なんで「覗きの池」にいるのよっ。
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